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登山を始めるあなたへ:600mの山が教えてくれること

こんにちは、レンです。

今回は、僕が登山を始めたころに訪れた低山で学んだことを紹介していきたいと思います。今思い返しても、学びが多く行ってよかったなと思います。

エッセイ形式ですが、読んでいただけると嬉しいです。
これから登山を始めたいと思う人には、参考になると思います。


エッセイ


「まさか、こんなにも心を揺さぶられるなんて」

数年前、ふと思い立って家の近くの標高600mの山に登ってきた。
デスクワークが故に、普段から運動不足を感じていたこと、体力の衰えの実感が僕を行動に移した。体力作りも兼ねて、軽い気持ちで始めた登山。
その経験は僕の中に、予想外の変化をもたらすことになった。

登り始めは、軽い気持ちで

「600m程度の山なら、なんとでもなるか」

僕は、軽い気持ちで登山に向かった。登山道入り口について、久しぶりの登山に気分が高揚している、そんな実感があった。

登山道に入ると、そこは日常から切り離された、静かで緑豊かな世界が広がっていた。川のせせらぎが心地よく、深呼吸をする度に、なんだかきれいな空気を吸っているような気がした。
家の中のジメジメとした鬱鬱とした空気とは、全然違った。少なくとも、この時の僕は、少しだけやる気のある前向きな自分だった。

最初のうちは、周囲の景色を楽しみながら軽快な足取りで進むことができた。時折スマホを構え写真を撮ったり、走ったり、意味もなく寄り道をする元気さえあった。

しかし、標高が上がってくると、状況は一変する。次第に呼吸が苦しくなり、足も重くなってまるで言うことを聞かない。汗だくになりながら、何度も休憩を挟み、それでも一歩一歩進む。まるでゴールが見えないだけならいいが、進んでいる実感すらなかった。

景観を楽しみ歩くことを楽しみ、ゆっくりと自然の中で心を落ち着かせる。そんな余裕はなく、既に僕はゴールを望んでいた。

階段は救いではなくトドメ

後半に現れた階段は、正直きつかった。明日からもう歩けないのではないか、そんな錯覚すら覚えるほどだった。
「もう無理かも…」そんな気持ちが頭をよぎった。ただ、後ろを振り返っても、そこには絶望しかない。これまで登ってきた道を引き返すということは、同じ道を歩く必要があるのだから。

「帰りたい」という切実な願いを込めて、僕は山の中を歩いた。全力で階段を上った。
一段一段が、僕の足を刺激して体力を容赦なく奪い去る。

一見すると絶望しかなかったが、僕はまだ心のどこかにゆとりを持っていた。現状に文句を言いながらも、休憩をはさみながらも階段を上っていく。ゆっくりとした足取りだったが、完全に足が停止しなかった。

これが、僕にとっては物凄く大きな救いになったことは、間違いない。

「んだよ、まだ動けるじゃないか」

そんな声が、聞こえたような気がした。気が付いたら、僕は黙々と歩き始めていたし、歩みを止めることはなかった。

頂上からの眺めはなかった

ようやくたどり着いた山頂からは、360度のパノラマが広がっていなかった。泣きそうな心を静め、とにかく山頂の平らな場所にへたり込んだ。
今まで感じたことのない開放感に包まれ、思わず深呼吸をした。

「これでもう、歩かないですむ」

自分で登山を始めたくせに、なんだか不思議な感覚だった。もちろん、ここから下山をする必要もある。まだまだ歩かなければならないが、実感した解放感は素晴らしい。
これまでの苦労を忘れて、ボーっと無心でその瞬間を楽しんだ。

喜びと表現すると、何だか違和感がある。達成感、とも言えない気持ちだった。とにもかくにも、「少し休みたい」という願望が叶って、心の願いが叶った。

ちょっと救われた、そんな気がした。
完全にマッチポンプだが、その時の僕は満足だった。いや、今でも満足だ。

下山~それは邂逅~

下山は、思っていたよりもスムーズに進んだ。帰り道は、登ってきた時のように景色を楽しむ余裕もあり、想定よりも楽しむことができた。もう少し、歩くことができない状態になるか、足が悲鳴を上げていると思っていた。

いい意味で、その想像は覆された。山道を楽しむことができたし、登りの時とは違って、景観を見ながら一喜一憂した。

登山道を下り始めると、数十分で景観はなくなる。急に下るからだ。そうなると、不思議と沈黙の時間が訪れる。その沈黙は、心地よさを与えてくれることもあるが、今日を振り返る時間ともなる。

思い返してみると、苦痛しかなった。嫌な記憶、苦手な記憶、思い返したくない記憶。これは、鮮明に思い出せるが、よく考えてみるとあまり今日の成果・報酬的なモノに関しては何も考えていなかった。

「当たり前か、そもそも景観なかったしなぁ」

山頂からの眺望がなく、当然だが頑張ったご褒美的なモノはない。でも、それでよかった。
沢山の時間を使って、僕が何をしたのか。それは、ただ自分と黙々と向き合い、自然と向き合った。

ただそれだけの事実に、僕は言いようもない満足感を感じていた。

もう一度、山へ

今回の登山は、僕にとって大きな転機となる。本格的に、登山に興味を持ち実践していくキッカケとなった。体力作りだけでなく、心も体もリフレッシュできる素晴らしい経験だった。

正直なところ、登山はきつい。でも、その経験を通して得たものは、想像をはるかに超えて大きかった、のかもしれない。その確認を、僕の人生をかけてしていく必要がある。

人生を歩き続ける事と同じように、僕もまた日常を歩く。自らが歩くことで、この経験を確認していく時間にしたい。

もし、君が少しでも登山に興味があるなら、ぜひ一度挑戦してみてほしい。興味があればだが・・・。
辛いことも多いが、そこでしか得られない不可思議な経験が君を待っているだろう。

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レン_歩くエッセイスト
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