その死体、誰のもの?
僕には人の心を読む力がある。
今日の会社の会議の時も酷かった。
「あー、だりい」
「クソ面白くねー」
「はやく終わんねーかな」
暗幕のカーテンが敷かれた会議室では、プロジェクターを使って僕が今年の決済についての報告をしていた。
こんな事はいつもの事だ。
僕は頭に入って来る思考波をなるべく聴かないように、アンテナを閉じて、報告書を読んでいた。
その時、僕の頭に入る声。
「早く死体を片付けないと・・」
死体?僕は周りを見渡した。
会議室の中では、眠りそうな上司や、資料に落書きをしている奴、真剣にプロジェクターから映る決済報告に目を移す者などが居た。
誰だ?あんな事を言ったのは。
会議室の中で一人、両手を前で組み、ブツブツと小さな声で何やら呟いている社員がいた。
初めて見る顔だった。
その顔色は青く、見るからに普通では無かった。
僕は正義感からか、会議が終わると彼の後を付いて行き、探りを入れた。
「あの」
彼は僕の顔を見て、ニヤリと笑った。
「聴こえてたろ?」
何で僕の力を知っているんだ。
こいつだ!絶対にこいつだ。
僕は彼の手から素早く逃れて、上司に言った。
「信じて貰えないかも知れないですが、この会社に人殺しがいるんです!助けて下さい」
上司は僕に向かって言った。
「一緒に来てくれ」
僕と上司はエレベーターに乗った。
「助かった・・」
僕が安堵のため息を吐いて、そう言うと、上司は、非常ボタンを押した。
「どうして人殺しの事を知ってるんだい?」
その目は人殺しの目だった。