【質問箱】看護師の面談が苦痛
私が代表を務める卵巣がん体験者の会スマイリーでは匿名で質問をしたい方のために「質問箱」を設置しています。
回答はスマイリーのTwitter、noteなどで回答していきます。
今日の質問と回答は以下のとおりです。
お答えします
お話しくださってありがとうございます
質問箱からのメール通知が昨日で、6月上旬に投稿くださっていたのにお返事が遅くなり申し訳ございません。
病院内の医療スタッフとの関わりについて、患者さんからの相談というのは結構多いです。
人間関係について悩むというのは痛みの中にも取り上げられていて「社会的苦痛」の1つになります。
そしてご相談にも書かれているように他人からみたら「そんな気にすること?」「あなたの被害妄想じゃないの」と思われる場合もあり、でも当事者としては本当に顔を見るだけで苦痛であることも多いんですよね。
実は私も通っている病院の婦人科主治医は大好きなのです。
しかしながら、2018年に別の病気が見つかってしまい、違う診療科も受診するようになったのですが、そちらの主治医が苦手で院内の廊下ですれ違うだけで嫌な汗が出てきそうな状態で、とうとう強硬手段で受診拒否(その病気は地域で開業している医師に診てもらう)をしてしまいました。
卵巣がん患者さんの相談を受けていると感じるのが、卵巣がんというちょっと厄介ながんになったことで「自己肯定感が非常に下がってしまっている」方が多いということです。
妊娠・出産が望めなくなることでの女性としての存在意義の傷つきだけではなくて、家族に迷惑をかけている、金銭的負担をかけている、仕事先に迷惑をかけている、仕事が続けなかったことで自分がダメな人間に感じる・・・などなどスピリチュアルな痛みだったり、社会的痛みをひどく感じているように思うのです。
卵巣がん初回化学療法の頃って「これから自分がどうなるのか」だけでも精一杯なんです。
多くの患者さんがその段階だと自分の不安や悩みを言語化できないです。
余裕がないなかで交通整理もされずに毎日を過ごされています。
そんなときに看護師からピントが外れた説教や個人のモットーみたいなことを話されたら「早くこの時間を終わらせたい」と防衛本能が働きます。
「〜べき」といった強い言葉や強い思想の押し付けに対して嫌悪感を感じる方は少なくありません。
相談者様が看護師さんに対して感じる嫌悪感は非常によくわかります。
よくお話しくださいました!と思いました。
ちなみに先月開催されたとある卵巣がん関連シンポジウムで「24時間卵巣がんの不安で気持ちがいっぱいであるような患者さん」のことについて、あるパネリストのかたが「心までがんに侵されるなんて良くないですよね」という表現をされたことに関しても視聴されていた複数の患者さんが嫌悪感を示されたこともあります。
卵巣がんという病気になったのだから不安になってあたりまえなんです。そしてインターネットという便利なツールがあるわけですからついつい調べてしまうのもあたりまえで、その思いをもっと汲んでほしい・共感してほしいと患者さんたちがおもわれるのも当然だと思います。
卵巣がんになって尊厳が傷ついている患者さんたちに対して心までもがんに侵されるなんて言葉は「あなたは弱い人」という線を引かれたような気持ちになるのをどうして想像できないのだろうなぁとため息がでます。
相談の中にある看護師さんも同じ部類ですよね。
早期からの緩和ケアの介入
肺がん患者さんに対して化学療法のみで治療をおこなった患者さんと、化学療法に加えて月に1回以上の緩和ケアチームよるサポート(主に面談)を加えた患者さんについて比較したところ、生存期間が2.7ヶ月延長したというデータがあります。
そうしたことにより、近年早期からの緩和ケアの重要性に注目があつまり、導入する医療機関が増えています。
医療者は患者の実態調査が頭に入っているのか
早期からの緩和ケアの重要性は確かにそうで、私自身も必要性の大切さを比較的語っている方だと思います。
しかしながら、それもケアにあたる人の質があってこそだと思うのです。
卵巣がんについては比較的実態調査研究が多いと思います。
スマイリーが協力しただけでも
卵巣がん患者の経済に関する調査 松井彰彦先生(東京大学経済学部)
卵巣がん患者・家族アンケート2011 (卵巣がん体験者の会スマイリー)
卵巣がん患者の意思決定調査 深井しのぶさん(東京慈恵会医科大学大学院地域連携保険分野)
卵巣がん患者・家族アンケート2016 (卵巣がん体験者の会スマイリー)
Every Woman Study(TM) (World Ovarian Cancer Coalition)
卵巣がん患者のセクシュアリティに関する研究の動向と今後の課題 松井利江さん(天理医療大学医療学部看護学科)
