0220、きょうも最果タヒから逃れられない
つまんなくて尊くて仕方ない臓器に身体を乗っ取られて今日もすぐに眠れなくなる、夜だの朝だのもう終わりにしたかった、いつだってわたしはわたしのもので、もしくはあなたのもので、太陽のものじゃない、月のものなんかでもない。
下手くそなコミュニケーションの代わりに文学のたまごを拾う、どれだけあたためてみても孵らないから、きみは無精卵なのですかと思う、勝手に盗んで勝手に期待して勝手に失望してみる、恋愛と似てる、人生全部、愛憎でつくられる。
雌雄が見分けられない限り最果タヒから逃れられない、無精卵と有精卵を選り分けるひかり、のない夜の中で、わたしは割ったたまごをかきまぜる、祈りながら、卵焼きを丸める、泣きながら、卵焼きを切る。料理がじょうずならそばにおいてくれますか、1を100にするより0を1にするほうが難しいって知ってしまっているから天才と呼ばれたかった、っていう、底なしの平凡。
誰のものでもない塀の上、雨水の溜まったワンカップ、雲ひとつない空、くまの住むトレーナー、うまく行かないシャッフル再生、信号のない交差点、失くしたイヤリング、まだ見てないアニメの最新話、まだ読んでない小説のタイトル、
触れた瞬間にゆびさきから解けるように崩れていって、詩を書くために(君を愛するために)心臓から順番に作り直される。
輪廻より感傷的で機械的な破壊と再生、一日に何度も繰り返される、破壊、されるのが誰かの手によってなのが酷く腹立たしいので、そのかわり、わたしも誰かを破壊してやろうと思う、再生の、源になってやろうと思う、
拾ったたまごの数を競う、割ったたまごの数を競う、焼いたたまごの数を競う、いつか孵したたったいちわを、しぬまで愛してかくまってやる。
生活になるし、だからそのうち詩になります。ありがとうございます。