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"泥中の蓮"になる

私は安田信託銀行人事部の採用担当時代に、「濁世(じょくせ)に染まることのない"絹のハンカチ"になれ」とよく語っていた。
学生と私は対等であり、会社が学生を選ぶように、学生が会社(会社に働く社員)を選ぶのが採用活動だと思っていた。

未来を担う学生に安田信託銀行に入社してほしい。たとえ、安田に入社しなくても、さまざまな会社で真っ直ぐな人生を生きていってほしいと思って、彼らと人生談義をしたものだ。

学生たちは、安田に変わった人事担当者がいると思ったらしい。
特に一橋大学の学生たちに私のことが噂になり、安田信託銀行を志望していない学生でも、就職相談に来た学生は一人ならずいた。

「小林さん、私はメーカー志望です」と言ってくる学生たちには私の人脈で他企業を紹介した。

私の一番の思い出は、「私は、金融志望です。都銀と長信銀と信託を考えているのですが、どちらかと言えば長信銀が第一志望です。その中でも興銀が第一志望、その次が長銀です」と言って、私の意見を聞きに来る学生だ。
その学生は、日債銀の内々定を蹴り、長銀の内々定を蹴り、その度ごとに私のところに来て報告していた。
私は、「第一志望が興銀なんだから、日債銀や長銀を蹴るのは潔いじゃないか。思ってもいない『御社が第一志望です』なんて言って、内々定をもらう就活は当たり前かもしれないが、私はそんなやり方は好きではない。正直に言って、それでも内々定をくれるのなら、条件付きで内々定をもらうくらいな姿勢で就活をやってほしいと思う」と言って、興銀の内々定を取るように発破をかけた。
しかし、その学生は、興銀が内々定を出すと言った時、「相談したい人がいます。少し待ってください」と言ったらしい。「誰と相談するのか」と聞かれた時、「安田信託銀行の人事の小林さんという人です」と言った。興銀の人事担当者は、それはびっくりしたそうな。
そして、彼は私のところに来た。そして、「小林さん、興銀が内々定をくれるところまで行きました。その時、気がつきました。私が入りたいのは安田信託銀行なんだと。小林さんの安田信託銀行なんだと。興銀の内々定を蹴ってきます。安田信託銀行でチャレンジしたいので、話を進めてくれませんか」と言う。
なんと‼️アッと驚く為五郎だ。
天下の興銀を蹴って安田信託銀行に入りたいなどと言う学生は、今まで見たことも聞いたこともない。

私はその学生と飲んでいろいろ相談に乗っていた時に、白髪のおじさん(上司の人事部長)も一緒だったので、その時が、人事部長面接のようなものだった。実際のところ、人事部長との人事採用面接は10分くらいで終わり、内々定を出していただいた。
人事部長からは、「これが小林の採用なんだな。これこそが人事採用の醍醐味というものだな」とお褒めの言葉をいただいた。

私の採用は一般的な会社の採用活動ではなかった。
"人生如何に生きるべきか"、"濁世に染まることのない絹のハンカチになれ"、それは"泥中の蓮"の例えと同様だ。それが人間のあるべき生き方ではないのか。

[泥中の蓮](でいちゅうのはす)

「泥中の蓮」の意味は、“いくら汚れた環境に身を置いていても、その汚さに染まらず、清く生きること”です。つまり、蓮のように「煩悩の汚れの中でも決して染まらず、清らかで純真な心や姿を保っている人」をたとえる言葉です。

また、言い方を変えれば「潔白な人は悪い環境にいても悪に汚されない」という意味にもなるでしょう。

蓮はドロドロとした泥の中に生息する植物ですが、ピンク色の美しい花を見事に咲かせます。また、汚い泥の中でも豪華に輝く花としても有名で、そのような凛とした姿を素晴らしいと称えることわざでもあります。

蓮の花は泥水にしか咲かない?

「泥中の蓮」とは言いますが、果たして蓮の花は泥水の中でしか咲くことはないのでしょうか?

実は、美しい蓮の花を咲かせるためには、ドロドロの泥を含む汚れた水が必要なのだそうです。逆に、綺麗に澄み渡る真水では、ここまで美しく大きな花は咲かないと言われています。

自民党の派閥の不祥事を見聞きするにつけ、そんなことを思い出す。
常勝軍団であったソフトバンクが、勝つために不祥事で自由契約になった選手と契約をするそうだ。

強ければいいのか。何をしても勝てばいいのか。勝てば官軍、官軍は何でもありなのか。

人間としての"美学"はないのか。そんなことを思う。

やはり、美しく生きていきたい
誰にも後ろ指を刺されない堂々たる人生を生きていきたいと思う。

不動院重陽博愛居士
(俗名  小林 博重)

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