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3月の月曜日「ウォークディスウェイ」

 子供が薬を嫌いなのは当たり前のことだけれど、もうすぐ四歳になる娘はお姉さんになるためだったり、立派なプリンセスになるためだったりと、自分なりにモチベーションを高めてチャレンジしてきた。ラムネなどのお菓子やジュースを直後に口に含むという工夫をしたりした甲斐もあって、最近は頑張って飲めるようになってきた。しかし先日処方された中耳炎用の抗生物質は苦味が強いようで、口に含んでも吐き出してしまう。薬剤師の方に、アイスクリームに混ぜたりしても良いですよ、というアドバイスをもらっていたので、妻が以前に買っていたパナップと混ぜてみるが、それでもダメだった。娘も娘で、吐き出してしまうのは不本意らしく、悔しくて涙したりもしていた。なので、こちらも叱るというわけにもいかず、解決方法を一緒に考える。

 龍角散の『おくすりのめたね』は、テレビでCMをやっているにも関わらず、近所のドラッグストアではなかなかお目にかかれない。探し方が悪いのだろうか。しかし、製品のサイトを見ていると、有用な情報を得ることができた。この『おくすりのめたね』には種類がいくつかあって、いちご味、ぶどう味、チョコ味と三つあるのだけれど、このチョコ味には『抗生物質用』と書かれている。よく読んでみると、いちご味やぶどう味など酸味があるものは抗生物質と混ざると苦味が強くなってしまうようで、なるほどプレーンのバニラアイスならともかく、パナップとの相性は最悪だったというわけだ。なおさら娘の悔しさが身に沁みる。僕らがいけなかったのだ。

 というわけで、『おくすりのめたね』のチョコ味を探すも見当たらなかったので、今日は普通のチョコアイスを買って、再チャレンジ。トラウマになってしまったのか、初めは少し飲み渋ったけれど、勇気を出して飲んでくれた。そしてご褒美のケーキまで食べた。アイスにケーキにお誕生日みたいだけれど、三月六日はサンリオのシナモロールの誕生日だそうで、コンビニにそのキャラのケーキが売っていたので買ってきてあったのだった。

 僕が「ココちゃん(娘のことです)も、もうすぐお誕生日だけど、プレゼント何が欲しい?」ときくと、「おもちゃ!」との返答。
「おもちゃ? なんのおもちゃ? シルバニア?」
「ううん。おもちゃやさんのおもちゃ、ぜーんぶ!」
 薬が飲めて自信がついたのか、ちょっとドヤった感じで娘が言う。
「え、いや、それはちょっと……」
「じゃあ、じてんしゃ。こぐ、じてんしゃ!」
「漕ぐ自転車……? あぁ、漕ぐ自転車か」
 全然乗ってないけれど、ペダルのない幼児用のキックバイクみたいなのはすでにあるのだけれど、保育園でお友達の親御さんたちが自転車に乗っているのを見て、欲しくなったという。それに加えて、散歩や公園に遊びに行くときなど、近所の子供たちが自転車に乗っているのを密かに羨ましく思っていたらしい。調べてみると、ちょうど四歳くらいに自転車デビューする子が多いという。振り返って僕はというと、小学生になる直前だったような気もする。よく覚えてないけれど、確か周りの子たちと比べても結構遅くて、小一で補助輪をつけていたら、同級生の女の子に揶揄われた記憶がある。その後、父親と猛練習したような。なにはともあれ、そうか自転車か……。

「いいよ。じゃあ、次のお休みの日に、見に行こう」
 と僕が言うと、
「じゃあココちゃんがじてんしゃのるから、パパはすっごくはやくあるいてね!」
 と言われてしまった。

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