娘の絵を買った話。
大学時代、美術史を専攻していました。
西洋美術の授業で
こんな話を聞きました。
「絵画とは壁の向こう側に世界を創ること」
当時の私はこの言葉に感動して
それまで以上に絵画が好きになりました。
そして「絵を飾る」ということに
ロマンを感じるようになったのです。
またその頃、
将来の話や自己紹介するときに
私はよくこんなことを言っていました。
「私には３つの夢があります」
恥ずかしながら
今では３つのうちの２つしか思い出せませんが（笑）
（誰か当時のこと覚えている人がいれば教えてください！）
ひとつが「お母さんになること」
そしてもうひとつが
「これだっていう絵を買うこと」でした。
いつか私の心をグッとつかむ
これだっていう絵に出会い
その絵とともに人生を歩みたい
そんな夢を描いていたのです。
ただ残念なことに、この若かりし頃の夢は
忙しい毎日にかき消され、
つい最近まで思い出すことはありませんでした。
よく読んでいた美術雑誌も
よく足を運んだギャラリーも
すっかり遠い存在になっていたからです。
それにも関わらず
この大事な想いを呼び覚ますことができたのは
毎月開催している「占いお茶会」がきっかけでした。
タロットカードをひきながら
言葉を重ねていくと
こころのベールが少しずつはがれて
見えなくなっていた”想い”に
再び光をあてることができるのです。
「あぁ、私。絵を買いたかったんだ。」
こころの奥深くに沈んだ想いが
目を覚ましたその瞬間
何ともいえない気持ちになりました。
忘れていた夢を思い出せたこと
またそこに向かって歩いていけることが
ただただうれしい。
けれど飛び上がって喜ぶような
ハイテンションな感じではなく
「そうだった」
「そうだったんだよ」
と何度も小さく頷きながらつぶやくような
そんな静かで深い喜びをヒシヒシと感じたのでした。
それから数日たったある日。
リビングを片付けていると
あるものが目に飛び込んできました。
それは娘が描いたたたくさんの絵。
ずいぶん上手になったなぁなんて
思いながら眺めていると
ある１枚の絵に心惹かれました。
「これ好きだな」
もちろん愛する娘が描いた絵は
どれも好きなんだけれど
それでもやっぱり私から見た
「好き」「そうでもない」という好みがあって
その絵はなぜか
一生懸命描いた娘の姿が感じられるような気がして
思わずじっと見つめてしまったのです。
学生時代に思い描いていた夢
「これだっていう絵を買う」を叶えるためには
いろんなギャラリーに通って
好きな作家さんを見つけて
これだっていう絵に出会って
お金を用意して我が家に迎える
そんなステップが必要だって思っていました。
だから、
叶うまで時間がかかると考えていたんですが
ギャラリーに通わなくて
たくさんの絵に出会わなくても
今の私にとって
1番推せるアーティストが
目の前にいるって気づきました。
そう、娘です。
そこで私は娘に提案しました。
「この絵、お母さんに売ってくれない？」
もちろん、娘は快諾。
金額は相談のすえ100円に決定。
無事、取引成立となりました。
そんなわけで、この日、
学生時代からの夢が叶いました。
思っていたよりずっと小さいサイズ感だけど
こころで感じる喜びはちゃんと重い。
夢に見た景色が叶うことだけが正解じゃない。
その景色の中で感じた感覚がここにあれば
もうその夢は叶ったって言っていい。
そんなことを感じました。
お絵描きって何歳くらいまで
たのしんでくれるんだろう。
その子によって違うだろうけど
うちの娘はどうだろう。
まだわからないけれど
娘がお絵描きを楽しんでいるうちは
このやりとりを続けたいと思っています。
私はその度に夢が叶うし
娘は自分が創り出したものでお金をもらう経験ができる。
これって
2人にとってしあわせなやりとりじゃない？
そう思うんです。
そしてその先には
若かりし頃にイメージしていた「絵を買う日」が待ってくれているって気持ちになれるから。
私が買った娘の絵は
リビングに飾ることにしました。
ちゃんとフレームをつけたら
ただのお絵描きが何だかオシャレになって
私も娘もニッコリ。
おめでとう、私たち。
なんだかしあわせだね。
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