また会う日まで
久しぶりにいろんな複雑な思いをかかえて研究室へ行った。
それは、
「もうあなたには教えることがない。」
と言われて1年が経ち、、、
ひょんなことで先生の旧知の友人を繋げてから今年に入って2回目の訪問だった。
私は先生に
「嘘はつきたくないので、先生に教わった良いことも悪いことも辛かったことも嬉しかったことも全て伝えました。」
と言った。
間を置いて、、、
先生はその旧知の知人を
「あいつはすげぇやつだよ。」
と言った。
私の返答は
「私もそう思います。」
そして、
先生はふと、引き続いて
「俺が唯一あなたにして良かったなと思ったことは、あなたがスタンフォード行きの切符を手にして怖気付いていたあの日に
『行かない理由がないのに、なぜ行くのやめようとか言ってんだ。バカタレが!』
と言ったことだ。
そして、あなたが初日に
『スタンフォードのスターバックスの中でメディカルスクールやロースクールの学生に囲まれて怖気付いてカフェラテを持って外にでました。』
その話をしてきた時に、俺はあなたを行かせてよかった。と思った。その話はこれからもあなたはずっとするだろう。あなたの財産だ。」
と言った。
そして間を置いて
私は
「違うと思います」
と一言。
「アメリカでも日本でもあまり本質は変わらない。USMLEも所詮紙切れにしか過ぎない。私が先生に会って変わったなと思ったのは、人に本音を打ち明けられる、自分をさらけ出す先生に会ったことです。」
「つまり、、、、先生の懐が深かったんだと思います。」
と続けて言った。
間を置いて先生は
「なんだ、褒め言葉か。」
と言って笑った。
さらに続けて、
「USMLEが紙切れでもなんでもいつかあなたを受け止めてくれるところがあるはず。なきゃ困るんだ。なきゃ。」
と言った。
私は続けて、半信半疑で
「あるんですかね、そんなところ、、、」
と苦笑いをしながら言った。
そして、私は近くで買ってきた和菓子とチャイティーを渡すと
先生は先生らしく弁当がわりに持ってきていた
バナナとトマトを
「これやるよ。」
と渡してくれた。
そして、研究室を出ようと振り返ったその時、
「あんたは大したやつだよ。」
と先生は言い放った。
私は一瞬黙って、、
「また。
本当にありがとうございました。」
と言って研究室を出た。
とぼとぼと廊下を歩きながら
一縷の涙が頬をつたった。
直接面と向かって褒められたことなんて一度たりともなかったから。
紙切れ、、、
私は紙切れを手に入れられるだろうか。
大したやつかは結果を出してからじゃなきゃ、、、
自分に納得できないなと思いながら、、、
とぼとぼと帰路についた。
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