共同通信の価値 世論調査の場合

【ニュース往来】2016年5月1日(日)

共同通信の価値 世論調査の場合

▼2016年5月1日付東京1面に、共同通信の世論調査報道が載っていた。

安倍政権下の改憲反対56%/64%が地震対応評価、世論調査/2016/4/30 18:55/共同通信社が29、30両日に実施した全国電話世論調査によると、安倍晋三首相の下での憲法改正に「反対」が56.5%で「賛成」の33.4%を大きく上回った。熊本、大分両県で相次いでいる地震への安倍政権の対応には「評価する」「どちらかといえば評価する」の合計が64.5%に上った。内閣支持率は48.3%で、3月の前回調査48.4%から横ばい。不支持率は40.3%だった。/首相は9条を含む憲法改正を目指し、夏の参院選で改憲勢力拡大を図る意向を示しているが、根強い反対論が政権戦略に影響を与える可能性もある。〉

▼続いて、公明支持層に改憲反対が多いという調査結果が紹介されている。

〈共同通信社の世論調査によると、安倍晋三首相の下での改憲の賛否に関し政党支持層別でみると、連立与党の公明党支持層で賛成は34.9%にとどまり、反対が59.2%に上った。「支持政党なし」の無党派層は68.0%、民進党支持層で91.8%が反対し、夏の参院選で改憲の争点化を図る首相への警戒感が浮かび上がった。〉

▼連立与党の中に、改憲反対が支持層の6割を占める公明党が入っている現実があらためて可視化された。しかし、この結果は首相官邸がメディア対策の判断材料として扱っても、社会的に共有されるとはいえない。

▼共同通信の世論調査報道は、ブロック紙、県紙、俗にいう地方紙で報道される。しかし朝日、読売、毎日、日経はほとんど扱わない。それぞれ独自の世論調査を行なうからだ。東京で共同の世論調査報道を読めるのは東京新聞(中日新聞)のみ。共同通信のスクープも、これと同じ扱いを受けている。

いっぽう東京以外のほとんどの各道府県では、ブロック紙、県紙の購読率が全国紙の購読率を圧倒している。共同通信の世論調査を大きく扱う新聞も多い。つまり、共同通信のこうした世論調査について、東京以外に住んでいる新聞読者は知っていても、東京在住の新聞読者はほとんど知らない、という情報格差が発生している。共同通信の価値は、東京に住んでいる人々よりも、東京以外に住んでいる大半の日本人にとって大きい。

▼ただし、この情報格差と関係なく、東京でつくられている全国紙の影響力が圧倒的に強く、情報=権力の東京一極化は甚だしい。東京で報道されないと社会的に共有されないという現実がある。とくに安倍政権下の政策は讀賣と産経の書いているように概ね進んでいく。この力学はここ数年変わらない。大きな政治問題でしばしば「讀賣と産経」対「それ以外のほとんどの新聞」という論調の対立が生まれても、必ず「読売と産経」が書いたように進む、という現象が繰り返されている。

もちろん、各ブロック紙や県紙は、それぞれの社説や論説記事を読めばわかるように、共同通信の論調に従っているわけではない。反対の論調の新聞もあるし、結論が一緒でも論拠が多様な場合も多い。それでも、大きな政治問題について「讀賣と産経」対「それ以外のほとんどの新聞」という対立が成り立っているように見える。

この構造、具体的には「讀賣と産経」の影響力が強い理由は、学術的な研究対象になるのではないか。もうやってる人がいるのかな。

(2016年5月1日 更新)

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