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王将戦リーグが滅法(めっぽう)面白い件(その1)

▼2020年10月現在、将棋の世界には「四強」がいる。

藤井聡太二冠、永瀬拓矢王座、渡辺明名人、豊島将之竜王の4人だ。

羽生善治氏は、この4人に入っていない。

▼まず、いつものように2種類のレーティングでトップ10人を見ておこう。

▼将棋棋士レーティングランキングhttps://shogidata.info/list/rateranking.html

レート更新済み : 10月28日対局分

1 藤井聡太 二冠 1962.5
2 永瀬拓矢 王座 1961.9
3 渡辺明 名人 1946.6
4 豊島将之 竜王 1940.7
5 羽生善治 九段 1834.4
6 斎藤慎太郎 八段 1815.7
7 菅井竜也 八段 1807.7
8 糸谷哲郎 八段 1801.8
9 千田翔太 七段 1796.7
10 広瀬章人 八段 1793.8


▼棋士ランキング
http://kishibetsu.com/ranking2.html

2020/10/28 現在

1 藤井聡太二冠 1970
2 永瀬拓矢王座 1969
3 渡辺明名人 1958
4 豊島将之竜王 1954
5 羽生善治九段 1847
6 斎藤慎太郎八段 1829
7 菅井竜也八段 1815
8 糸谷哲郎八段 1813
9 千田翔太七段 1809
10 広瀬章人八段 1806

▼これを見ればわかるように、1位から4位はダンゴ状態で、4位の豊島氏と5位の羽生氏との間には100の差がある。

▼その羽生氏は50歳。いま、豊島竜王に挑戦中だ。7番勝負のうち2戦目まで終わり、1勝1敗。

レーティングでは豊島氏が有利だが、100や200の差では、結果は分からない。ということで胸の熱くなる竜王戦だ。

▼次号で、レーティング2位につけている永瀬氏へのインタビュー記事を紹介する。

今号は、その前提情報。

▼永瀬氏のインタビュー記事は、2020年7月25日付の日本経済新聞に載ったのだが、案外話題になっていない。柏原海太郎記者。

▼筆者は、現在の藤井聡太氏をしのぐとすれば、永瀬氏だと思っているのだが、レーティングを見ればわかるとおり、10月28日時点でほとんど2人の差がなくなっている。今号では、その関連記事を引用しておこう。スポーツニッポンの2020年10月27日配信記事。適宜改行と太字。(我満晴朗記者)

〈藤井2冠、最年少3冠持ち越し 永瀬王座に逆転負けで王将挑戦かなわず〉[ 2020年10月27日 05:30 ]

〈高校生3冠の夢が散った。将棋の第70期王将戦(スポーツニッポン新聞社、毎日新聞社主催)7番勝負で渡辺明王将(36)の対戦相手を決める挑戦者決定リーグは26日、東京都渋谷区の将棋会館で2局を行い、永瀬拓矢王座(28)が藤井聡太2冠(18)を164手で下した。

永瀬は開幕3連勝、対照的に藤井は開幕3連敗で挑戦権争いからの脱落が決定。最年少3冠挑戦は来年度以降へ持ち越しとなった。

局後の藤井は、どこかサバサバとしたムードを醸し出していた。消え入るような声ではなく、それなりに明快な口調で敗戦を振り返る。「3連敗で下を見る戦いになってしまった。残念ですがリーグ残留(7人中上位4人)を目指して最後まで頑張りたい」と達観のコメント。第70期の挑戦者争いに関しては、あまりに早すぎる終戦だった。

努めて無表情を装いながら、心では絶叫していただろう。戦型が定まらないまま迎えた後手・永瀬の12手目。8二の飛車がするすると横に滑り、4二に着地する。居飛車が売りの永瀬が選んだ究極の勝負形「四間飛車」だ。

公式戦では約3年ぶりの布陣に、さしもの高校生2冠も面食らった。わずか1分の思考で▲5六歩と応じた一方で「(振り飛車は)事前に予想していなかった」と、当惑ぶりを明かしている。

▼永瀬氏は逆転勝ちだった。この王将戦リーグで藤井氏に勝った豊島氏も、藤井氏のミスからの大逆転勝ちだった。ついに藤井氏が豊島氏に勝つか、と思われたのだが、豊島氏は天敵で、これまで藤井氏の0勝6敗。

▼このメモを読んでいる人の多くが気にしているだろう、藤井氏のこの後の記録関連情報もスポニチに載っていた。

〈《次は「叡王」に挑戦か》羽生が持つ史上最年少3冠記録更新への挑戦は来年度に持ち越し。挑戦者資格を得られるA級に所属しないため名人戦には挑戦できず、3冠目で可能性があるのは5つのタイトル。

スケジュールを見ると、例年通りなら叡王戦の7番勝負が4~6月に行われる。だが、来年度から主催社が代わることになり、29日に詳細が発表される。日程が後ろにずれれば、例年9~10月に5番勝負がある王座戦が最も早い挑戦となる可能性がある。以降は竜王戦、王将戦、棋王戦の順だ。〉

▼さて、勝率8割超えという驚異的な強さを誇る藤井氏だが、王将戦リーグでは3連敗。羽生、豊島、永瀬というトップ棋士3氏が、それぞれ、「藤井聡太に勝つ」という一点にしぼって、練りに練った秘策をぶつけてきただろう。永瀬氏に至っては封印していた振り飛車という、おそらくまったく藤井氏が想定していない戦法をぶつけた。面白い。

王将戦リーグはA級順位戦よりも過酷な戦いだと言われているが、上記の3連敗の相手をみればよくわかる。この後戦う相手も強豪ぞろいだ。

▼ところで、今日も王将戦リーグが行われていて、藤井聡太氏は名人経験者である佐藤天彦九段と対戦中である。なんと、佐藤氏もまた、永瀬氏と同じく、振り飛車で藤井氏と戦っている。

「藤井聡太に勝つためには、何でもやる」というトップ棋士たちの戦術が、この王将戦リーグを通して初めて可視化されてきた、ともいえる。ますます面白い。

今晩、レーティングが変化するかもしれないので、それを待ってから次号を書く。

(2020年10月29日)

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