セクハラで始まり、#Metooで終わる時代を繰り返したくない。令和時代のセクハラ対策法。傍観者介入トレーニングとは。
ハイライト
・平成はセクハラではじまり、#Metooで終わった
・過去20年の研究成果によって、セクハラの腹立たしい悪影響が明らかに
・セクハラ対策のジレンマを乗り越える「傍観者介入トレーニング」
🧭セクハラで始まり、#Metooで終わる時代
「セクシャルハラスメント」は1989年、平成最初の流行語大賞に選ばれた言葉です。そして、ハリウッド大物プロヂューサーを震源地とした巨大なセクハラ抗議運動。それが #Metoo 運動。#Metooは、平成最後の流行語大賞となりました。
平成はセクハラに始まり、セクハラに終わる、大セクハラ時代だったのです。そしてセクハラは、今でも私たちの身の回りに存在する身近な問題です。
最近では、幻冬舎の箕輪厚介氏の問題が大きな話題を呼んでいました。
なんだ、セクハラって全然変わってないな・・・と思っちゃいそうになります。でも実は、平成の時代から、セクハラの形は大きく変わってきています。
🐒過去20年で、セクハラはおおきく変化🏃♀️
平成の時代、セクハラが世界的な問題として大きく取り上げられるようになりました。その結果、世界中の社会心理学者たちがセクハラの問題点を明らかにしました。
・セクハラは怒りや自己否定を引き起こし、メンタルを悪化させる
・セクハラは仕事の満足度を低下させる
・セクハラは欠勤や転職を大きく増やす
などなど、今では当たり前の感覚が養われていきます。
(1980年以前にはこんな考え方はメジャーではありませんでした)
2000年台にはさらにもっと重要なことが判明していきます。
・セクハラは男性が多い職場で特に起こりやすい
・セクハラは生産業で起こりやすい
・独身、高学歴、地位の高い女性はセクハラされやすい
・軽い冗談、おさわりで我慢するとエスカレートする
そして、2010年台には、具体的な損失が明らかになります。
・セクハラを受けた女性は、1.5倍も転職しやすい
・ハラスメントを受けると、アルコール依存症になりやすい
このように、過去の研究によって深刻な影響を与えることがデータで示されていますが、実はセクハラの件数自体は減っています。
2017年にJournal of Occupational Health Psycholoogy誌に掲載された論文によると、過去20年のなかでセクハラは28%減少しています。
1/3も減っているのに、セクハラが消えないのはなぜか。
それは、男性の被害が増えていること、LGBTQなど性の多様性が複雑化していることなどが原因です。
さらに、テキストハラスメントやオンラインハラスメントと言われる、ネットを介したハラスメントも増加しています。
これが意味するのは、
「私たちだれしもがハラスメントをしてしまう可能性がある」
そして、
「ハラスメントの現場を目撃する可能性が増える」
ということ。加害者になるのも被害者になるのもイヤです。
他の人の嫌がる気持ちを、放っておくのはもっとイヤです。
私たちはセクハラに立ち向かわないと、悲しい未来を作ってしまうかもしれません。
🥶🥵セクハラ対策のジレンマ🥵🥶
今や、世界中の企業がセクハラ対策として、さまざまな研修やトレーニングを受けさせます。しかしそのほとんどは効果がありません。無意味どころか、かえって有害です。
2001年に行われた研究では、セクハラ対策プログラムに参加した197人と、していない319人を比較しました。
その結果は悲惨です。なんと最悪なことに対策プログラムに参加したヒトは、被害者を非難しやすくなってしまったのです。
(なんのためにやったの...)
一見、なんで??って思える内容ですが、理由は簡単です。
セクハラ対策プログラムでは、男性が悪者になる場合がほとんどです。
「よく見ろ、お前のやっていることは悪だ!」といわれて、あ、確かに...自分、凄い悪者だった...と納得できるヒトなどほぼいません。男性は、自分ではない誰かがやったことだと見て見ぬ振りを決めるしかなくなるのです。
今増えている男性が被害者のハラスメントでも同じことが起こることは容易に想像できます。セクハラ対策は、正攻法では意味がないのです。
とはいえ、有効な対策も見つかっています。
しっかりチェックしておきましょう!
