経営戦略を活かすハブ型人材ネットワークの可能性
理想の経営を実現するチームづくりって難しい。
働く側から見ると、もっとこうすればいいのに。経営側からすると、もっと動いて欲しいのに。
今回は伊丹先生の「経営戦略の論理 ダイナミック適合と不均衡ダイナミズム」から、経営戦略のエッセンス、さらに戦略的なチームづくりの事例を紹介します。
戦略と不均衡の必要性
「いい絵」を描きたいと思っても、まず「どんな絵がいいのか」がよくわかっていなければ、あるいは「どんな絵を自分は描きたいか」がわかっていなければ、描き方も何もあったものではない。
戦略をつくるには、「よい戦略」を知り、自分の「描きたいこと」を見つけよう!というところからのスタート。
戦略の基本論理とは
・経済の論理(お金の論理)
・見えざる資産の論理(情報の論理)
・人間心理の論理(ヒトの論理)
この3つをうまく組み合わせることが重要だと解かれています。
さらに戦略は「見えざる資産」と「人間心理」がとっても大切であると。
企業は、インプットされた資源を「技術変換」により付加価値をつけてアウトプットする。このアウトプットが「顧客から求められる」から存在する。この技術変換に、見えざる資産とヒトが大きく関わってきます。
さらに、戦略を進める上で「不均衡」をあえてつくることが、長期的に望ましい。とされているのですが、私としては、生き残るための「不均衡」≒「価値を創造するマーケティングやチャレンジ」であると感じています。
見えざる資産の本質
企業の「技術変換」にノウハウがあるわけですが、例えば事業活動には、サービスの開発〜生産〜営業〜顧客という流れがあるとします。
ウケる商品の開発、効率的な生産、売り方、お客さんのニーズと
「色んな情報が行き交い蓄積」していく。
この形のない情報を著書では「見えざる資産」と表現しています。
事業活動で、いかに良質な情報をたくさん積み上げていけるかが企業の生死を分けるとすると、うまく蓄積させるための「戦略」が重要になってくる。
行政に置き換えると、自治体には一般的に寿命がないわけで、歴史のなかで積み上げた「見えざる資産」って実はとんでもなく貴重なもの。
例えば法律、条例、規則、要項…なんて、あらゆる調査やニーズの末に生まれきています。表に出ていないプロセスを含めて、大きな資産といえます。
ヒトと現場の可能性
更にこの資産を生んでいるのは、
現場で動く人間たちの、学習であり、情報蓄積であり、心理的緊張であり、心理的高揚である。
まさに現場の人間たち。経営戦略の論理といえど、一人ひとりの想いや、学び、行動の積み重ねによって、見えざる資産は蓄積されています。
当たり前のことだけど、現実的に成果をもたらすのは、最終的には人間味の溢れる戦略が必要なのですね。
企業も行政も、どんな組織も同じヒトの集合体。
まさに、ヒト・情報という資産をどう活用していくべきか変化を問われる時代になってきました。
ケーススタディ(5) ハブ型人材ネットワークの具現化
宮城県仙台市 公務員タスクフォース
変化の激しい時代に合わせ、民間主導のまちづくりに合わせた「ヒトや情報の資産を有効に活用させるチーム」を具現化したのは仙台市さん。
①公務員タスクフォースとは
せんだいリノベーションまちづくりの実行委員会の一部会として2016年に発足。都市経営戦略の実行を目的に、組織を超えて約30人の公務員で活動されています。
このチームの活動が、様々な公民連携事業として行政へ還元されています。
②活動内容
庁内向けの勉強会はもちろん、積み立てた活動費から都市経営プロフェッショナルスクールに派遣する人材へのカンパなど、人材育成に力を入れています。さらに、
・GREEN LOOP SENDAI
定禅寺通りの緑を活かした公共空間活用
・LIVE + RALLY PARK.
公園に突如現れたブックカフェ&マルシェ
なんと本庁舎の建替や、せんだいエネルギーまちづくりまで、このタスクフォースが行政へフィードバックしています。
③属人的ネットワークの具現化
御存知のとおり、行政は、環境やまちづくり、教育など分野ごとに組織が分かれ、それぞれの部署に割り当てられた業務を行います。さらに、職員は数年で部署を異動して、全く違う業務を担当します。
でも、一つの組織では解決できないコトの方が、多くなってきているのではないでしょうか。
例えば、以前紹介した「東京おもちゃ美術館」。ここは廃校のリノベーションに木育の機能も付加するので、行政とのやり取りでは、「教育部署」と「緑政部署」が関わってきます。
でも行政のなかでは、この2つの部署で連携がとれていないのが普通。
そこでスピード感を持ちたい民間は、手続きや交渉にとっても苦労するとのこと。
実際のところ自分たちも
目的を達成させようとするとき、組織 対 組織より、「ヒト」を見て相談を持ちかけたり、段取りできた方が、圧倒的に仕事がスムーズですよね。
組織といいながら「本質的には属人的なネットワーク」を具現化させて、クリエイティブな公と民を繋いだのが、公務員タスクフォースというわけですね。
考察(ヒトと情報 時代に合わせた活用を)
・行政組織に蓄積されている「見えざる資産」
・組織を異動しながら知識を深めていく職員
この貴重な財産を、組織に縛られないネットワークによって、効果的に掛け合わせることで、複雑に絡む都市経営の課題にアプローチができるのではないかと思います。
組織に課せられる、必要な業務を遂行することはもちろん大前提。
でも、それだけで解決できない課題や新しい時代へのアプローチ(規制緩和や新たなルールなど)には、
この著書で「不均衡」と表現されることに、敢えてチャレンジしていくことも重要なのではないでしょうか。
今回、仙台市タスクフォースの皆さんと、川崎市職員の有志チームで読書会を開催しました。課題図書は「V字回復の経営」これホントお薦めです。
(写真:オンライン中継の様子)
改めて、これから必要な組織を考えたところです。今回メンバーの洞口さんから教わったことで
・ヒトは最大の都市資源であり、投資資産
・早く行きたいなら一人で行け、遠くへ行きたいならみんなで行け
・独りぼっちから卒業してともに闘う「同志」を見つけよう
まさに共感するところ。馴れ合いや愚痴の言い合いでなく、前向きなメンバーと将来を考えることから、スタートしていきたいと思います。
本日もありがとうございました!
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?