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DESIGN : KINTO BONBO
テーブルウェアやドリンクウェア、インテリア雑貨などの企画開発を手がけているKINTO。プロダクトは使いやすいだけでなく、美しい佇まいに心まで満たされます。
そんなKINTOから発売されたベビー用カトラリーBONBOのロゴ、パッケージデザインをOUWNが担当しました。
KINTOとのデザインヒストリー
石黒 : KINTOは、今までも何度か一緒に仕事をさせてもらっています。
3〜4年前に「ACTIVE TUMBLER」というスポーツタンブラーのパッケージデザインをさせてもらったのが最初ですね。
KINTOの商品はどれもプロダクトとして美しいのですが、OUWNの持つシンプルで強いグラフィックとの相性がいいと言ってもらい、その後も定期的にお仕事させていただいています。
KINTO「ACTIVE TUMBLER」のディレクション・デザインを担当。 ACTIVEな動き・強さ・スピード感をパッケージ全体で表現しています。
デザイン完成版 >
KINTOのステンレス製タンブラーにレーザー刻印ができるサービス「MARK IT BY KINTO」。刻印するモチーフデザインや、店舗の壁面デザインなど多岐にわたりディレクション。 デザイン完成版 >
ー 確かにOUWNとの相性がいいように感じます。KINTOのイメージとOUWNのデザインのイメージが合うというか。
石黒 : シンプルな表現の中でも引きがあるグラフィックっていうのは得意だったりもするから、自分自身やっていて楽しいです。KINTOはシンプルでクリーンなプロダクトが多いので、グラフィックでもそこを生かせるように。引きのための強さはあるけれど、どこか抜け感のあるデザインを心がけています。
ー ご自身もKINTOのものは使ってますか?
石黒 : 使ってます!タンブラーやお皿など、品があり、いい意味で癖がないからすごく使いやすい。働いている人たちもみんな良い人なんですよ。作り手とプロダクトは連動してるんだろうなって感じます。
機能性と受け手のことを考える
石黒 : 今回はベビー用カトラリーを作るというお話があって、プロダクトのフォルムが決まっている状態でパッケージも進めていきました。
OUWNでは、今までも子どもに関する物のデザインは何度かやっていて。子どもに関するものって「かわいいもの」と紐づくと思うんですが、かわいいだけだと子どもっぽさってあんまり表現できない。どこか変とか、癖があるっていうのが一番子どもっぽさを表現できると思っています。それってOUWNのデザインのやり方と似てるから相性がすごく良くて、だからこの案件もハマり良いだろうなっていうのは最初の段階で感じていました。
そこから商品のフォルムをどうやって生かそうか、どうやって子ども用品を表現するかっていうのを考えていきました。一番最初のアイデア出しでは、子どもが紙を切り貼りしたようなイメージだったり、手書きで絵を描いてる感じはどうだろうとか、幅広く考えて。そこから削ったり増やしたりする中で、フォルムを抽出して線を太らせたら、機能性を保ちつつ子どもっぽさを表現できるんじゃないかと思いました。
ー 「こんな商品が入ってます」っていうのがパッと見て分かりやすいですよね。
石黒 : この案はその部分を一番意識したものですね。どの案件もそうですが、クライアントさんがどこに重きを置くかっていうところがアウトプットでの決め手となる。他の方向性もいくつか提案して、雰囲気を抽出するようなかわいらしさや空気感を出したものだったり、求めるベクトルの違いを分けてプレゼンをします。提案した後、色々な方向性の中で伝えたいものはこれだよねっていうところで、フォルムを用いたデザインに決定しました。
石黒 : フォルムをそのまま入れるというところでデザインとして分かりやすいものになったけど、ただ中の商品を並べて構成するっていうだけだと少し薄っぺらい。もうちょっと引きがあるコンセプトやデザインをあしらった方が子どもの目も引くし、プレゼントしたときにも嬉しいんじゃないかと思って、遊び心をどうやって盛り込むか、っていうのを考えました。
石黒 : 子どもの無邪気さや元気・パワフルといったイメージをパッケージに表現したいなと思って、そこから外遊びを連想しました。なので全体を通して、太陽の光と強く落ちた影をコンセプトに表現しています。
