趣味がなくなった男の自己紹介はつまらないが方法次第で興味は持たれる
この1年間で今までの趣味が完全に無くなってしまった。起きているほとんどの時間を大学で過ごすようになってしまったからだ。2年間で行うはずだった研究を1年で行い、今までサボっていたツケを払うように英語の勉強と研究に必要なジャンルの専門科目を勉強し、ある程度使えるようにとプログラミングも覚えていた。バイトもつい最近までしていた。
当然勉強が好きなわけでも趣味なわけでもないので趣味のための時間は少ししかなかった。1年前までは好きな映画を小さなシアターまでわざわざ見に行ったり、行ったことのない町の駅まで行って、スマホなど何も見ずに散歩したり、読書などしていた自分から大きく変わっていた。
そんな他人から見たら楽しみが少しもない生活を送っている僕に後輩の研究室配属に伴っていくつかの似たような研究室で集まって、教授や大学院生などを含めて全体100人ぐらいの中で自己紹介をする機会が訪れた。
その集まりの中で僕は何故か司会進行をやることになり、100人の前で進行していた。そこから自己紹介のターンになった。教授が自分の研究についてと趣味について話をする。教授1人につき2分ぐらい。そこから3年生、4年生と自己紹介をしていく。アニメが好きだったり、サウナが好きだったり、筋トレが好きだったりと人によって様々であった。大体の人が名前。何の研究をしているか。趣味という順番だ。そして僕の順番が訪れた。
本日進行させていただいてます。〇〇研究室所属の〜〜です。◇◇という研究をしています。残念なことに趣味はこの1年でほとんど無くなってしまいました。頭を使わない作業をしているときにラジオや音楽を聴いています。たまに過去に放送されたドラマを見返します。好きなドラマは坂元裕二さんが脚本しているドラマ全てです。大学院に進学するので力になれることがあったらなんでも聴いてください。よろしくお願いします。
どうでしょう。何の面白みもなく悲しみだけが漂う自己紹介。しかしどうやら僕の存在は自己紹介をする前から意外と僕の存在は知れ渡っていたらしい。終わってから聴いた話だが、他の研究室の知り合いらが見学の際にあいつと同じ生活を送ったらヤバいことになると各所で冗談半分で話していたらしい。そこからさらにこんな自己紹介を聞かされたら孤独まっしぐらになるだけじゃないかと思った。
そんなことを思いこの自己紹介は終わった。そこから教授陣と大学院生が3年生の顔と名前を覚えるために学生証と顔写真を撮影することになり、それぞれ自由時間となっていた。僕は教授と今後の研究予定や理論について確認をしていた。
すると意外にも僕と教授の周りに人が集まっていた。約10人ぐらい。僕は教授に用があるのかと思い、その場を離れようとしたが、どうやら教授だけでなく僕とも話をしたいらしい。「どうやったら大人数の前で堂々と司会できるんですか」「どのぐらい大学にいるんですか」という質問から「坂元裕二作品で何が1番好きですか」「ラジオ何を聴いていますか」「音楽何を聴いているんですか」などなど。
僕は「やろうと思えば緊張しようが誰でもできる」「月曜から土曜の朝9時から夜の8時半」「いつ恋」「深夜の馬鹿力、佐久間さんのANN0、長州力の愛のラリアット」「こう見えてスピッツとアジカンを1番聴いているけどシャッフル再生だから色々な人聴いてる」と答えた。
その後また教授との話に戻り僕が「あんなにつまらない自己紹介でも質問しに来てくれるんですね」と言ったところ、「つまらないと思っているかもしれないけれど話し方は正直ここにいる学生の中で群を抜いていたよ」と言われた。僕はそんな風に話したつもりは全くなかった。しかし教授は「気づいていないけれどもこの1年間で話し方が結構変わったよ」と言われた。
どうやら自己紹介で興味を持ってもらうには内容よりも話し方らしいということにようやく気がついた。これまで面白い内容を話そうとしてもそこまで食いついてこなかったのはそういうことっだったのである。
とりあえずいつ話し方が成長したのかはわからないが、これからも話し方は気をつけようと思う。
長州力の愛のラリアット今のところ結構面白いです。
読んでくださりありがとうございました。
(2022/12/11)