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見たことがない世界が未来

数回にわたって、メンタルが弱った状態から回復する力(レジリエンス)を構成する、3つの個人内要因について触れています。

新奇性追求
さまざまな物事、人物、事象に興味や関心を持つ

感情調整
特に「悲しい」「辛い」といったマイナス感情をコントロールする

肯定的な未来志向
将来に対して目標、夢、ビジョンを持つ

今回は「肯定的な未来志向」について改めて考えていきます。

未来は変動する不確実なもの

「不確実性(VUCA)の時代」と言われて久しいですが、これだけ想定外の出来事がたて続けに起きると、そもそも未来って不確実なものだよね…と、改めて認識した方も少なくないのではないでしょうか。

VUCA(ブカ、ブーカ)はビジネス用語。Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の頭文字を並べたアクロニム。1990年代後半にアメリカ合衆国で軍事用語として発生したが、2010年代になってビジネスの業界でも使われるようになった。「今はVUCAの世界になった」というような文脈で使われることも多い。

VUCA(Wikipedia)

2020年、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行により、世界各国でロックダウンや入国制限などの措置が実施。それに伴って、近代史上初めてオリンピックが延期となりました。また、ライブ、フェス、舞台公演などのあらゆるイベントも延期または中止となり、リアルな空間に集客させるビジネスは大打撃を受けました。

2021年、世界経済は徐々に正常化に向かいつつも、物流の逼迫と供給制約により、半導体をはじめとする部品・材料不足が深刻化。自動車業界をはじめとする製造業では、減産や製造停止が相次ぎました。モノ不足が常態化して、あらゆる商品の価格が上昇していきます。

さらに2022年に入ると、2月24日にロシアがウクライナ侵攻を開始、現在も軍事侵攻が続いています。その影響を受けて、原油をはじめとする燃料の価格が世界的に高騰し、3月から一気に進んできた円安も相まって、製造や輸出入のコストに大きな影響が出ています。

この3年間を振り返ってみても、100年に一度の危機と呼べそうな出来事が、毎年のように起こっています。2020年代は、歴史に残る大転換の時代と言ってよいでしょう。

そんな不確実な未来ですが、こうなるのではないかな?と予測を立てることはできます。そして、未来を予測するためには2種類のアプローチがあります。フォアキャスト(forecast)バックキャスト(backcast)です。

過去から未来を予測するフォアキャスト思考

フォアキャストは、現在よりも前にあるデータや経験から、未来がどのようになっていくかを予測する思考法です。

例えば、ブルームバーグ・エコノミクスの統計分析によると、アメリカ経済が2023年10月までにリセッション(景気後退)に転じる確率は100%であると報じています。その根拠として、40年ぶりの高水準なインフレ、それを抑制するための大幅な利上げ、政治的・軍事的な緊張の高まりなどが、経済を圧迫しているという理由が挙げられています。

また、1978年以降アメリカで逆イールドという現象が観測されると、平均して約1年半後に景気後退入りするというデータがあります。2022年7月以降の米国債券市場では、10年国債利回りが2年国債利回りを下回る逆イールドが発生しており、これも景気後退という未来予測の根拠と言えそうです。

短期金利が長期金利を上回り、イールドカーブ(利回り曲線)が右下がりの曲線となっている状態のこと。市場関係者が将来的に金利が下がるとみている場合に起こる現象で、一般的に景気後退の兆候として捉えられる。

逆イールド(野村證券>証券用語解説集)

このように、手元にある情報をもとに未来予想図を描いていくのがフォアキャストの思考法です。ビッグデータを利用したAI予測などは、フォアキャスト思考の技術(Forecast Tech)と呼ばれています。

未来を起点にして逆算するバックキャスト思考

対してバックキャストは、未来の目標やビジョンを描いて、そこに向かっていま何をすればよいかを考える思考法です。

バックキャストは、1970年代に環境問題を解決するために生まれた概念だと言われており、例として温暖化対策がよく取り上げられます。地球規模の課題である気候変動問題の解決に向けて、2015年にパリ協定が採択され、120以上の国と地域が「2050年カーボンニュートラル」という目標を掲げています。そして、各々がその目標に向かって、自動車のEV化や再生可能エネルギーの主力電源化などの施策に取り組んでいます。

持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals、略称: SDGs)もまた、バックキャスト思考の取り組みであるといえます。2015年9月25日の国連総会で、持続可能な開発のために必要不可欠な、15年間の行動計画である『2030アジェンダ』が採択され、その中で2030年までに達成するべき17の世界的目標と169の達成基準が示されました。そこから各々が取り組める目標を選択して、達成に向けて成すべき施策を考えていきます。

このように、理想の未来予想図を先に描いてから、いつまでに何をやるかを決めていくのがバックキャスト思考です。今の延長線上に目標を設定する必要がないため、前例がない革新的なゴールを目指すことも可能です。

「肯定的な未来志向」にはバックキャスト

どちらも役に立つ思考法ですが、「ありたい未来の姿」から逆算するバックキャスト思考のほうが、肯定的な未来志向には役立ちそうです。

特に、目まぐるしく情勢が変化し、かつ明るい話題が少ない現代においては、今の延長線上に明るい未来が見えないという方も少なくないでしょう。そういうときは、一旦現在のことは横に置いておいて、まず自分が理想とする未来のビジョンを、ありありと想像してみましょう。

そのゴールから逆算して、いつまでに何をすればよいかを考えていくと、理想の未来に近づくことができるかもしれません。ただし、あまりにも現実離れした目標を立ててしまい、計画が頓挫する可能性も大いにあるので、その点はくれぐれも注意してください。次回は、適切な目標設定のコツについて書いてみようと思います。

では。


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