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一つの工夫で何度も美味しいバスケット
こんにちは。
oun Lab. シミズタカユキです。
今回は八幡化成株式会社の「CESTINO BASKET」をご紹介します。
八幡化成株式会社と言えばスツールとしても使えるバスケット「オムニウッティ」で有名です。
GOOD DESIGN ロングライフデザイン賞を受賞している製品ですので、皆さんも一度は目にした事があるのではないでしょうか?
そんなメーカーが作っているバスケット(洗濯カゴ)の魅力をお伝えしたいと思います。
1. 意匠
一見すると何の変哲もないプラスチック製のバスケットですが、ハンドルの部分に注目してみてください。ハンドルを挟み込むような形で二枚の壁が迫り出ています。
この迫り出た壁のボリューム感がアクセントとなり、無骨なようでどこか愛らしい絶妙なバランスを保っています。
また、下の壁がある事によって一般的なプラスチック製のバスケットのようにハンドルがだらしなく垂れ下がる事が無く、使っていない時の美しい佇まいをもたらしています。
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更にハンドルにもひと工夫が施されています。
ハンドルの握る部分が半月状になっており、二本のハンドルを握り込むとピタッと円筒状になるというユーザーファースト仕様!
握り心地も良く、使っている様にも抜かりのない意匠に感服です。
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2. 機能
前述した二枚の壁には実は他にも特徴的な機能があります。
①ネスト(入れ子)機能
このバスケットは現在3サイズ展開となっているのですが、複数のバスケットを入れ子式に収納しておく事ができます。
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②スタッキング(積み重ね)機能
別売りのフタ(トレイ)をセットする事で複数のバスケットをスタッキングしたり、簡易的なテーブルとしても使う事ができます。
ハンドル周り一箇所だけの工夫で様々な機能を持つバスケットへと昇華されており、もはやバスケットとしてだけ使うには勿体無い程の充実っぷりです。
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3. 使い勝手
まず、意匠編で前述した通りハンドル形状が秀逸です。
一度「CESTINO BASKET」のハンドルを握ってしまえば他のバスケットには戻れません!
ポリプロピレン製なので直射日光下での放置はお勧めできません(紫外線による経年劣化の恐れ)が、樹脂の厚みが3mmあり、見た目よりもタフな作りになっています。
更にネスト機能やスタッキング機能など、単なるバスケット以外の使い方もできるので、洗濯カゴだけではなく収納ボックスとしてリビングやキッチン、アウトドアなどでも活躍してくれるでしょう。
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4. コスパ
これだけの機能性と意匠性を持っているのにも関わらず、
Sサイズ - ¥880 / Mサイズ - ¥1,980 / Lサイズ - ¥2,420と良心的なお値段。
※各種フタは別売
しっかりとした作りなので簡単に割れたり壊れたりする事もないでしょう。
コストパフォーマンスの観点から見るとこの値付けは企業努力の賜物と言わざるを得ません。
5. oun view
ネスト機能やスタッキング機能、3サイズ展開、更には9色のカラー展開(本記事投稿現在)は収納用品好きには刺さりまくる戦略です。
用途やサイズによって色を変えたり、本体とフタをあえて色違いにしたりなど、使い手にある程度の「自由度」や「発想力」といった「デザインの余白」が残されている点がこの製品の最大の魅力だと思います。
■デザインの余白について
作り手からすると製品企画の段階からしっかりとした意図を持ってデザインするのですが、得てして使い手は必ずしも作り手の想定には無かった使い方をするものです。
つまり、作り手の想定外の価値や魅力を使い手側が引き出す。または使い手が作り手から提案された体験以上の価値を見出せるようにある程度の「自由度」を残すことで、使われて初めて「完成」するような「不完全さ」を意図的に残す行為を私たちは「デザインの余白」と呼んでいます。
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6. まとめ
アメリカの建築家であるルイス・サリヴァン(1856-1924)が遺した言葉に「形態は機能に従う」という教えがあります。所謂「機能主義」と言われ、20世紀初頭~現代まで続くモダンデザインを構成する要素の一つとも言えます。
「CESTINO BASKET」も充実した機能を備えながら、既存のプラスチック製バスケットから大きく逸脱しない絶妙なバランスの意匠に仕上がっています。
時に人はどんなに便利なモノでも見たこともないカタチに対して嫌悪感を抱く事があります。
(2007年に登場したiPhoneも当時の日本では批判的な見方が多数でした)
そうした意味でも「CESTINO BASKET」はプラスチック製バスケットに新しい価値(機能)と誰もが安心できる意匠を高い次元で両立させ、使い手の好奇心を刺激する現代におけるモダンデザインの良作と言えるのではないでしょうか。