【ニュース往来】 サッカー場でテロ
【ニュース往来】2016年3月26日(土)
1)イラクで自爆テロ、60人負傷 - サッカー場、ISが犯行声明
1)イラクで自爆テロ、60人負傷 - サッカー場、ISが犯行声明
▼2016年3月26日付の日経夕刊3面に〈サッカー場で試合中にテロ/イラク、29人死亡〉という1段記事が載っていた。もとの共同の記事はこちら。
〈イラクで自爆テロ、60人負傷 - サッカー場、ISが犯行声明/[2016/03/26]【カイロ共同】/イラク中部イスカンダリヤで25日、サッカー場で試合中に自爆テロがあり、AP通信によると観客の市民ら29人が死亡、60人が負傷した。過激派組織「イスラム国」(IS)が犯行声明を出した。〉
日経に載っていたのはここまでだったが、共同の配信記事はあと少し続く。
〈イラク軍は、IS支配下の北部モスルを州都とするニナワ州で対IS作戦の本格化を発表したばかりだった。/一方、内戦状態のイエメンでは同日、南部アデンで自爆テロが3件続き、市民を含む20人が死亡。ISが犯行声明を出した。〉
▼2001年9月11日の同時多発テロ以来、アフガンやイラクでテロが起こると、大きく報道され、同じようなテロが続くと、次第に小さくなっていった。「New York Magazine」によると、
ISIS Suicide Bomber Kills 41 at Soccer Game in Iraq By Chas Danner
試合中ではなく、試合後の表彰式でのテロだったようだ。バグダッドから南に50キロ弱の場所で、死者数は41人に増えている。映像を見ると、小さなサッカー場で、内外の境界線はない。
▼こうした公共の場での自殺爆弾によるテロには、ここ10数年ほどで「テロの報道に慣れたから」という(恐ろしい)理由によって、もはやほとんど価値がない。だから1段のベタ記事になる。
しかし、イスラム国が頻繁に自殺爆弾によるテロを起こしており、また、少なくともパリで大規模テロが起きた2015年以降、こうしたテロのニュースからは、日本で起こる場合を考えて、学ぶべき点が増えている。
▼今このニュースが1段のベタ記事である理由は、「海外のテロのニュースに慣れたから」ということだけではないだろう。イラクはアジアである。21世紀以降、日本にとってのアジア像が狭くなっていることが、そもそもの理由ではないだろうか。中東は多くの日本人にとって、物理的にではなく、精神的に遠い。
もう一つの理由は、「日本でテロが起こる」可能性に、ニュースの編集者たちの想像力が働かないからだろう。
(2016年3月27日 更新)