脇役であり主役の後半人生
私の中高時代は、臨時の応援団として運動部の選手たちを応援していた。また、大学では、運動会(体育会のこと。東大では体育会のことを"運動会"と呼ぶ)の応援部に所属して、本格的に応援活動にのめり込んだ。
特に大学では、「応援とは黒子に徹することだ。あくまでも応援は脇役なのだ」と先輩諸氏から教えられた。
そんなことで、「応援とは何か」という哲学的思考をするようになったのは大学時代からだ。
そして、私は、社会人での日々の活動のなかで、"応援"の哲学的思考を深めていった。
応援とは黒子である。
応援とは脇役である。
しかし一方、
応援団長は、応援の主役である。
応援とは、運動であれ、人生であれ、"人の助け(援け)に応える"ことである。
主役の人を応援する。舞台の主役の影となって、黒子として飛び回る。決して表に出ない。出てはいけない。名前を出さないのが"黒子"であり、"脇役"である。
私はこの半世紀、"応援"を突き詰めてきた。柔道や剣道、合気道などの日本の武道に匹敵する"応援道"という、テクニック(術)ではない精神(道)を極めようと思って生きてきた。
一方、そうは言っても、私のキャラは黒子(脇役)では収まらないところがある。
金沢大学附属高校では、劇団[星]を立ち上げ、文化祭や予餞会の演目と演目の間で、寸劇『王将』(私が主役の阪田三吉役)をしたり、出し物の『巨人の星』では、私が主役の星飛雄馬を演じたりして、脇役とは言えない主役を演じていた。
さらに、本格的応援団の東大応援部では主将(団長)を務め、テレビにも何度か出演したことがある。
脇役であって主役
そして、この両極端を併せ持つことが、私の人生哲学になった。それは私流の応援哲学であり、応援美学だ。
44歳から、一匹狼・一匹パンダ・ドラえもんになって、人と人をつなぐ脇役人生を四半世紀送ってきた。
触媒的人間であり、太鼓持ち(幇間)が私のビジネスでありボランティアであると思っているが、ここに来て、能登の復興応援では、"脇役の主役になる"ことが私の第二生のミッションではないかと、強い確信にまで思うに至った。
私は、能登の復興を応援する応援団長だ。
応援団は試合をするプレイヤーの脇役であるが、応援団長はその脇役の主役である。
応援団の面々をリードして、その応援団の主役となって、応援という脇役の役目を全うすることが応援団長のミッションである。
脇役でありながら、主役になることが、応援団長の役割なのだ。
触媒としての脇役人生と、応援団のリーダーとしての主役人生を併せ持って生きるのが私の後半生だ。
人間関係やイノベーションに欠かせない触媒的人材「catalyzer」
触媒は、物質と物質の化学反応において、物質同士の化学反応速度を変化させる物質です。でも、触媒という物質そのものは変化しません。
触媒の代表的な物質として、白金やその化合物などが知られています。自動車の排出ガスの浄化に触媒が果たす役割は大きく、排気管(マフラー)に内蔵されたDPF(ディーゼル・パティキュレート・フィルター)にも触媒(白金)が担持されています。その触媒作用で有害物質を分解します。
このように触媒は、物質と物質の化学反応や化合、あるいは変質などさまざまな変化や進化を促進する作用があります。
実はこのような触媒の作用、物質の世界だけではなく人間関係やイノベーションの世界にも必要なのです。
触媒で人間関係が良くなる?
「人間関係と触媒?」――初めて聞く人はびっくりするでしょう。しかし人間関係にこそ、触媒的な人材が欠かせません。
人間関係というのは難しく、そもそも人嫌いという人もいますし、誰ともすぐに仲良くできる人もいます。また、その度が過ぎて濃厚接触で心配になることもあります。
この人間関係をよく見ておりますと、良好な人間関係があるところには、少なからず触媒的な人材がいることに気付きます。
本人は何も変わらないのですが、周りの人たちがこの人の触媒作用によってよく話すようになったり、お互いのノウハウを持ち寄ったりして元気になることがあるのです。
昔のお座敷遊びには「幇間(ほうかん)」と呼ばれる人がいたそうです。幇間は「太鼓持ち」とも言われます。主催者や客の機嫌をとって、芸者や舞妓(まいこ)が技芸を発揮しやすい環境をつくり、その場を盛り上げる人のことです。
たまに自ら芸を見せることもありますが、基本的には盛り上げ役に徹して、決して自分が主役にはなりません。周りの人をヨイショする、いわば脇役です。お酒の席では酔った客が騒ぐこともあります。客と芸者・舞妓の両方を取り持つのは、非常に大切な役割と言えましょう。
翻って、人間関係の良い職場の例を見てみましょう。お互いに口もきかない人と人の間に入り、それぞれの良いところをうまく導き出して、相互に認識させる触媒的な人がいるのです。そうして、その人たちも気付かなかった相乗効果を生み、一気に仕事が進むわけです。
不動院重陽博愛居士
(俗名 小林 博重)