オガール潜入記録。 視察が活きる3つの着眼点
都市経営プロフェッショナルスクール集合研修が終了しました。
視察が殺到するオガールへついに潜入!でも
せっかくの視察、失敗しないで自分のまちに活かすポイントを講師陣が教えてくれました。
また、オガールの様子も少し紹介します。
よくある失敗事例
視察の受け入れ側からは、参加者の知識や熱意はとっても透けて見えております。当たり前だけど気をつけるポイントは
①事前知識なく参加
②情報を鵜呑みにする
③アウトプットしない
説明だけで分かった気持ちになるのは勿体ないです。視察で何を持ち帰るかイメージしておけば、意義ある質問やアウトプットに繋がるはずです。
視察した先は本当に成功してるか、見極められているでしょうか?
オガールは特に複雑な公民連携なので、背景や本質を知らず「すごい!地元でもやってみよう」はむしろ危険を伴うもの。受け入れ側も、視察を活かしてほしいと望んでいます。
視察に必要な「3つの目」
まず視察の前提となるのは
・まちは日々変化する生き物
・ランドスケープそのものが価値
見える景色、生活する人、行動範囲、お金の流れ。こうした営みからまちが作られ、日々変化しています。それを踏まえて必要な視点は
①ハチの目 🐝
蜂が飛ぶようなイメージでまちを俯瞰します。
広く見た生活圏は半径30Kmと言われますが、半径200m圏内のスモールエリアで特徴を掴み、まちにどんな回遊圏があるか確認します。
また、徒歩→自転車→車と移動手段に合わせたまちの形成から、そのエリアの生活様式を見て感じることが大切です。昼と夜でも景色は違います。
今、盛り上がっている岡崎市のリバーフロントを再生する公民連携の「QURUWAプロジェクト」。
こちらの再生を考えるときも、主要メンバーがまちを歩いたり、自転車で移動しながら、対象エリアを導き出しているそうです。
②アリの目 🐜
プロジェクトのメンバーやプロセスの深層部分を確認します。
表に出ることこない法律や議会の突破方法・行政や市民への対応など、直接会うから聞けることは多いです。
特に現場のマネージャーリーダーの話は重要。
成功している場合、マネージャーは適正な利益を上げながら、まちを変えています。優秀な人材がリクルートできているのもポイントです。
さらにプロジェクトに関わる複数のメンバーから話が聞けると、まちが立体的に見えてきます。
地域が変わっても普遍的な要素と、独自の要素があり、本気のまちは、土地柄、人の動きや繋がり方に独自性が見られます。
ちなみにオガールといっても
オガールプラザ(図書館や店舗)、新庁舎、オガールセンター(教育、店舗)、オガールタウン(エコハウス)…などなど
施設ごとに仕様や資金調達の方法など、プロセスが全く違ったりします。
③おカネの目 💴
公民連携は「お金が重要」なので、民間投資がリターンされる仕組みになっているか。
経済構造を見抜けるかが、大きなポイントです。
例えばファイナンス(仕組みや返済方法)、事業手法(PPPやPFIなど)、補助金の有無、利益が出ているかなど。
お金という血液が正常に循環するまちには、活気があります。
確かに、お店が儲かってるか判断するときも
客単価や日商、売り逃し(何も買わないで出て行く人)、従業員の給料などを聞かないとホントのところは分からないですよね。
以上3つの目を意識することで、視察の解像度を上げることに繋がります。
オガールの潜入記録
少しですが2泊3日の様子を紹介できればと。
オガールプロジェクトは、書籍やネットで詳細が分かるので、何たるかの紹介は割愛します。
まずオガールの全体像(全国町村会HPより)写真手前に紫波中央駅があります。
下図は日詰リノベーションまちづくり構想
(紫波町HPより)の対象エリア。オガールと日詰地区の間に紫波中央駅、そして国道4号線が縦断。
この位置関係において、オガール再生を起点に、日詰地区の活性化を狙っています。
〜ここからオガールの紹介へ〜
①見事なランドスケープ
紫波中央駅から徒歩2分、中央に抜けるグリーンベルトは遮蔽物がなく、山まで芝生が続くよう。
これはデザインガイドラインにより、景観がコントロールされているから。
平日には高校生が勉強を、休日には家族がBBQをしながら芝生を楽しんでいました。
