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アール・ブリュットとアウトサイダー・アート:雑誌記事に見る言葉の変遷

これまで「アール・ブリュット」と「アウトサイダー・アート」という言葉について長々と考察してきました。 結論として「アウトサイダー・アート」は最初は「アール・ブリュット」を紹介するための英語として考案されたものの、今では本来の(ジャン・デュビュッフェが定義した)アール・ブリュットを超えて広い範囲を意味する言葉となっている――ということですね。 そして、最初の記事で述べたように日本国内では当初「アウトサイダー・アート」が優勢でしたが、2000年代の後半あたりから徐々に「アール

    • 「アウトサイダー・アート」という言葉:カーディナルの著書

      「アウトサイダー・アート」という言葉は、英国の美術評論家ロジャー・カーディナルが1972年の著書タイトルとして使用しました。その後、前回書いたようにデュビュッフェが「アール・ブリュット」という用語の使用を制限していたという事情もあって、代替の用語として急速に広まっていきます。 カーディナルのこの著作は邦訳版がありません。原書も現在入手困難となっており、Amazonで検索するとすごいお値段になっています(2024年10月26日現在30,855円)。 というわけで、この本は読

      • 「アール・ブリュット」という言葉:画家デュビュッフェによる命名

        まず「アール・ブリュット」という言葉は、いつどこで生まれたのでしょうか。 この言葉を考案したのはフランスの画家ジャン・デュビュッフェ(1901-1985)です。デュビュッフェはハンス・プリンツホルンの『精神病者はなにを創造したのか』を通じて精神病院での創作活動に興味を抱き、1945年にスイスの精神病院を訪問して作品を鑑賞。この時の作品には、後にアール・ブリュットの「巨匠」とも呼ばれるアドルフ・ヴェルフリやアロイーズ・コルバスなどがありました。 『評伝 ジャン・デュビュッフ

        • アール・ブリュット/アウトサイダー・アートが好き

          このnoteでは、アール・ブリュット(アウトサイダー・アート)と好きな作品・作家について思うこと、調べたこと、参考になりそうなことなどを書いていきたいと思います。どうぞよろしくお願い致します。 アール・ブリュットって?まず言葉の意味をしっかり定義しておきたいところなのですが、「アール・ブリュット」ってそもそも何なのか? 「アウトサイダー・アート」とはどう違うのか? という所が実は私自身しっかり理解できていないので、まずはそこから考えていきたいと思います。 「アール・ブリュ

        アール・ブリュットとアウトサイダー・アート:雑誌記事に見る言葉の変遷

        • 「アウトサイダー・アート」という言葉:カーディナルの著書

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        • アール・ブリュット/アウトサイダー・アートが好き