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できるだけ小さく始める

冒頭に申し上げたいのは、新しいスキルの習得を目指してチャレンジする人を、まったく否定するつもりはありません。そういう人たちを支援する仕事をしていますし、むしろ応援しています。

ですが…

「好きなことを仕事にしたくて独立したのですが、仕事がないんです。。」という、禅問答のような経営相談を受けることが多々あり、これはちょっと触れておきたいなと思いまして…

今回は「未経験の仕事にチャレンジするリスク」と「リスクを回避するための提案」を書いてみます。

「未経験から〇〇!」はリスクが高い

まず、未経験の仕事にチャレンジすることのリスクについて解説します。

企業が成長を続けるために、どのような戦略を取れば良いか?そのヒントとなる考え方の一つに「アンゾフの成長マトリクス」というフレームワークがあります。

出典:中小企業庁「ミラサポplus」

アンゾフは、成長戦略を「製品」「市場」の2軸におき、それをさらに「既存」「新規」に分けました。

それぞれを掛け合わせると、下記のようになります。

①既存製品×既存市場(市場浸透戦略)
②新規製品×既存市場(新製品開発戦略)
③既存製品×新規市場(新市場開拓戦略)
④新規製品×新規市場(多角化戦略)

4つのうち「④新規製品×新規市場多角化戦略)」が、最もハイリスク・ハイリターンな戦略です。未経験の市場に、新しい製品・サービスで挑むわけですから、冷静に考えてみれば当たり前です。

しかし、意外とこの戦略を取って失敗する企業は少なくありません。なぜなら、隣の芝生は青く見えるものだし、よく知らないことは楽観的に見積もってしまいがちだからです。

・・・

個人も同じだと考えています。
成長マトリクスを、スキル×業界に置き換えてみました。

世の中には「未経験から〇〇!」といった商材が多く存在しますが、それは④の最もハイリスク・ハイリターンな戦略なのです。

「アンゾフの成長マトリクス」をスキル×業界に置き換えたもの

「ポートフォリオワーク」という選択肢

とはいえ、リスクを取ってでも未知の仕事に活路を見出したいその気持ち、理解できないわけではありません。

どうしても「未経験から〇〇!」に挑戦したいという方にお薦めするのは、複数の職業を掛け持つ「ポートフォリオワーク(複業)」です。以前の投稿にも書きましたが、私自身も4つの職場を掛け持つ「ポートフォリオワーカー」です。

4つのポートフォリオ

未経験の仕事にチャレンジしたい方にお薦めするポートフォリオワークは、今の仕事を続けつつ、空き時間で複業を始めるという方法です。例えば「会社員をしながら週末だけデザインの仕事をしてみる」といった感じです。

「月3万円ビジネス」という、スモールビジネスの複業を提唱されている本がありますが、まずは月商3万円ぐらいの規模を目指してみると、たとえうまくいかなかったとしてもさして痛くありません。

ポートフォリオワークのメリット

「もう独立しちゃったよ」という方にとっても、ポートフォリオワークは有益な戦略です。私が考えるポートフォリオワークのメリットは「収入源の分散」「掛け算による差別化」「精神の安定」です。

収入源の分散

複数の仕事を掛け持っていれば、たとえ1つの仕事からの収益がゼロになったとしても、別の仕事で収益を確保できていれば、不測の事態を乗り切ることができます。

ポイントは、複業する仕事は業界を「ずらす」ことです。同じ業界で複数の仕事を掛け持つのも収入源の分散ではありますが、有事には同時に業績が悪化する可能性が高いので、リスク分散という観点では十分とはいえません。

掛け算による差別化

「スキルの掛け算」のメリットについては、様々なところで提唱されています。ひとつの分野では競合に敵わなくても、複数の仕事を掛け持ちして、それぞれの知見やノウハウを掛け合わせることにより、その人ならではの唯一無二の強みが生まれます。

知見やノウハウだけでなく、ネットワークもまた重要なスキルとなります。複数の業界をまたいで交流ができる人は、業界同士のハブ(hub)として重宝されます。通訳や外交官のようなポジションですね。

精神の安定

これは経験してみると分かりますが、「貧すれば鈍する」ということわざの通り、資金が足りないという状況は心を貧しくします。びっくりするほど、お金以外のことが考えられなくなってしまいます。

【貧すれば鈍する】
貧乏すると、生活の苦しさのために精神の働きまで愚鈍になる。

デジタル大辞泉(小学館)

「収入源の分散」「掛け算による差別化」という2つのメリットを利用することで、収益が安定して精神面に余裕が生まれます。お金の心配が絶えない状況では、良いアイデアは生まれませんし、良い仕事もできません。何よりもまずは安定した収益確保を目指しましょう。

チャレンジはスモール・スタートで

今回は「ポートフォリオワーク(複業)」という手法を紹介しました。

要は、安全圏に身を置きながら、できるだけ小さくチャレンジしましょうということです。小さく始めれば、たとえ失敗しても大惨事にはなりません。

昨今はとかく起業・創業を煽る風潮があるので、「好きな仕事一本で稼げるようにならないとダメなのでは?」と、不安や焦りを感じる方もいらっしゃるかも知れません。ですが、無理をしなくても、好きな仕事はできます

もし実現したいことが、好きな仕事を続けていくことであれば、それが本業であろうがなかろうが、大した問題ではありません。もし、運よく軌道に乗ってきたら、そのときは本業にして大きく伸ばせばよいのです。

賢明な皆さんは、ぜひ小さく始めることを心掛けてください。

では。


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