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「エボラ出血熱」の再流行は、決して日本の他人事ではない件

▼2019年6月6日付の日本経済新聞を読んでいると、とても小さい見出しだが、気になる共同通信の記事があった。

〈エボラ熱の感染2000人超/コンゴ東部で拡大〉

〈【ナイロビ=共同】世界保健機関(WHO)は4日までに、コンゴ(旧ザイール)東部で流行するエボラ出血熱の感染者が疑い例も含め2千人を超え、1300人以上が死亡したと発表した。

 昨年8月に流行が宣言され、今年3月下旬に感染者が千人を突破。その後約2カ月半でさらに千人が感染しており、被害が急速に広がっている。

 今月2日時点の集計によると、感染者は2008人で死者は1346人。鉱物資源を巡る紛争で武装勢力が乱立し、医療スタッフ襲撃が頻発。WHOのテドロス事務局長は5月20日に「(武装勢力の)攻撃で、われわれの活動が中断され、現場へ向かうのが一層困難になっている」と警鐘を鳴らしている。

 西アフリカのリベリア、シエラレオネ、ギニアで2013年12月から約2年半で1万人以上が死亡した流行に次ぎ、感染者数、死者数とも史上2番目に多い。〉

▼このニュースは5月から英語のメディアでは頻繁に報道されている。

BBCの2019年6月7日配信記事によると、感染者数は224日間で1000人に達し、それからの71日間で2000人に達した。

要するに、猛烈に増えている。

〈Large Ebola outbreaks new normal, says WHO〉

〈It took 224 days for the number of cases to reach 1,000, but just a further 71 days to reach 2,000.〉

▼エボラ出血熱は2014年~2016年に西アフリカで大流行したことが記憶に新しい。今回はそれに次ぐ規模なのだが、感染阻止の環境が大きく異なる。上の記事にあるとおり、武装勢力が医療従事者を攻撃し、殺しているのだ。

かの地の医療従事者の存在には、ほんとうに頭が下がる。

BBCによると、今年1月から5月まで、40回の攻撃を受けたそうだ。英語のメディアを読むと日本よりもはるかに細かくて多様な報道がある。ちょっと比べものにならない。それらを日本語で紹介しているネットメディアもあるので、興味のある人は探せばすぐ見つかると思う。

〈Tackling the disease has been complicated by conflict in the region - between January and May there were more than 40 attacks on health facilities.〉

▼ところで日本は近々、このエボラ出血熱のウィルスを「輸入」する。朝日新聞デジタル2019年5月30日配信。

〈エボラウイルスを輸入へ 東京五輪向け、診断体制を強化〉

厚生労働省は、エボラ出血熱などの危険性が高い感染症の病原体を、今夏にも海外から輸入する方針を決めた。東京五輪・パラリンピックを来年に控え、検査体制を強化するのが狙い。東京都武蔵村山市にある国立感染症研究所の施設で病原体を扱う。30日、地元住民らとの協議会で病原体の受け入れが大筋了承された。

 輸入する病原体は、感染症法で最も危険性が高い1類に指定されたエボラ出血熱、ラッサ熱、クリミア・コンゴ出血熱、マールブルグ病、南米出血熱のウイルス。発熱や出血などを引き起こし、致死率が高い。

 患者が国内で発生したときに備え、感染研は現在、病原体の一部を人工的に合成して検査する体制を整備している。病原体の実物を使えば、より速く正確な診断ができ、患者の回復状況なども調べられるようになるという。〉

▼感染研村山庁舎のご近所の人は、気になるところだろう。

▼二つのニュースをよみくらべると、エボラ出血熱の流行はまったく他人事ではない、とくにオリンピックを控える日本にとっては、ということがわかる。

と書いたが、オリンピックよりも、コンゴ産の「コルタン」というレアメタル(希少金属)を使ったスマホを使いまくっていることによって、日本社会がコンゴと密接にリンクしている現実を、知る人は少ない。

▼コンゴとレアメタルと内戦、500万人を超える犠牲者と頻発する強姦(レイプ)の事実については、3年前に書いた下記のメモが一つの参考になると思う。

(2019年6月7日)

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