もう既に市販されている医療AI製品を5つ紹介_私たちはこれからどうなるの_

もう既に市販されている医療AI製品を5つ紹介。私たちはこれからどうなるの?

ハイライト
・AIが1番最初に変革するのは、医療現場かもしれない。
・多くのAIは専門医顔負けの性能を持つ。
・人間の得意分野とAIの得意分野は、今は完全に別物。

画像1

■AIが1番最初に変革するのは、医療現場かも。

画像2

「AIがヒトの仕事を奪う。」

そんな議論が始まって、結構な時間が経ちました。テクノロジーの進歩はそんな議論を待たず、医療現場には高性能AIを搭載したプログラムがいくつも投入され、輝かしい成績を残しています。

今回紹介する製品は、全てアメリカFDAによって認可され、公式に販売が許可されている製品です。

医療業界では、テクノロジーが素早く実装されるのには意味があります。

それは、医療には死や病気といった誰にとってもネガティブな影響を与える”悪”が存在するからです。そんな”悪”を叩きのめすためのテクノロジーは、みんなのメリット足り得る存在です。早く、広く、普及します。

そのテクノロジーの恩恵を受けるのは私たち日本やアメリカに住む先進国のヒトだけではありません。医師のいない貧しい地域でも、パソコンやスマートフォン1台あれば、今の専門医と同レベルの診断を受けることができる未来がやってくるのです。

これは、全人類にとってメリットとなります。

今後は医療現場にかかわらずAIは次々と投入され、世界を変えていくと思います。しかし、今回はいったいどんなAIが活躍していくのかを確認しながら、AIと人間が共生する未来を考えてみたいと思います。

さっそく見ていきましょう!


■心電図測定システム:AliveCor Kardia

AliveCor社のKardiaは、センサーに30秒ほど触れるだけで心拍数を測定し、心電図をアプリ上に記録できるシステムです。

心拍数だけなら血圧計に備えられているものも多いですが、心電図を記録してデータを残しておけるのは心強いですね。

高性能AIによって、心電図をチェックすることで”心房細動”が出ていないかをチェックすることができます。今後は心房細動以外の不整脈についても判定してくれるように進化するでしょう。

家に一台置いておくだけで、心臓の疾患が判別できるような時代が来るかもしれませんね!


■マンモグラフィ画像解析AI:PowerLook Density Assessment

画像3

乳がん検診で頻繁に行われるマンモグラフィ。乳房の画像診断には経験と熟達が必要です。

PowerLookは、マンモグラフィ画像を読み込み、組織の密度、乳房の構造、テクスチャー、繊維の散らばりなど、いくつもの情報を統合して乳がんのリスクを点数化し、医師に提供します。

自分が医師になった気分で考えたら、PowerLookのようなサポートがあれば安心して診断を行えると思いませんか?これを使えば治療法や治療スケジュールにより多くのリソースを割くことができます。

リスクの低い患者のスコアが低かったら、診断への自信にもつながります。大量のマンモグラフィ画像で頭が混乱したり、見逃しを起こす可能性も低くなります。医師、患者どちらにも有用なシステムです。


■手首骨折発見AI:OsteoDetect

画像4

OsteoDetectは、手首のレントゲン画像から骨折を検出するAIプログラム。骨折が無い時は左側のようにNot Detected。骨折があるときはDetectedの文字と、■で骨折部位にラベルが付けられます。

この画像、確かに右側の画像では手首の骨がズレているのが素人でもわかります。逆に、ラベルなしでどこが骨折しているか全くわからない状況では、すべての関節や骨に目を凝らしてみなければなりません。

道しるべがあると、医師の判断もかなり楽になるのではないでしょうか?そうすれば、より良い薬の処方や、治療の決定に時間を割くことができます。


■糖尿病性網膜症判定AI:IDx-DR

糖尿病にかかっているヒトは2000万人以上。さらに増えると言われています。そんな糖尿病の合併症の1つが糖尿病性網膜症です。

糖尿病性網膜症は、日本で3番目の失明原因です。死には至らないものの、患者さんの人生に大きな損失を与えてしまいますから、早期診断治療は重要です。

IDx-DRは、眼底画像を撮るのが初めての初心者でも、87%以上の感度で軽度以上の糖尿病性網膜症を検出することができます。これは、専門医にもひけをとらない性能です。

私たちは誰でも糖尿病性網膜症に詳しい専門の眼科にかかることができるワケではありませんから、こういった医師のアシストAIが広く普及することで、糖尿病性網膜症の見逃しはかなり減らすことができるのではないでしょうか?


■脳画像解析AI:icobain

脳のMRI画像は、人間が認識しやすいように作られていません。医師や技師にとっても、決してわかりやすい画像ではないのです。熟練するためにはかなりの訓練が必要になります。

icobainは、脳のMRI画像にAIを使った色付けなどのラベリングを行い、視覚的な見やすさを改善します。さらに、脳容積などの大事な情報をわかりやすく提供します。医師は病変をいち早く感知し、脳神経病変をいち早く診断することができます。


■出血量測定AI:Triton

Tritonシリーズは、iPhoneやiPadを使ってスポンジやタオルを読み込むことで、手術中の失血量を推定します。

Tritonは今まで使用されていた、人間の視覚に頼った評価や体重計による評価よりも正確です。失血に対する治療の遅れや認識不足を防ぎ、早期対応に役立ちます。


■まとめ

画像5

AIが登場するのは、遥か未来の話ではありません。今回紹介した商品は全て、2017年、2018年に承認されたモノ。つまり、もう既に過去の商品です。

これからは、もっと性能が良く、気軽に利用できるAIが確実に普及します。しかしそれは、医師にとって脅威に直結する。ワケではありません。

医師は、画像診断以外にもやることがあります。治療方針の決定や、患者への説明、他の病気を持っていないかなど、画像以外の診断など時間はいくらあっても足りません。自分がやりたい治療を100%行えている医師は一体何%でしょうか??

AIはそんな医師に、やりたいこと、すべきことをする時間と判断力を与えてくれる可能性があります。


さらに、AIには医師の意思決定をアシストするような機能はあっても、その仕事全てを担ってくれるような力はありません。

特に、AIにはその判断を説明してくれるような機能が圧倒的に欠けています。「AIが判断したから、心臓の手術をします。理由は分かりません。」では、誰も手術をしたい気持ちにはならないでしょう?


今後のブレイクスルーによって解決する可能性は大いにありますが、AIが得意な事と、人間にできる事は今は明確に別です。

人間は、人間のメリットを仕事に活かして働くことが重要です。

みなさんの働き方は、どうなると思いますか?




引用

Hwang, Thomas J., Aaron S. Kesselheim, and Kerstin N. Vokinger. "Lifecycle Regulation of Artificial Intelligence–and Machine Learning–Based Software Devices in Medicine." Jama 322.23 (2019): 2285-2286.


私の記事は、ほとんどが無料です。 それは、情報を皆さんに正しく、広く知っていただくため。 質の高い情報発信を続けていけるよう、 サポートで応援をお願いします。