ー だから底面が黒一色なんですね。
石黒 : 全面ブラックはちょっと意外ですよね。フォルムも文字も黒で表現することによって文字も邪魔にならなかったり、同じ色にすることで1つのオブジェクトにも見えるから、子どもの柔軟な発想で色々なものに見えたりするんじゃないかなって。パンダだったり魚に見えたり、大人では考えられないような思考が働くかなと。
正面のフォルムのラインが乗算されているのも、そのまま重ねてしまうと平面的になって光が表現できない。軽やかさにもつながるし、その一部分でも結構変わると思います。
石黒 : あとはプレゼントしたとき、絶対もらった側は子どもに見せると思うんです。そのときに子どもが「わあ」って喜んでくれるようなものじゃないと、親も楽しくないなと思った。なので上の面や側面はプロダクトの色を使いながら、カラフルで子どもが見てもきれいって思えるように意識しました。
単純に子どもっぽくしないこと
石黒 : フォルムを面でなく線にしたのは、軽やかさという点もありますし、プレートやボウルは商品自体に白が効いてたりするから、そことの連動もあります。面で綺麗に塗りつぶすよりも、線の方が子どもっぽさも表現できる。
ラインは商品の正確なパスデータを元にしていて、周りが少しギザギザしているニュアンス部分は少しだけ手書きを加えています。ギザギザは最初にIllustratorの効果でつけて、その後にアナログでずらして調整して。効果だけでもいいんですが、ノイズの上でのアナログ感っていうのを表現することでよりクオリティが上がると思います。
ー ラインの太さもインパクトがありますね。
石黒 : 今回のデザインでは線の太さが重要なポイントですね。いくつか検証する中で、クレヨンで描いたときのような太いラインが子どもっぽいイメージにつながるんじゃないかなと思いました。実際にクレヨンで描いてもいいんですが、今回はプロダクトとしてしっかりと設計されたものだから、アナログ感を出しすぎると「プロダクトっぽさ」が薄まると思い、あえて質感はつけないことにしたんです。
ー 確かに、本当にクレヨンみたいな線だとしたら中身は積み木とかかな?って思いそうです。
石黒 : そうそう。中身が木の商品とかだったらそれでもいいかもしれないですが、プロダクトの持つ無機質でクリーンなイメージを壊さないように。
ー BONBOのロゴで意識したことはなんですか?
石黒 : リズムをつけることでポップになったり子どもらしくなったりするので、何パターンか検証して決めました。単純に子どもっぽさを出すとしたら角度を変えたり、大きさをバラバラに変えたりすると思うのですが、それこそさっきの話と同じで、プロダクトであることや、KINTOの持つブランドイメージがあるので、子どもっぽくしつつもスタイリッシュさを残したかった。リズムをつけるけどやりすぎないっていうバランスですね。
ー 中面はどんなデザイン?
石黒 : 中は色が全面に入っています。開ける前はシンプルな白の世界なので、開けたときにパッといろんな色が出てくると華やかで面白いかなと。開ける前との差を出したいなと思いました。
ー 開けたとき、お皿が白いからコントラストが映えますね。
石黒 : そうなんです。商品が白として目立つから、より商品が際立つんじゃないかなと思います。それは作っていく段階で決めたのですが、ただ「外面との差を出したい」というだけではデザインの信憑性にかけてしまうし、そこに意味や理由がなかったら何色でもいい、ってなっちゃいますよね。何を一番大事にしてコンセプトを立てるのかということだと思います。
お祝いできる未来を目指す
ー 今回のデザインは、2021年度日本パッケージデザイン大賞で銅賞を受賞したんですよね。
石黒 : はい。パッケージとして機能することだけでなく、ちゃんとデザインとして評価してもらえたことはすごく嬉しかったです。パッケージデザイン大賞は、今まで入選はあったけどトロフィーをもらえたのは初めて。家庭用品部門でも色々ある中で、順位として入れたっていうのはすごい良かったなと思います。この作品はTDCやONE SHOWでもMERITを頂いたり、色々なところでも評価してもらえて、OUWNのみんな的にも良かったなと。
ー 作るときに賞のことは意識しますか?
