Hey Siri, あんたが主人公の恋愛小説を書くから

 
シャッフル再生をタップしたのは自分のくせに、いま聴きたいのはきみじゃないって何度も何度も曲を先送りにする、はじめから聴きたい曲、選べばいいじゃんっていつかもっとポップで気安くなったSiriに言われたりするんだろうか、
うるさいなぁ、わかってるって、知ってるよ、でもさぁ、そういう、そういう奇跡みたいな小さな偶然を繰り返してないと、自分が特別じゃないってこと思い知らされちゃいそうで、それがとても耐えられないのよって、あなたにわかったりする?
 
 
黒いブルートゥースイヤホンで耳を塞ぐ、ほとんど誰ともすれちがわないまんまのなんにもない帰り道、口ずさみたい歌ばかりが流れるプレイリスト、どうでもいいくたくたのTシャツに度の強い眼鏡でももっとビジンだったら様になったりするのかしらって思いながら、まぁいいやってミュージックビデオの主人公みたいな顔で歩いてみたりする毎日、わたし、わたしの世界にとって主人公だってこと、一度だって疑ったことなんてないのに、どうしてこんなに不安になって、ほしがってみたりするんだろう。
 
待ち合わせ場所、あと十数えたらあの人がやってくるって心の中で何度もカウントダウンしてみたり、共通の好きなものや嫌いなものの数を数えてみたり、わかったような顔をしたりなんとかわかってもらったりして、きみのことも運命のひとなのって言いたい、のは、誰にだったんだろうねぇ、別にわたしにとって最高に愛しいだけでよかったのに、あとはきみにとって最高に愛しくあれるかだけで、運命なんて名前は勝手につくのに、つかなくたってよかったのに。
 
 
欲張りでごめんなさいとカミサマに謝るそぶりをするけれど、本当はそんなことかけらも思ってない、いつだってずっとずっと特別な何かでいたいし今あるしあわせだってちゃんと大事にしながらもっと最高に、きみにも、あなたにも、しあわせになりたいと嘆くひとたちみんなまとめてしあわせになっちゃいたいよ、
ねぇSiri、そんなの無理って言ったりする?
それともさぁ、しあわせってなによって、ヒトみたいなこと言ったりするのかしら、そしたらいっしょにファミレスで、一晩中はなし合ったりしようね。

生活になるし、だからそのうち詩になります。ありがとうございます。