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不足 掌 お天気様 お返し ねぇ? ごめんなさい ドライフラワー


🥭不足


貴方にいつも不足しているものがあるの

 睡眠 時間 会話 栄養

 色んなものを気にし出した貴方は可愛いけれど

 1番大事な事

 忘れているんじゃなくて?

 私への愛情

 それは私からの愛情が足りないから?
 愛はギブ&テイクて言うわ
 だから我慢しないで私から上げる
 言ったじゃない
 出逢った頃に
 私、
 しおらしく待っているような
 お淑やかな女にはなれないのよ

 帰ってきたら葡萄を片手に待っていてあげる
 有無を言わさず葡萄を食べさせて
 そして有無を言わさずに口付けて離してあげないわ
 貴方は何時も簡単で良いわね
 ただ私を抱きしめるだけで良いのよ

🍴掌

私達……あれから何年経ったかしら
 そんな味気ない話をして
 貴方はスプーンをころんと落としそうになった
 ふいに落ちない様に私が手を出すと
 貴方の手と二つの掌の中
 少し草臥れた輝きの無いスプーンがあるじゃない

 ねぇ……新しいスプーンを買わない?

 たかがスプーンだけれど買いに行こう

 二人で手を繋いで
 帰りはキラキラのスプーンが間にあるでしょう

 ねぇ……スプーンは買い換えれば良いけれど
 私の換えは売っていないわ
 どうしましょう
 私はそんな冗談を言って笑ったの

 ……大丈夫だよ
 君はスプーンより味が出るタイプだから

 貴方がそう言って
 思わず二人で笑ったわ

 同じ年老いて行く話ならば
 私、
 貴方の冗談の方が好きよ


☀️お天気様

あら、嫌だ
 何でこんなに天気が良いのかしら

 天気が良くて
 何が不満なのかと貴方は聞く

 だって貴方は今ドライブで何処に行こうか考えている
 私は布団を干して置いてけぼりを考えているの
 こんな良い天気なのに置いてけぼりなんて
 不貞腐れたくもなるじゃない

 そう言って私が掛け布団を仕方無く頭にほっかむり
 バルコニーへ運ぶと
 貴方は笑って布団をひょいと持ち上げる

 ねーえ、そもそもお布団干しは貴方がやった方が早いわよ
 だって
 私は背も低いし
 貴方程力持ちじゃないわ
 私はそんな我儘を言いたくなる

 貴方は少し考えて
 それもそうだねぇとお布団を干し始める

 何で何年も慣れない事をやっていたのかしらん
 私、自分が馬鹿らしくなってきたわ

 そう言って私はソファに座って珈琲を飲む
 案外似合うのね……
 そう貴方の姿を見て言った

 慣れない事は初めから慣れないと言えば良いのに
 ほら……もう終わった
 後はキラキラのお天気様が続くように願って
 近場のドライブでも行きますか

 何時もと変わらない景色
 何時もの道……
 何もかも何時もと変わらないのに
 ほんの少しだけ
 貴方が優しい人で良かったと思う

 そう……お天気様のように……
 ぽかぽか温かい陽気なの


🍛お返し

バレンタインのお返しは
 何時も夜に軽い外食

 だけどお昼に私はこっそり自分にご褒美を上げる事にしたの
 貴方は知らない
 私の母の好きだった花も皆んなが好きだった花も
 律儀に覚えているでしょうけれど
 私、貴方に一度も言った事ないもの
 赤いアンティークローズのミニバラが好きだなんて
 何時も考えて考えて……
 全然欲しくもない物を買ってきてしまう貴方
 それでも考えてくれたのだからと
 私は大袈裟に有難うと喜ぶの
 きっとバルコニーに一つ鉢植えが増えたぐらいで
 貴方は気付かないでしょうね

 そう思っていたのに
 一週間ぐらい経って……ある日急いで帰ってきたの
 何を慌てる事があるだろうと
 私はカレーのルーを掻き混ぜながらお帰りと言う

「言ってくれれば良かったのに……。」
 そう言うから私は振り向いて貴方をみると
 手の中にアンティークローズの赤の
 ミニバラの可愛らしいブーケを持って立っているじゃない
「嫌だ。貴方が持つと似合わないわ。」
 そう言って笑ったけれど、棘のない薔薇に気付いて私はやっぱり大袈裟程度に言った

 有難う。……とっても……とっても嬉しいわ。

 初めて私の好きな物
 ちゃんと買い出しに行ってくれた。
 ただ、それだけに何年掛かったと思う?
 待つのが嫌いな私にこんなに待たせるなんて
 酷い人……私からは棘しか上げないわ

 お礼は貴方の大好きなカレーで十分よね?
 偶然なのよ……今日は玉ねぎを何時もより丁寧に飴色に仕上げたから
 少し甘くなっただけ


👗ねぇ?

