いつかきみにいうただいまの
ふるさとはもう寒いですか、いい感じに涼しくなりました、目を瞑る、聞こえてくる動物の鳴き声が徐々にやんで、人の声に変わる、過去から未来に飛んでいく、もしもし、現在のわたし、身動きの取れぬあなたがいる場所を、ふるさとだと思えるようになりますか。
…………
遅れたようにひっそり形を変えてやってくるかなしみを、食べて生きるようになって、大抵の大人たちがずっとこうしていたんなら、大人になってみたいかもしれないと思う。
だって、このままずっとさみしくないと、わたし、君を探すのをやめてしまう。
(散文『涙はどこかできみになっているらしい』より)
家に帰る途中でも家で寝転がる瞬間でも、あぁ、帰りたいなぁって、思ってしまうこと、あったりしませんか、わたし、もう長くこのまちに住んでいるのに、ぜんぜん、ここが“ふるさと”だなんて思えなくて。
こんなに澄んだ空気なのに、どこよりも淀んでいて息がしにくいような気さえするんです、離れたら、懐かしく思うようになったりするんだろうね、それって、なんてありきたりで勝手なんだろ。
ほんとは自分の心持ち次第でどうにかなるってこととか、どこにいたって埋まんない孤独があるとか、どこにいたって、うつくしいだれかがいればただいまって言いたくなるんだろうとか、分かってて、分かってるから、やっぱりはやくこのまちを出なきゃねぇって、一度も撫でさせてくれない野良猫に求めた共感は、まんまるのおっきな目に逸らされて宙に浮かんだまんまです、
なんの境の見えない彼らにも、ふるさと、あるのかなぁ。
随分涼しくなりましたね、台風、こわいね、大丈夫かなぁ、みなさん、気をつけてくださいね。
生活になるし、だからそのうち詩になります。ありがとうございます。