僕はお前が、すきゾ!(39)
優作が、映画を撮ろうと言い出した。古賀さんは女優志望らしい。何とも俗物な女だろう。まあ、それを言うなら、優作もおなじ俗物な人間なのかも知れない。優作は将来映画監督になって映画を撮るのだー、とか言っている。
優作も古賀さんも、世の中の事を何も分かっていないのだ。
僕みたいに、将来の事をちゃんと考えて、馬鹿らしい夢など追わず、堅実に生きていくのが、正しい真っ当な人間の生き方なのだ。
僕にはロボット工学の研究をするという輝かしい未来が待っているのだ!
だけど、僕も病気を治すまで、このままじゃ大学受験も無理だ。
あー、いつ迄も優作と映画観て、馬鹿笑いしていつ迄も一緒にいたい。
僕達は、何の計画も無く取り敢えず集まった。
映画を撮るのだ。主演古賀さん、監督優作、そして僕は古賀さんの相手役且つ、音響且つ、記録且つ、照明且つ、まあ、古賀さんと優作に全部、押し付けられたようなものだ。
その場には油科さんは来ていなかった。
だけど、僕はそれを敢えて、古賀さんに聞こうとは思わなかった。古賀さんからも油科さんの事は言って来ない。案外、油科さんと古賀さんは仲が悪いのかも知れない。女同士の友情程、嘘と欲に塗れているものは無い。
僕は誰も好きになったりしない。それにかかずらわう時間は、何とも無駄な時間だ。
誰かを好きになる時間を、自分の事に使った方が、何倍も有益な時間になるのは、分り切っている。
優作と古賀さんの関係だって、今は天にも昇る勢いで、舞い上がっているけど、いずれその己の馬鹿さ加減に二人とも気付く筈。
恋愛なんて馬鹿らしい。自分の時間削って、恋愛するなんて、どうかしてる。
僕は恋愛なんて、まっぴら御免だ。
誰が油科さんの事なんか、好きになるもんか。僕は優作だけいればそれで十分なんだ。
油科さんからまだ、何の連絡もない。やっぱり気になっている。彼女は今、どうしているのだろう。