それでも僕は諦めない
大器晩成だと思ってた。
50になって、ようやく幸せを掴めるんじゃないか?って思った。初詣のおみくじも大吉で、よい滑り出しに見えた。35歳でうつ病になって、43歳で甲状腺がんで音声障害になった。病気で転職を繰り返して、それでも人生を諦めなかった。これまで自分が選んできたこと、自分の身に起きたこと、それらが、今のこの人生を勝ち取る為に起きてきた必然なんだと。でも、現実は違った。
僕はいつも、選んではいけないほうを選んできた。僕の進む道は、いつも悪魔が潜んでいた。就職活動であの会社に入らなければ、今の嫁さんと会うこともなく、嫁さんや子供たちを不幸にすることもなかった。やりたいことが見つかって希望の会社の内定をもらえなければ、うつ病になってなかった。うつ病から双極性障害にならなければ、また転職を繰り返すこともなかった。甲状腺がんにならなければ、また自分の無能さに気付くこともなかった。
全部、悪いほう悪いほうへと進んでいく。今まで生きてきて、幸せだと思うことはほとんどなかった。言ってはいけないことを言ってしまうし、やってはいけないことをやってしまう。そして、みんな僕から離れていく。嫌われ者だ。そして嫌われるだけのことをしてきたのだ。
唯一の救いだった家族からも呆れられ、見放された。もう、僕の居場所はこの世にはない。
何の為に生きてるんだろう。底無し沼にはまってしまったかのように、足掻けば足掻くほど沈んで行く。
後ろを振り返れば、情けない人生が笑っている。未来を描いても、そこに希望の光は見えない。だけど、僕は生きている。少なくとも家族だけは幸せにするのが僕に与えられた使命だ。だから僕は諦めない。この一瞬を、今という時を、ただ真面目に真剣に生きていく。
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