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「ソーシャル・アート」について
「ソーシャル・アート」という言葉を初めて目にしたのは、3年くらい前だったと思います。当時私は東京の東大和市という所に住んでいて、お隣の東村山市に行った時に、建設現場の横を通りかかりました。
そこには白い仮囲いが建てられていたのですが、その白い部分に何枚も絵が飾られていて「ソーシャル・アート」というタイトルが付けられていました。で、その絵の画風が「アール・ブリュット展」でよく見かけるタイプだったのです。障がい者施設か福祉法人の名称も書かれていたように記憶しています。
その時は「アール・ブリュット」の別名として「ソーシャル・アート」という呼び方もあるのかな、という印象でした。「社会福祉」や「ソーシャルワーク」という言葉を連想したせいでもあります。
ですが、この「ソーシャル・アート」はアートの一ジャンルというより、社会と関わること、より住みやすい社会を目指して制度や環境を変えていくための活動を指すようです。その意味では「エイブル・アート」に近いのですが、「ソーシャル・アート」は障がいのあるなしとは別に、あるいは障がいのある人もない人も一緒に行う表現活動というニュアンスが強いように感じます。また、「ソーシャリー・エンゲージド・アート」(地域社会と連携した活動)とも重なるように思います。
ですから、アートを美術館やギャラリーに閉じ込めず、無味乾燥な仮囲いの装飾に使用するというのも、社会を変える表現活動=ソーシャル・アートになるのでしょう。
ビエンナーレやトリエンナーレといった地域芸術祭も含まれるのでしょうか?
「ソーシャル・アート」に関連する本は何冊か出ていますが、「これがソーシャル・アートだ」というびしっとした定義はまだ生まれていないように感じます。また、文脈によっては社会問題をイメージさせるような「社会派」芸術をそう呼ぶこともあるみたいです。その意味だとバンクシーなんかも入るのでしょうか?あるいは一時期よくあった(今もかな?)、美術作品にトマトスープをぶちまけるようなパフォーマンスはどうでしょうか??
というわけで、「ソーシャル・アート」については現在のところ、そのような言葉がある、というレベルにとどめておこうと思います。積極的にこの言葉を使おう、ということは考えていません。
参考文献:
『ソーシャルアート 障害のある人とアートで社会を変える』たんぽぽの家
『ソーシャルアートラボ 地域と社会をひらく』九州大学ソーシャルアートラボ
『ソーシャリー・エンゲイジド・アート入門 アートが社会と深く関わるための10のポイント』パブロ・エルゲラ