卵巣がん患者の解離性健忘に関する調査 (浜松医科大学)
卵巣がん患者を対象とした複数主治医制に関する意識調査 (浜松医科大学)
などがあり、特にEvery Woman Studyに関しては卵巣がん患者の不安や悩みを網羅した意義ある実態調査になっており、日本人とその他の国の卵巣がん患者の実態の差なども解説されており非常に興味深いです。
しかし、卵巣がん患者さんの相談を日常でうけていて、患者を支える医療者や看護師はこれらの患者の意識調査といったものを読んでいるのか?と思うことは少なくありません。
今日もある卵巣がんに関する発表で「医師が患者の気持ちになって考えてみました」という発表があったのですが、卵巣がん患者が治療を受けるにあたっての願いについて
「卵巣がんを完治させたい」
「卵巣がんによる死を遠ざけたい」
それが難しい場合はのあとに話した言葉に私は震え上がりました。
またその願いを叶えるにあたり手術で人工肛門になる可能性についてのクリニカルクエスチョンの部分でも患者の選好を大切にするような提案ではなく手術が途中で中止・方向転換をしなくて良い都合を元にした話であり「どこが患者の気持ちやねん」と感じました。
先に示した患者の願いについても結局は引用論文も調査もなく、医師の個人的な所感であり残念でした。
緩和ケアにあたってのコミュニケーション
緩和ケアの研修や、学会でコミュニケーション(特にバッドニュースを伝える上で取り入れられている)手法・トレーニング方法でSHAREとSPIKESというものがあります。
生命を脅かされる、生命予後が限定された患者さんや家族とのコミュニケーション技法の「PREPARED」
家族との話し合いにおけるコミュニケーションの技術「VALUE」
感情に対して言葉を使って反応する技術「NURSE」
他にも「コーチング」や「マインドフルネス」など、病と向き合う患者さんと向き合うのに有用なコミュニケーションスキルはたくさんあるのですが、そのいずれもにも「説教」「一方的な経験談と人生論の押し付け」は記載されていません。
せいぜい「傾聴したうえで、”ひとつだけアドバイスして良いですか?”と尋ねたうえで意見をする」くらいです。
いずれものコミュニケーションスキルに「共感」「否定しない」といったようなことは重要とされていますし、その緩和ケアの看護師さんはそうとう患者と向き合うのに不向きじゃないかなぁと個人的に思います。(SPIKESとSHAREを詳細に出したのは緩和ケアの部門にいるならその手法くらい看護師さんに知っててほしいなと思って取り上げました)
自分を傷つける存在から離れるには
「主治医に、緩和ケアの看護師Aさんの支援はお断りしたいことなど理解してもらいたい」と気持ちが感じられます。
しかし診察室には看護師さんやメディカルクラークさんが入っておられて患者さんの秘密の保持が難しい部分がありますよね。
実は近年医療費削減等々があり、病院によっては外来に看護師さんの配置が非常に少なく、内診台に乗るときだけ看護師さんが現れるという病院も少なくないので、相談者様が通っておられる病院は医師の負担を減らすために手厚い配置なのだなぁと感じました。
あくまでも同じ状況なら、私はこうするという方法として、
「とても個人的な思いですので先生だけに伝えたい」
「看護師やクラークさんから誤った形で伝わるのを避けたい」
としてお手紙を書いて渡すかも。
Aさんの面談で以前とても不快な思いをしたこと
Aさんという名前を聞くだけで不安感が強くなること
現状、主治医との面談で気持ちがおちついていること
この手紙を秘密保持のため返してほしい
Aさんを批判する意図はないため、現状で他の医療スタッフに共有はしないでほしい
ということをできるだけ短く簡潔に書いてその場で見せるかもしれません。
もしくは、私の性格ですので「Aさんだけが悪いということはないのですが、一度面談を受けてみて、年齢差もあるからか全くお話に共感できなかったので違う人がいいです」ってサラッと言っちゃうかもしれません。
でもそれが言えるなら、質問箱に匿名でこんなに長く投稿されないですよねぇ・・・。
場合によっては診察が終わるのを待って、先生が診察室から医局に帰られる時にパッと呼び止め話す、まずは病院のご意見箱にAさんの面談が苦痛であることを身バレしないように投稿し改善を求めるかもしれません。
なによりも我慢してAさんの面談を受ける必要はありません。
うまく逃げる方法があればそれに越したことがないです。
主治医の先生が面談を提案してきたり、化学療法室の看護師さんが提案をしてきたら「現状で不安や悩みは主治医の先生との会話で解消されているのでお断りします」と言い続けるのもありかもしれません。
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