王神愁位伝 プロローグ 第6話
第6話 鳥仮面と新たな子供たち
ー 前回 ー
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”ドスンッ!!”
─ はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・
爛に無数のムチで打たれたオレンジ髪の少年。誰かの声と共に、掴まれていた胸ぐらを離され地面にたたきつけられる。
地面からは、いつもの新緑の香りと混じって血の香りが充満していた。
薄れていく意識の中で、爛と一緒に話している不気味な鳥の仮面をつけた人物が視界に入る。
身長は小さく、子供たちの中で背の大きい子とは同じくらいの身長だ。紺色の服に白いマントを羽織り、左胸に月の形をした輝くブローチをつけている。服や仮面から覗く肌は濃く、黒に近い。
爛からオルカ様と呼ばれるその人物。いたずらっ子のような喋り方も特徴的だ。オルカは爛と少し話すと、鞭で打たれ気絶している子供に近づき、その子供の様子をじろじろと見た。
「あちゃー。結構やったね~。なに、何か嫌なことでもあったの~?」
「・・・逃げ出そうとしたので・・・。」
少しバツが悪そうに言う爛は、まるで主人に怒られている犬の様だ。
「うーーん。爛はカッとなると止められなくなっちゃうからね~。」
「っすみませ・・・」
「いやいや、いいんだよ~。それが君の良さだ。野生の・・・ね。」
オルカはいきなり腕を大きく開くと、空に浮かび優しく輝く月を見上げた。
「理性ばっか重要視する人間なんて、退屈極まりないじゃないか~!生き物であれば、心の奥にそれぞれ野生を飼っているのさ!それを押し殺すことこそ、美学なんて言う奴いるけど・・・。そんな世界、くっっっっそつまらないじゃーーーーん!!僕らは僕らだ!そのままで楽しまなきゃ!!アハハハ!!!」
無邪気に言っているようだが、オルカが纏う雰囲気は爛以上に不気味で、底知れぬ恐怖を何故か感じさせた。
また、オルカの周囲にいる白いトカゲのような化け物たちも加わると、より恐怖をそそる。見た目はトカゲの様だが、赤い鋭い瞳に、大きな口からなんでもかみ砕くような鋭い歯。
顔の中央には月の刻印があり、両手は鋭い鎌のような形をしている。
新しく連れてこられた子供たちも、そんな化け物に捕まえられ恐怖に怯えていた。中にはこの場の異様さに、失神してしまう子供もいた。
すると、オルカは血を流し倒れている子供に目を移した。
「爛、その子供持ってきて。もう限界でしょ?丁度いいかも~。」
「わかりました。」
爛は狼たちに目配せをし、狼たちは倒れ気を失っている子供を咥えて、中央の大きな塔の中に持っていった。
ふと、その奥で倒れているオレンジ髪の少年にも目がいくオルカ。
「ん?あの子は?」
「あぁ、あいつはまだ大丈夫です。どんなにひっぱたいても、いつも次の日にはピンピンしてますから。この中ですと、一番の古株っすよ。ちょっと頭がおかしいんです。そいつ。」
爛の言葉に、何やら興味を持ったようにオルカはオレンジ髪の少年の近くに来てまじまじと見た。
オレンジ髪の少年は、薄れゆく微かな意識の中で、オルカのつける鮮やかな鳥の仮面をじっとみた。
「へぇ~。爛の鞭で、ここまでされても・・・。ふーーーん。面白いね。」
「それよりもオルカ様、お疲れでしょう。連れてきてくださった奴隷は、いつものように番号付けて、あの塔に入れておきます。」
「うん。ありがと~。」
オルカと爛が話し、子供たちも塔に戻されていく中、オレンジ髪の少年は意識を失った。
ーー次回ーー
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