呼吸。
僕は部屋の中央の丸い球体を見つめている。
会議室の机は全て取り払われ、部屋の中央には、水水しく柔らかい球体が浮かんでいる。
僕はその球体に近づき、顔を近づけると、向こう側が波打って見える。
球体は見る角度によって、姿形を変える。
僕はその球体に顔を浸す。
水の中で、僕は目を瞑って、口をムンズと瞑った。
息が苦しい。それは突然起きた交通事故のような感じだった。
僕は薄れていく意識の中で息を吐いた。
ぶくくっ。天井に水泡が浮かんで行く。
もう苦しくない――。
僕は水の球体に潜り込んだ。
僕は服のまま、水の球体の中で手足を動かして泳いだ。
僕の体の中に、もう酸素は残っていなかった。
しかし、全然苦しくなかった。
球体の中で息を吐いた瞬間のせめぎ合う苦しさを抜けたら、もう苦しさは無い。
いや、苦しいのは苦しい。
持久走の如くだ。
走り抜けて、ゴールテープに到達した後は、心地よいアドレナリンが沸き上がる。
頭が真っ白になる。
ハッとそこで僕は目覚める。
自分は生きているという実感を感じた。
人生にさよならするのは、まだ早い。
グショグショに濡れた服は体にピッタリと張り付いていた。
気持ち悪さを感じた。
僕は今、この瞬間も生きている。