ウクライナ戦争は「アメリカが管理する戦争」である話
▼10日ほど前、ドイツの戦車をウクライナに供与するかどうか、が日本語の国際ニュースの大きな話題になっていた。これは「西側」の利害に大きく関わるから、ニュースの扱いが大きくなる。
そして、ドイツが戦車を供与するかどうかは、「ウクライナ戦争が長期化するかどうか」に関係する。ドイツはアメリカと話し合った後、供与すると決めた。ウクライナ戦争が終わる兆しは無い。
▼最近のニュースから2つ。共同通信とNHK。
まず、共同通信。このニュースを読んで筆者は、ウクライナ戦争は「アメリカが管理する戦争」なのだという現実を再認識した。
〈米、対ロシア攻撃を待つよう助言 ウクライナに、訓練時間の確保を〉
2023年1月22日(日) 10:20配信
〈【キーウ共同】ロイター通信は22日までに、米政府高官がウクライナ側に対し、米国が供与を決めた兵器が配備され、訓練が完了するまでロシアへの大規模な攻撃を待つよう助言したと報じた。攻撃を成功させるため、訓練時間を十分確保する必要があるとしている。
米側はウクライナが防衛に注力する東部ドネツク州の要衝バフムトについて、ロシアが最終的に制圧する可能性が高いと分析。ウクライナに対しロシア側への砲撃を続けて消耗戦になるのを避けるよう助言しているという。
英国防省は21日、ロシア側が制圧したとするドネツク州ソレダルでロシア軍などが部隊を再編成しているとの分析を示した。〉
▼次に、NHK。
〈ロシア「避けられない傷 残す」 独や米の “戦車供与方針”に〉
2023年1月25日 21時02分
〈ウクライナへの軍事支援をめぐり、複数のメディアは、ドイツやアメリカ政府が、焦点となっていた主力戦車を供与する方針を固めたなどと伝えています。これに対し、ロシア側はこうした欧米側の動きを強くけん制しています。
ドイツの有力誌シュピーゲルなどは24日、ドイツ政府が攻撃能力が高いドイツ製の戦車「レオパルト2」をウクライナに対して供与する方針を固めたと伝えました。
また、アメリカの有力紙ウォール・ストリート・ジャーナルなどは、バイデン政権がアメリカの主力戦車「エイブラムス」をウクライナに供与する方向で検討していると報じています。
ドイツのショルツ政権は、戦車の供与について戦闘が一層激化するという国内の懸念などを背景に、慎重な姿勢を示してきましたが、アメリカなどとの協議も踏まえたうえで、どのような決断をするのかが焦点となっています。
ウクライナ軍は、近く大規模な反転攻勢を目指しているとみられ、ウクライナ軍のザルジニー総司令官は先月、イギリスメディアのインタビューに対し「300両の戦車や600から700の歩兵戦闘車などが必要だ。そうすれば軍事侵攻前までの領土の奪還が現実的になる」と述べています。
これに対し、ロシア大統領府のペスコフ報道官は24日、ドイツ政府が供与を決定した場合「将来の両国関係にとってよいことにはならず、必ず避けられない傷を残すことになる」として、強くけん制しています。〉(後略)
▼これらのニュースから、おそらく小学校の高学年ならわかることは、まず【ウクライナは「西側」の戦力提供がなければロシアと戦い続けることはできない】という単純な現実である。
この単純な現実は、この戦争が始まってからもうすぐ1年が経つが、その間、何度もマスメディアの報道から「見えている」のだが、ほとんどのメディアが「明言」しない。わが国のマスメディアは、つくづく「西側」の甚大な影響を受けているのだと痛感する。
と同時に、国とマスメディアが「西側」寄りだろうと、社会のすべてが「西側」寄りとは限らない。
▼次に、「戦争」と言っても、さまざまな種類があり、世界大戦になるかならないかの境界線がある、ということが、国際政治の素人の目にも明々白々になってきた。
「西側」はウクライナにどんどん武器を提供しているが、自らそれらの武器を使ってロシアを攻撃することはない。
つまり「西側」は、自分たちがロシアを攻撃すると、第3次世界大戦になる、とわかっており、そこまでやるつもりはない、ということだ。
とはいえ、現実は徐々に世界大戦に近づいているのだが。
「西側」に「勝つ」気はない。より正確にいうと、「ウクライナがロシアに勝つ」のが「西側」の目的ではない。
「西側」が目指しているのは、「ウクライナを使って、ロシアを弱くする」ことだ。
逆にいうと、ウクライナは、「西側」に使われて、ロシアと戦っている。彼我で戦争の目的が異なる。もう一度書くが、ウクライナ戦争は「アメリカが管理する戦争」である。
これは、先ほど書いた【ウクライナは「西側」の戦力提供がなければロシアと戦い続けることはできない(しかも西側は自らロシアを攻撃しない)】という単純な現実が見えれば、必然的に辿(たど)り着く定義だが、マスメディアでは明言されない。この輪郭がわかれば、ずいぶんはっきりすることが多いのだが、現状は、そうならない。
▼3つめに、筆者が考えたのは、ドイツの戦車をウクライナに供与することで起こる事態だ。
戦車は重いから地上を運ぶだろう。当たり前だが、ドイツの戦車がーー史上最強の戦車だそうだーーウクライナの国内を移動する。重要な戦力である戦車を運ばせないために、ロシアはウクライナの交通の要衝を爆撃するだろう。ウクライナの国土のうち、軍事拠点でない場所がたくさん破壊されること、民間人の犠牲者がさらに増えることが、目に見えている。
▼筆者はウクライナ戦争が始まった時から即時停戦論者だが、上記のニュースを知り、ますます強く即時停戦を望む。
(2023年2月6日)