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毎日・八田浩輔記者の記事が抜群に面白い件 コロナワクチン開発

▼毎日新聞の2021年3月17日付1面トップに、コロナワクチン開発についての抜群に面白い記事が載っていた。八田浩輔記者。

〈コロナで変わる世界 第3部 イノベーションの時代/1(その1)/mRNAワクチン立役者 テディベアに全財産隠し/「鉄のカーテン」越え渡米後、研究に心血

〈東西冷戦期の1985年、共産主義体制の東欧ハンガリーから「鉄のカーテン」を越えて米国へ向かおうとする1人の女性科学者がいた。手持ちの金は、知人に車を売って得た現金を闇市で両替した約900英ポンドだけ。当時は100米ドルを超える外貨の持ち出しが禁じられていた。

    賭けに出た。エンジニアの夫、そして2歳の娘と一緒に出国する際、娘が抱いていたクマのぬいぐるみ「テディベア」に、この全財産をそっとしのばせた。

 「隠すしかなかったのです」と彼女は打ち明ける。米国の受け入れ先の大学は決まっていた。「でも100ドルで(最初の給料日までの)30日間、家族3人で何を食べてどこで暮らせというのでしょう。(移動時には)娘からも、ぬいぐるみからも目が離せませんでした」。米国には親戚も頼れる人もいなかった。「お金もなく、片道の旅でした。だから地獄のように働きました。生き残るために」

    この女性こそ、新型コロナウイルスのワクチン開発の立役者の一人、カタリン・カリコさん(66)=米東部ペンシルベニア州在住=だ〉

▼書き出しが面白いし、3面の見出しもいい。

〈成功信じる同僚 励みに/降格腐らず 重要な発見/「人生かける」ベンチャーに転身〉

▼八田氏は、『偽りの薬 バルサルタン臨床試験疑惑を追う』の共著者としても知られる。この本はなぜかアマゾンで評価が低いが、名作である。とんでもない大問題なのだが、なんとなく話題が終わってしまった、日本社会の不思議をあらわす事件だった。

▼彼の記事は、東日本大震災についても、環境問題についても、いいものが多い。彼の記事には、視点と取材に裏付けられた「ストーリー」がある。筆者が記者名で記事を探す、何人かの記者のうちの一人だ。

(2021年3月18日)

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