Tカードの個人情報が捜査当局にダダ洩れしている件

▼先日、2019年1月4日付の各紙に、検察が顧客情報の入手方法をリスト化し、300社弱からの情報提供が常態化しているであろう件を紹介したが、

もっと身近に感じられるニュースが出た。みなさん、Tカード、持ってますか?

Tカード情報、令状なく提供 レンタルやポイント履歴 会員規約に明記せず〉東京新聞2019年1月21日 朝刊

コンビニやレンタルショップなど、さまざまな店で買い物をするとポイントがたまるポイントカード最大手の一つ「Tカード」を展開する会社が、氏名や電話番号といった会員情報のほか、商品購入によって得たポイント履歴やレンタルビデオのタイトルなどを、裁判所の令状なしに捜査当局へ提供していることが二十日、内部資料や捜査関係者への取材で分かった。「T会員規約」に当局への情報提供を明記せず、当局も情報を得たことを本人に知られないよう、保秘を徹底していた。

 Tカードの会員数は日本の人口の半数を超える約六千七百万人で、提携先は多業種に広がる。当局は、内部手続きの「捜査関係事項照会」を使い、どの店をどのような頻度で利用するかなど、私生活に関する膨大な情報を外部のチェックを経ずに入手している。プライバシー保護の観点から問題がある。

 この会社はカルチュア・コンビニエンス・クラブ(東京、CCC)。取材に「長年にわたる捜査機関からの要請や協議の結果、法令やガイドラインにのっとり、開示が適切と判断された場合にのみ、必要な情報を提供すると決定した」とした。〉

▼会員規約には書いていなかったそうだ。

〈警察や検察の内部資料によると、Tカードの(1)会員情報(氏名、生年月日、住所など)(2)ポイント履歴(付与日時、ポイント数、企業名)(3)レンタル日、店舗、レンタル商品名-のほか店舗の防犯カメラ画像などを入手できるとしている。ポイント履歴やレンタル履歴は、過去十三カ月間保存と記載されていた。

 問い合わせ先はCCC本社の一部に絞り、郵送で回答。照会方法は二種類あり、対象人物のカード番号か、住所、氏名、生年月日があれば調べられる。捜査当局は内部で、CCCから得た情報を本人に告げてはならず、察知されるような言動も慎むよう通達。特にレンタル履歴は厳重に取り扱うよう定めている。

▼この記事を読めばすぐ想像がつくが、DVDのレンタルをせずにオンラインで映画や動画を見ている人の閲覧履歴も、どんどん捜査するようになるだろう。机の上でパソコンとにらめっこするだけで捜査が進むのだから、とても便利だろうと思う。つまり、GAFA(グーグル、アマゾン、フェイスブック、アップル)の個人情報である。

▼筆者もTカードは持っている。ファミリーマートで買い物をする時に使う。少しずつでもポイントがたまるとうれしいものである。記事によると〈捜査当局はTカードの履歴を対象者の「足跡」として、積極的に活用している〉そうだ。

〈捜査関係者によると、ポイントサービスを展開するCCCへの情報照会は日常的で、一度に数十件の照会をした部署も。数の多さにCCCの回答が遅れがちとなり、利用ルールを守るよう当局内で周知されたこともあった。〉

▼どうやら捜査に使いまくりのようで、その様子が、以下の記事からかなり詳しくわかる。

〈ある事件では、捜査担当者が対象者のTカードを照会したところ、ほぼ毎日、同じ時間帯に特定のコンビニに来店し買い物をしていると判明。店の防犯カメラの映像から本人と特定し、待ち伏せして身柄を拘束した。捜査関係者は「ポイントが付くのに、カードを提示しない理由はない」と話す。Tカードを貴重な情報源と位置付けている。〉

〈対象者がTカードの会員かどうか分からなくても、氏名などで「取りあえず問い合わせる」ことも可能。そのせいか、各地の捜査当局から大量の照会が寄せられ、CCCが回答するまでに一カ月超かかった例も。この後、当局内では各部署に照会の必要性を吟味し、レンタル履歴の取り扱いには特に注意するよう求める通達が出たという。〉

▼このニュースで問題を感じたのは2つ。それは捜査手法云々ではない。便利な道具ができれば、使うのが当然だろうと思う。どんな組織でも活用するのが必然だ。

問題だと思ったのは、まずTカードの会員数が6700万人もいる、という事実だ。すごい数だ。「6700万人の個人情報」は、捜査当局に限らず、他の分野の人々にとっても「宝の山」に映るだろう。

そしてもう一つ問題に思ったのは、Tカードに限らず、幾つもの巨大会社に、膨大な個人情報が蓄積され続けているという事実そのものだ。

日本が生んだ傑作アニメ「攻殻機動隊」のような社会が目の前に広がっている。たとえ人間の体が「義体」化しなくても。

(2019年1月22日)

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