そして施設内の図書館は、カフェや居酒屋といった施設が隣り合っていて、公民の境が「敢えて分かりにくく」なっています。
公と民でフロアが分かれてる施設はよく見ます。でもオガールは図書館に行こうとすると、必ずお店の前を通る動線になっています。
あと注目すべきは「駐車場」とのことで↑全体写真の左側に見えますが、オガールは電車より車で来る人の方が多い。
よく建物正面に広ーい駐車場を作りがちですが、美しい景観を守るため、グリーンベルトから駐車場は一切見えませんでした。
さらに車を停めてオガールに向かう動線でも、あらゆる店舗前を必ず通ります。
図書館へ、芝生へ、体育館へ。目的は違えど、店舗との接触頻度を高めて売上に繋げる動線が設計されていると推測します。
東京都国立市の商店街でも、店主が顧客からニーズを聞いて、自分の信頼する別のお店を紹介する「商店街コンシェルジュ」(顧客を共有するサービス)を展開してます。紹介カードを持っていくと初回からお得意様として扱ってもらえるというユニークなもの。
このサービスも、実は自分のお店を通る「延長線上にあるお店」を紹介することで、お客さんが無意識に自身の店舗前を通る頻度を増やす工夫をしていたりします。
オガールは公民が力を合わせて、エリアにお金を落としてもらう工夫を随所に仕掛けていました。
②周辺のエリア(日詰地区)
紫波町の日詰商店街は、リノベーションまちづくりに取り組んでいます。
駅から徒歩20分ほどあり幹線道路を挟むので、徒歩圏内ではありませんでしたが、地元の方が普段利用する生活商店街といった印象。
路地裏にあるリノベ案件「はちすずめ菓子店」さんに行ってみました。ヘルシーなのにちゃんと美味しい、日本初のビーガンアップルパイ&キッシュ専門店です。旅行の際はぜひ!
今回は合宿の参加者にお弁当を作ってくれました。エリアを超えた連携!日詰地区は今後、旧庁舎の敷地活用などプロジェクトが進むそうです。
③オガールプロジェクトの内容
チーム編成や事業手法、ファイナンスなど以前に触れましたので、こちらを参照ください。
④お金の工夫
オガールプラザを例に紹介します。
この建物は、入居テナントがどのくらい家賃を払えるか、坪単価いくらなら投資回収ができるか。を徹底的に研究して設計されています。
・テナントは事前に決定して入居率100%
・建築基準上、安価に建てられる木造2階建て
・坪単価38万円、極限まで抑えた建築コスト
・償却期間の短い木造でRCのほぼ倍の損金参入
(節税につながり手元にキャッシュが残る)
・建材は紫波町産を活用、地元建設会社が施工
(地元産業の振興、雇用の創出)
↑例えば屋根の梁一つとっても、既成品を使える工法にするなど、徹底したコストカット。当初予定していた木造3階のままでは、建築基準が厳しくなって高額になるため、この工夫は実現できませんでした。
そして融資は10年償還予定のところ、完成後も弛まぬ経営努力によって、8年で返済目処が立っているそうです。
また、大手ディベロッパーではなく地元企業が手掛けたことで、まちの愛着に繋がり、完成後も地域の人がちゃんと利用してくれると伺いました。
建築の詳細は、こちらが分かりやすいので転載。
ちなみに紫波町の新庁舎は、唯一PFIによって建てられています。立派な建物でした!
オガールプラザの例からも、補助金をベースにした事業と、逆算開発によって組み立てたものは、お金の流れが全くの別物であることは明白で、これを実感できたことは大きな収穫でした。
考察
視察は、受け入れてくれる側も貴重な時間とコストをかけて、私達を迎えてくれています。
参加する方は勉強だけでなく、得たものを自分のまちで何か実践して、視察先にそのチャレンジを報告するなど、フィードバックができると理想的だなと感じています。
なお、木下斉さんのnoteで動画による視察が可能です。行かれる際はこちらが予習になります。
とはいえ私自身、気持ちの赴くまま視察していたと反省。教えていただいた皆さんに恩返しできるよう、経験値を積んでいきたいと思います。
今回もありがとうございました!
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?