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マッドマックス:怒りのデスロード/Mad Max:Fury Road
いわゆる大作映画みたいなものが、どうも自分の趣味とは少し合わないな、と思い始めたのはいつぐらいのことだっただろうか。何を気取っているんだ、と言われそうだけれど、何を隠そう僕は気取っていたのだ。なにせ、『映画が好きというより、映画が好きな自分が好き』な若者だったのだから。
この映画もヒット作の続編ということで、大々的なプロモーションがされていたと思う。ド派手なアクションシーンをつなぎ合わせた予告編に、テレビでの連日のコマーシャル。確か、エグザイルの人が宣伝していたはず。シリーズを通してコアなファンを持つ映画らしいけれど、そんな風に宣伝されたら、僕のような映画通を気取っていた人間には響かないというか、「まぁ、観なくても良いか」なんて思ってしまう。
でも、そんな自分の認識は少し間違っていたようだ。そんな風にバカにして避けていた自分の態度を恥ずかしく思う。端的に言えば、良い映画だった。
確かに大味だし、今でも少しは、『無理してまで観なければならない作品』ではないようにも思う。でも、あ、これはネタバレなんだけれど、『まだ見ぬ楽園を目指して旅立ち、紆余曲折を経て、最初の場所に戻ってくる』という一見するとバカバカしい物語を、このスケールでやるというとろこに、僕は妙に感心してしまった。今までの馬鹿騒ぎは一体何だったんだ? と真剣に怒る人もいるだろう。でも、そこが僕にはとても面白く感じられた。いや、はっきり言ってバカバカしい映画だ。奇妙な格好をした男たちが奇妙なことを叫びながら、奇妙な改造が施された車両を駆って砂漠を走り抜ける。ギターからは火が吹き、車は衝突して壊れ、人も死ぬ。次から次へと息つく暇もないアクションシーンの連続で、最終的には、スタート地点に戻るのだから。でも、そこに奇妙な哀愁のようなものを感じてしまったのだ。俳優たちの、演技なのか過酷な撮影環境がそうさせるのか、ギリギリの表情も良い。キャラクターたちが、自分たちの生の輝きをこれでもかと見せつけてくる。生きるってのは、こういうことなんだ! 俺を見ろ! と。物見遊山のような感想になってしまうけれど、サーカスのピエロの、危険と技量の高さと滑稽さが複雑に同居しているような緊張感に似ている。
『こういう映画を楽しめてしまう感性ってちょっと羨ましい』というようなスカした態度を取っていた、かつての『映画が好きというより、映画が好きな自分が好き』な僕を、跡形もなくぶち壊してくれた。ありがとう、マックス。V8!