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6月の火曜日「不味いスープ」

 最近、食卓に不味いスープが出てくる。見た目はミネストローネのようなトマトベースのスープなのだが、野菜やきのこが盛りだくさんで、なにより味が不味い。妻によると、生姜がたっぷりと入っているらしい。正直に言って、生姜の味が強すぎて、すべてを台無しにしてしまっている。過ぎたるは及ばざるが如しとは、まさにこのことで、生姜を入れるにしても、もうちょっと全体のバランスを考えたほうが美味しいのではないだろうか。生姜が悪いわけではない。だけれど、美味しい味噌汁にカレー粉を入れてもさらに美味しくはならないだろう。そういう不味さなのだ。
 緊急なんとか宣言中のこの時期、残業で遅くなっても家に帰れば温かいご飯が食べられるというのは感謝しかない。それにそもそも妻がせっかく作ってくれた料理に、そんな風に文句を言うなんてケシカラン、という意見もあるだろう。それは判る。判るんだけれども。だから僕は、恐る恐るというか、なるべく失礼にならないように、妻に尋ねた。これは一体なんなのだ? と。

 妻曰く、これはダイエットのためのスープらしい。生姜は基礎代謝を上げるとかで、これは食べれば痩せられる健康メニューなのだと。なるほど、僕は腑に落ちた。普通に作った結果の不味いスープなのではなく、ダイエットや健康を目的とした料理なのだ。だから味は二の次なのだろう。アンタもそろそろ中年に差し掛かるのだから、そういうの気をつけたほうが良いよ、とも言われた。他にもビールは糖質オフのグリーンラベル系のものに変わった。ただ、不味いもんは不味い。

 娘を寝かしつけ、珍しく寝落ちしなかったので、自室でこの日記を書き終えたあとリビングに戻ると、妻がチョコを食べていた。ダイエット中じゃなかったの? ときくと、「これはカカオ72%のだから」と言っていた。あんまり太らないチョコらしい。本当か? というかダイエットってなんだっけ? しかし妻曰く、厳しさよりも続けることが大事、らしい。それはそうだろうけれど。

 いったいどこの誰に影響されたのか知らないが、とうとうウチにもこの手のモノが出てくるようになったか、と少し脱力してしまった。スープはあまり美味しくはないけれど、糖質オフのビールは思っていたほど不味くはなかった(美味しくもなかったけれど)。「健康感」を意識した商品は巷にはうるさいほど溢れている。そういったものに興味のない僕でも、コンビニやスーパーで嫌というほど目にする。それらを見るたびに、天邪鬼な僕は無視を決め込んでいたのだけれど、どうやらそれも潮時らしい。

 全然関係ないけれど、数年前に芸能人の川島なお美さんが亡くなったニュースをワイドショーで見たときに、芸能リポーターの誰かが、いろんなコメントの間に「最後の方は、純金の棒で邪気を払うなどしていた」的なことを何気なく言っていて、それに対して誰も何もツッコミを入れていなくて、さも当たり前のように、癌になった人の中には、そういうことをする人もいるんですよ、みたいな雰囲気で流れていって、強烈な違和感を覚えた。「は? インチキだろ、それ」と、怒りのような感情が湧いてきてしまった。純金インチキ棒の存在というか、その他の似非科学的なものが、世の中にあることは以前から知ってはいたけれど、自分とは関係ないし、まぁバカがバカゆえにそういうものを掴まされるのはしょうがないとも思っていた。ただ、純金インチキ棒は、それらとは趣が違うというか、人の弱みに付け込んでというか、とにかく許せなかった。って、本当に関係ないことを書いてしまった。スマソ。またいずれ、電流イライラ棒の話は書こうと思う。

 昨夜の食卓には、雑穀米が出てきた。妻に「コレ味どう?」と聞かれたので、僕は正直に「白米のほうが美味しい」と答えた。いや、大戸屋などに行ったとき、五穀米をチョイスすることはあったし、あれは美味しかったのだけれど、昨夜のは正直イマイチだったのだ。妻は「だよね、コレは失敗した」と笑っていた。よかった、と僕は思った。本当によかった。

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