 ねぇ?貴方……。
 久しぶりにスカートを履きたくなったの
 ねぇ?貴方……。
 やっぱりもう……年甲斐もないデザインかしらん?
 ねぇ?貴方……。
 聞いていらっしゃるの?私、怒りますわよ。
 ねぇ?貴方……。
 きっともう……似合わないわよね。

 自分からスカートを履きたいだなんて言って
 自分で広げて泣きたくなるの

「早く、行こう……。」
 何の慰めの言葉一つ言わずに
 似合う似合わないの、安心も一つもくれずに
 泣き出しそうな私を連れてそそくさと貴方は歩き出す
 狡いわよ
 外で泣くなんて……出来ないじゃない
 そう思って
 思いっきり手を引いて止まってやったのに
 貴方は不思議そうに振り向いて待っている
「ねぇ、君。僕は一度だって君を可愛く無いと言った事はありません。」
 と、少し心外だというような顔で言った
 ずーっとずーっと出会いまで遡って思い出しても
 確かに一度たりとも無かった
「それしか褒め言葉を知らないんだわ」
 私は意地悪だからそう言って歩き出す
 ツカツカ歩いても余裕で追いつき歩く貴方が嫌い
 少しも焦らないし
 年下の癖に……理想的な人
 私が早歩きで息も切れた頃
「……疲れたでしょう?お茶でも飲もうか……。」
 そう言うから
 貴方に着いていく気持ちもないのに
 気付いたら連れられているの

「ねぇ?貴方……。貴方って意外と策士よね?」
 私はフルーツフレイバーのアイスティーを飲みながら言った
「そう?ねぇ……君は此処のアイスティーが飲みたかったって事を、僕は知っていたんだよ」
 貴方がそう言うから思わず二人で笑ってしまう

 手を繋いで……
 平静を装う策士が1人心、焦らせ
 不機嫌を装う策士が1人スカートをひらつかせる
 そんな午後の喫茶店のテラス
「ねぇ?……次は何処に行きたいの?」
「ねぇ?……私が夜空が見たいって答えたらどうするの?」

「ねぇ」から始まる議題の答えはいつも簡単
 だってもう貴方の考えも
 私の考えも分かってしまう程
 傍にいたかったのだから

 ねぇ、君……。プラネタリウムにでも行きますか……。
 後は私が鞄に密めた
 新しいプログラムのパンフレットを
 貴方に見せるだけで良い

 スマートフォンの
 星空模様が綺麗な天井の
 ショットバーの写真は貴方好みだから
 我儘を聞いてもらう為の
 鞄の中の最終手段

 出番はあるかしらん?
……似合っているって笑ってくれる迄
 ねぇ、貴方。後、どのくらい?




✒️🗒️ごめんなさい

 一言も言わないけれど
 ずっと思っているの
 私がかっこいいお話を書いていると
 全然甘えないし可愛くないわ

 時々男の主人公のような目で貴方の寝顔を見るけれど
 それでも貴方は良い人で優しくて素直で
 友達にしたいと思うような人

 時々……そう、時々ね
 書き物に取り憑かれた私は
 自分が誰で
 一体誰に抱かれているのかすら
 分からなくなるの
 きっとその理由も
 その時私が何者かも貴方は知っていて
 どんな私でも愛してくれるし
 突然流す涙すら
 受け入れてくれる

 何者でもない不安も
 何者でもある悲しみも

 長い書き物の後に貴方が言う
「お帰り」
 に私は何時も泣いてしまう
 こんなにも大きな安心感の中
 私は書き物をする事が出来て
「ただいま。」
 と言える場所がある

 何時もそう……
 何者でもない私を愛してくれる貴方に

 心から有難う
 私の総てから……ごめんなさい

 何度だって言えるわ。
 貴方に逢えて……嬉しい。

 虚しさなどは無いの?
 戸惑いなどはないの?
 何故何時も本気で付き合ってくれるの?
 何故……?

 どんなに強い登場人物を書こうにも
 皆んな貴方には敵いそうにないわ

 私……いつか……
 そんな貴方が書きたいの
 揺るがない貴方の優しさも強さも愛も……
 総て書くには今世では足りそうもないわ
 だからまた来世でも付き合わせてしまうわね

 今のうちにに伝えておくわ
 ごめんなさい

ドライフラワー

貴方が下さった大事な薔薇が
 とうとう顔を項垂れてしまったの

 このままドライフラワーにしょうかと少し考えたけれど
 気が変わったわ

 私ね
 今……ほんの少し悩み事があって
 諦めるか……諦めないか
 気に掛けていたの

 きっと貴方は優しいから
 続けてご覧 協力するから
 と微笑むって分かっているの

 だから……苦しくなるのよ
 時々……ね

 その優しさに甘えている自分を
 許せなくなる時もあるのよ

 だから大切な貴方が下さった薔薇に
 お伺いを立てる事にしたのです

 諦める?……それとも諦めない?
 ……そう、花びらを大切に……大切に……
 一枚ずつに聞くわ

 貴方の寝息が聞こえるから
 本当は私も貴方の横で丸まっていたいのよ

 だから答えを聞いたら……
 結局どうするかなんて
 明日の私に任せて

 綺麗な袋に花びらを入れたサシェを枕の下に潜め
 貴方と同じ香りに包まれ眠るの
 ねえ、貴方……
 ……それが私の……夢なのよ

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泪澄  黒烏
お賽銭箱と言う名の実は骸骨の手が出てくるびっくり箱。 著者の執筆の酒代か当てになる。若しくは珈琲代。 なんてなぁ〜要らないよ。大事なお金なんだ。自分の為に投資しなね。 今を良くする為、未来を良くする為に…てな。 如何してもなら、薔薇買って写メって皆で癒されるかな。