浦島症候群
「ナンちゃって~~ん!!」
僕は目の前の光景に、それを現実と到底受け入れられなかった。
結婚式当日。
指輪交換のその時まで、僕は彼女を心底愛していた。
それがどういう事で、こうなったのか。
結婚式場の空気は張りつめ、氷りついていた。
彼女は一体、どんな気持ちでその言葉を言っているのだというのだ。
僕を貶めようとしているのか?
僕達は愛し合っていたんじゃないのか?
テヘペロと舌を出し、暴言とも言えるこの場にそぐわない言葉を耳にした会場一同は、彼女の次の言葉を待っていた。
と、彼女は目から大粒の涙を零し言った。
「酷いじゃない!」
彼女の目的は一体、何なんだ、と思った。
「う・そ」
彼女は口をすぼめて、僕の唇に人差し指を当てて、言った。
そして満面の笑みを浮かべた。
僕は彼女の言っている意味が皆目見当がつかなかった。
僕は呆然とその場に立ち尽くしていた。
そして会場にいる彼女以外の全てが同じ顔をしていた。
その時、ドアが開いた。
「ちょっと待ったーー!」
そこに現われたのは、学生服を着た高校生らしき一群だった。