石黒 : 賞を獲ることが良いっていうわけではないんですが、審査基準としてデザインが良いかっていう点で評価すると思うので、そういった部分で意識して見ることはあります。単純に自分はこのデザインが良いと思っても、玄人目線からも客観的に見てこれは良いとされるデザインか、評価されるデザインかって考えると、新しい部分が見えてくる。
例えば今回のデザインだと、全面カラフルな配色だけだったら軽やかすぎてデザインの引きが弱いからどうするのかって考えます。そこで底面を影にしようって考えられたりするので、デザインのクオリティを上げるという意味で意識することはあります。
ー ひとつの基準という考え方ですね。
石黒 : 一番最初の頃とかは「賞を獲りたい!」っていう気持ちもあったかもしれないですが、それは単純に自分が作っているものが大丈夫かっていう基準になると思ったからです。賞に入ったことでプロモーションとして回るかっていうとそういうわけではなかったりするし、こういうものが評価されるんだっていうのが分かるだけでも良いと思います。
出品することも、正直今まではガッツリやってなかったんです。もちろん出してはいたけど、OUWNで作っているものがどうだろうかっていう1つの判断材料というくらいで。積極的にではなかったです。でも最近は、色々やっていく中でスタッフも増えて、賞を獲ったらそれがスタッフの糧になったり、デザイナーとして名前が出たりすると案外嬉しいんだなっていうのが分かったりしました。
だから本当に1年前くらいかな、ちゃんとやろうと思ったのは(笑)。
ー えっ!そんなに最近なんですね。
石黒 : そうなんです。去年初めて、ちゃんと賞に出そうと思いました。OUWNのスタッフが増えたことと、自分の周りの人が頑張っていたことが影響していると思います。前の職場での先輩や後輩がJAGDAとかで頑張ってるのを見て、自分も頑張ろうって思った。もっと早くから頑張れよって話なんですけど(笑)、そうやって周りの人が頑張っているのを見て、自分も2、3回とかなら頑張れるかなって思いました。
だから去年はみんなに、「今回はちゃんと出すんだ」って宣言しました。
ー 「頑張る」意思表明ですね。
石黒 : はい。それで出したのが今回のBONBOとか、GIVE UP PLASTICとか。気合を入れてやったら入るんだっていう実感にも繋がったので、デザイン賞などに対して「ちゃんとやろう」期間が続いています(笑)。
もちろん案件はずっと手を抜かずやっていますが、賞に出すことって結構大変だったりするので、今まではスタッフに用意してもらったり、意見を聴きながらで結構民主主義だったんです。でも去年からはデザイン賞に対しても自分がディレクションをして、この仕事はこの賞にこういう風に出します、って決めて出しました。
ー それで本当に賞に入ることがすごいです。お祝いとかはしますか?
石黒 : お祝いはしてないですね。今回賞をもらえたことはすごく嬉しいけど、もっと上があるから。もちろん「お疲れ様」という意味での打ち上げはありますが、反省点がどこかに絶対あるので。
知り合いでももっと上の賞を獲っている人がたくさんいるから、そういうのが獲れてからかなって思います。だから今までも何かを祝うっていうのはあんまりないですね。先があるから頑張れるっていうのもあるし、本当に一番良い賞とかで、自分もみんなも納得するものができたらお祝いしたいですね。お祝いできるように頑張りたい。
ー ストイックですね…!
石黒 : 賞を獲れることは嬉しいですが、結局は自分がデザインしたものが売れたり、それでクライアントさんが喜んでくれたり、それが一番嬉しいです。そういう風に考えると、今回のKINTOは嬉しい要素がいっぱいあったなと。誰かにプレゼントしたりとか、一緒に楽しめるようなものが作れて、それに加えて賞ももらえた。
デザインって形がないものだけど、人の感情を豊かにするもの。だから今回は、誰かへのプレゼントだったりお祝いの場で使ってもらえるようなものを作れて、デザインの根幹の魅力を最大限出せたんじゃないかなって感じますね。
CL : KINTO JAPAN / @kintojapan
AD+D : ATSUSHI ISHIGURO(OUWN) / @ai_ouwn
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聞き手 ・ 執筆 : 星成美