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決断疲れに効く薬

私たちの日常は意思決定の連続です。ビジネスでもプライベートでも、何かしら決断しなくてはならないという場面はたくさんあります。

どの服を着ようか、どの靴を履こうか、ご飯にしようかパンにしようか…などなど、私たちは1日に35,000もの決断をしているといわれています。

今回はより良い決断をするための方法について書いてみます。

すべての選択肢に正解があるわけではない

「決断するのが苦手」という人は多いのではないでしょうか。こういう人は優柔不断と呼ばれます。会社を経営している事業主のなかにも、意思決定が得意でない人は少なくありません。

即決できない理由はいくつか考えられますが、根底にあるのは決め手に欠けるという感情ではないでしょうか。確実な答えが見えない状況のなかで決断を迫られたとき、私たちは迷い立ち止まってしまいがちです。

現代社会は情報過多であるため、調べれば調べるほど正解が分からなくなるということが往々にしてあります。あまりにも選択肢が多すぎると、どれを選べばいいのか判断するのが難しくなります。

過度に慎重な人は、しばしばすべての可能性を考慮したいと感じるため、決定を下すのに時間がかかるでしょう。これはリスク回避の一種ですが、結果として意思決定を遅延させることに繋がります。

自己評価が低い人や自分に自信がない人は、自分の決断を信じることができず、決断に踏み切れないことがあります。一度決断してしまうと、その結果に対する自身の責任を恐れる傾向があるためです。

すべての選択肢に正解が用意されているわけではなく、決断のハードルには個人差があります。

決断力の源泉

決断するという行為は、エネルギーの消費を伴います。短時間のあいだにいくつもの決断を繰り返すと、精神的なリソースが枯渇してしまい、自我消耗という状態に陥ります。これがいわゆる決断疲れです。

自我消耗(じがしょうもう、英: Ego depletion)とは、セルフコントロールや意志力は、使うとなくなる精神的なリソースの限られたプールを利用しているという考えを指す。精神的活動のためのエネルギーが低下したとき、セルフコントロールははっきりと弱っており、自我消耗の状態にあるとされる。特に、自我消耗の状態を経験することは、後に自分をコントロールする能力を弱らせる。セルフコントロールを要する(精神を)枯渇させるようなタスクは、その後のセルフコントロールを要するタスクを阻害する効果をもつことがある。そのタスクが明らかに無関係の場合でもそうである。

自我消耗(Wikipedia)

フロリダ州立大学の社会心理学者であるロイ・バウマイスター教授によると、人は意思決定をするときに前頭葉にあるウィルパワー(意志力)を使っているそうです。

ウィルパワーはスマートフォンのバッテリーのように有限で、朝起きたときが最も満たされていて、意思決定をするたびに消耗していきます。また、過去の失敗を悔んだり、未来について不安を憶えたりする際も、ウィルパワーを消耗しています。

さして重要でない意思決定や、考えてもどうにもならないことにウィルパワーを消費してしまうと、本当に重要な決断を迫られたときに、賢明な判断ができなくなってしまいます。

決断疲れを防ぐには?

決断疲れに陥らないようにするためには、ウィルパワーを節約するか、ウィルパワーを回復させる必要があります。以下に5つの方法を記します。

1.決断の数を減らす

Appleの共同創業者であるスティーブ・ジョブズは、イッセイミヤケの黒いタートルネック、リーバイス501、ニューバランスの990シリーズという、いつも同じ服装を着続けていました。

「毎日同じ服を着る」という習慣は、服を選ぶという決断を削減して、ウィルパワーを節約するという利点があります。

服装以外にも、毎日の行動をルーティーン化することで、余計な決断を減らしてウィルパワーを保持することができます。

2.目の前のタスクに集中する

仕事はシングルタスクが最も効率が良いとされています。パソコンでニュースサイトをチェックしたり、スマートフォンでチャットを確認したり、気が散りがちな環境下で仕事をしていると、タスクを切り替えるたびにウィルパワーを消耗して、パフォーマンスが落ちてしまいます。

集中したいときは、スマートフォンをマナーモードにして、カバンの中に隠してしまいましょう。パソコンの通知も切っておくと尚良いですが、レスが欲しい人が困るかもしれないので、状況を見て判断しましょう。

3.食事で回復させる

脳はブドウ糖をエネルギーにして働きます。頭を使ったあとにおやつを食べたくなるのは、糖分を欲しているからです。

ただし、高糖質の食べ物を摂取すると、血糖値が急激に上昇し急激に下がるため、一旦は集中力が回復しますがすぐにくたびれてしまいます。集中力を持続させるためには、低糖質食品を食べなければなりません。

アーモンド、カシューナッツ、チアシードなどのナッツ類は、仕事中に摂取しやすい低糖質食品です。在宅勤務の人には、チーズや低糖質ヨーグルトなどもお薦めです。牛乳は意外と高糖質なので注意してください。

4.正しい姿勢をとる

姿勢が悪い状態で仕事をしていると、血行が悪くなって脳にブドウ糖が行き渡りにくくなります。また、長時間同じ姿勢を続けていても、やはり血流が悪くなります。デスクワークの方は、特に注意が必要です。

15分に一度立ち上がって、軽いストレッチをしたり歩き回ったりすることで、脳にブドウ糖が行き渡りやすくなり、ウィルパワーを回復できます。

椅子の代わりにバランスボールを使ったり、スタンディングデスクを活用したりするのも有効です。

5.脳を休ませて回復させる

いよいよ脳が働かなくなったと感じたら、思い切って寝てしまいましょう。仕事中に20分程度の仮眠を取るだけでも、ウィルパワーを回復させることができます。

欧米ではパワーナップと呼ばれる、勤務時間中の昼寝を推奨している企業もあります。昼寝部屋があるオフィスって憧れますよね。

どうしても昼寝ができない場面では、瞑想(マインドフルネス)も脳を休める効果があります。目を閉じて3分~5分程度、自分の呼吸だけに集中する時間を取ることで、頭がすっきりします。

決断力は鍛えることができる

私たちの人生はプログラミングされているわけではないので、どうするかを自分で決断しなければ物事が前に進まない局面というのが、少なからず存在します。

このとき、私たちの決断を促してくれるエネルギーを、ウィルパワーのほかにもうひとつ挙げるとしたら、それは経験則ではないでしょうか。

確かな根拠はないけれど、こうしたほうが良いかもしれないと思えるようになるためには、自分で決断してうまくいった・いかなかったという経験値を積み重ねていく必要があります。そうして培われた能力を直感と呼びます。

直感は経験を積むにつれ成熟していきます。それは、自分の中に自分なりの判断基準が構築されていくからです。

自分がどう決断すれば良いかについてのベストアンサーは、検索エンジンやAIに訊ねても得ることはできません。自分で考えて決めるしかないのです。

仕事は一発勝負ではないので、取り返しがつかない失敗というものは、意外と少ないものです。ああだこうだと悩んで、ウィルパワーを消費していては勿体ないので、さくっと決断して行動していきましょう。

では。


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