319羽目の名前もない鳥よ

沈みかけのままずっと漂っている船みたいな家を出てから生活が自分の腕の中にふらっとやってきてくれたような気がして、
どうか離れていかないでねと抱きしめたり世話を焼いたりしてるあいだに時間が流れていってしまうね、
最近はずっと、近頃読んでもいないのによだかの星のことばかり思い出すよ、
よだかにも、鳥たちにも、太陽にも、星にも、誰にもなれないような、誰のことも分からないような物語、
だけどきっと、どこかにわたしがいるんだろうなと思う物語、
童話を書きたかった、わたしはあなたを救えないし、無責任に抱きしめもしないし、もちろん愛したりできないけれど、
明けない夜がないことに絶望したひとが、あなた以外にもいることだけを伝えるために。
 
 
 
さみしくないと詩が書けないなんて、激情だけがたましいを燃やすなんて、そんなくだらないことは言いたくないけど、
なにがあったってどうせずっとさみしいから、さみしいをうんと可愛くしてやるために詩を書くし、どうせわたしが死ぬまでケモノも死なないから、飼いならすために承認や賞賛の形をした餌をやらないといけない。
理由も意味も全部腹の足しにはならなくて、痩せないと傲慢に苛立ってしまうだけなのに空腹ばかりが気になってチョコレートを放り込む。
 
わたしのものにならないなら誰のものにもならないでほしいすべてへ、
あなたたちがわたしの詩のはしっこを見つけてほんの少しだけくいと引っ張ってくれたら、からまった糸はほどけるのでしょうか、
人生のまるごとをかけてそんな大掛かりでコストがかかるばかりの実験をするために、わたしはこうしているんでしょうか。
 
 
 
きょうは大好きな友達がプロポーズを受けたことを報告してくれたいい夜なのに、文章を書き始めるとすぐにこうなってしまうからわたしという女はつまらない、
彼女には形はどうでもいいからただ幸せでいてほしいだけだから、リアクションが薄かったかもしれないのはゆるしてほしい、
わたしはどうせどうやっても幸福になるのだから、気にしなくていい。









生活になるし、だからそのうち詩になります。ありがとうございます。