⛹️傍観者介入トレーニング
ハーバードビジネススクールによって推奨された方法で、今のところ数少ない有効なセクハラ対策トレーニングの一つです。
まず「飲み会でお尻を触っている」「酔った女性にキスしている」などのセクハラが起こっている状況をデモンストレーションします。
参加者は、第三者としてその状況を目撃し、安全に2人を引き離すためにどのような介入をすればいいのか考えます。そして、実際に役者と会話しながら、2人を引き離せるようにトレーニングするのです。
傍観者介入トレーニングは、「今、セクハラが起きている」という問題認識と、「どのように介入すればいいか?」を同時に考えさせるトレーニングです。さらに、第三者として参加するため、実際のセクハラの現場で、他の人を助ける方法を学ぶためにとても効率的です。
しかも、加害者でも被害者でもなく第三者として参加できるので、セクハラ対策のジレンマに陥ることを防ぐことができるのです。
トレーニングでは、参加者は
・ハラスメントする人の注意をそらす
・ハラスメントする人に立ち向かう
などの方法を学ぶ事ができます。
トレーニングを受けたグループは、数か月たってもハラスメントに介入する確率がグンと高くなることが報告されています。
*勘のいい方は気付いたかもしれません。この方法は、傍観者効果を利用した方法です。傍観者効果とは、自分以外に傍観者がいる時に率先して行動を起こさない心理のこと。セクハラの被害者は傍観者効果により第三者の助けが得られないことがほとんどです。ふつうのセクハラ対策は、被害者や加害者の立場で考える対策のため、この重要な心理学的効果を無視しています。しかし、このトレーニングでは傍観者に問題行動を止める方法を身をもって体験させるため、セクハラを目撃したときに効果的に声をかけることができるようになるのです。
傍観者介入トレーニングは日本ではまだメジャーな方法ではありません。
しかし、ニューヨークで2018年に決定された法律では、15人以上の従業員を抱えている雇用主は毎年、セクハラ対策トレーニングを行うことが義務付けられました。その中で推奨されているのが、「傍観者介入トレーニング」です。
日本でもクラウドファンディングで170万円を調達した例があります。
傍観者介入トレーニングは職場、学校、あらゆるコミュニティでハラスメントを防止したいと思っているヒトは必見のトレーニングです。人材育成、コンプライアンス、リスクマネジメントなどを任されている人は、できるだけ早くフレーム化して導入すると、高い効果を挙げられるかもしれません。
いまどき、「○○はセクハラですよ!」なんてヌルい対策や研修を行っているチームは時代遅れです。
📯すべてのジェンダーがセクハラを受ける時代。アップデートが必要
女性はもちろん、男性やLGBTQ、すべてのジェンダーがセクハラを受ける時代です。そしてセクハラは会社やチーム全体の損失です。メンタルを悪化させ、気分を損ねるだけではありません。離職や損害賠償など、明確な金銭的リスクを引き起こす原因です。
そもそも、こんな問題に巻き込まれるの、不幸すぎません?
今までのセクハラ対策をそのまま行って「わが社は対策をしています。」な~んて、無責任です。だって効果ないんだもん。
今回は、少なくとも他のセクハラ対策よりも効果のある「傍観者介入トレーニング」をご紹介しました。セクハラ対策のベストプラクティスはまだ見つかっていません。これが最高の方法とも言えません。それでも、過去のセクハラ対策からアップデートは必要です。
少しずつ、歩みを進めていきましょう。
今回のギモンの提供者
今回は、アラートさんからギモンを提供して頂きました。
「セクハラをそもそも回避する方法について考えたい」
完璧な答えの存在しない、難しい問題でした。今のところの分かりやすい結論はこんなところかなぁと言った感じをリサーチしてみましたが、いかがでしたでしょうか...!
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引用
Quick, James Campbell, and M. McFadyen. "Sexual harassment: Have we made any progress?." Journal of occupational health psychology 22.3 (2017): 286.
McLaughlin, Heather, Christopher Uggen, and Amy Blackstone. "The economic and career effects of sexual harassment on working women." Gender & Society 31.3 (2017): 333-358.
Quick, James Campbell, and M. McFadyen. "Sexual harassment: Have we made any progress?." Journal of occupational health psychology 22.3 (2017): 286.
Potter, Sharyn J., and Mary M. Moynihan. "Bringing in the bystander in-person prevention program to a US military installation: Results from a pilot study." Military medicine 176.8 (2011): 870-875.