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努力って意味あるの?#2【架空エッセイ】

「もういいよ」
「どうもありがとうございました」
まばらな拍手が会場に溶けていった。
今日も全くウケなかった。

相方は、もう楽屋で先輩と遊びに行っている。
(あいつはなんにも感じないのか…)
ひとりトイレに籠り反省会を行う。

トリの漫才が終わり終幕したところで反省会が終え急いで荷物をまとめた。
「お疲れ様です」
全員に挨拶をして足早に家路に着いた。

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客がいない夜中のファミレスで私はひとりノートを睨みつけながらネタを考える。暖房の風の音が店内に響いた。
もう25時を過ぎたあたりで声が聞こえた
「お待たせ」
同期の佐藤だ。もうこうして5年も二人でネタを考えている。
佐藤のコンビもあるのにこうしてキャッチボールの相手をしてくれるのは、ありがたい。
「もう俺辞めようかな」
自分でも驚いた。
「ネタもウケないし、相方は何考えてるかわからないし、仲いい友達もいないし、もう無理だわ」
次から次へと言葉が出ていく。ノートが湿ってインクが滲む。
「大丈夫だよ。」
佐藤のか細い声が店内にポツリと残る。
「ごめん」
自分はバツが悪くなり財布からおもむろに紙幣を取り出し、確認もせずに店を出た。

家に着いてスマートフォンを見ると佐藤からの着信が溜まっていた。
(やっちまったな)
面倒くさくなって風呂も入らぬまま寝床についた。

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ピーンポーン
インターフォンの音で起きた。
ドアスコープをのぞき込むと母親が立っていた。
重い扉を開けるとそこには母親と小さな6歳くらいの男の子が立ってた。
「あんたちょっとこの子見といて」
母親は説明を少しして家から出て行った。
どうやら母親の弟の子供らしい。
「よろしくお願いします」
教えられた通りの言葉を言い終え机で夏休みの宿題を始めた。
【2学期で頑張ったこと】
どうやら作文の宿題のようだ。
「なにを悩んでいるの?」
「なわとび頑張ったんだけど結局二重跳びできなかった」
「そっかでも毎日練習したんでしょ」
「うん」
「ならその努力は本物だよ」
「本物?」
「努力は実らなくてもその努力した事実がこけそうになったときにすこし支えてくれるよ」
わかったようなわからないような返事をして作文を続けた。
数時間して母親が迎えに来た。片付けの準備をしているとマラソン大会の一位のメダルがランドセルから少し見えた。

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翌日、出番前にふと昨日の出来事が蘇る。
そういえば、5年前の初舞台では緊張でネタが飛んで何も言えなくなったことがあった。張り詰めた空気の中、相方が前にでて一発ギャグを始めた。
全くウケはしなかったがなんとかやり遂げることができた。今でも芸人を続けられていられるのは相方のおかげだ。
あれから私はネタづくりに意欲的になり緊張もしなくなった。
ズンズンズン
出囃子が鳴った。
カツッ
段差に躓いてコケることを覚悟した
(コケて登場なんて最悪だ)
襟が引っ張られてなんとか態勢を取り戻した。
「努力してよかった~」
小声でつぶやいた。
「なんか言ったか?」
「別に」

もうエッセイでもなんでもない気がします。タイトル変えるかも知れません。
読んでいただきありがとうございました。

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