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空っぽの部屋を埋めて

山が近い町に来た。山並みの輪郭に並び立つ謎のタワーとか、夜になればそこで輝く光だとかを毎日眺めている。
ウグイスもメジロもオナガもここには居ないけど、真っ黒で大きな鵜と、アオサギがときどき居たりする。

気が重かった引っ越しは、思い返せば存外あっさり終わって、平気な顔して普通に暮らしている。今は仕事を探している最中で、みんなどんな風に働いて生きてるのか教えてほしい。3年の無職期間はとんでもなく重い。

人生の汚点だし、誰にも言えることじゃない。逃げ続けた現実と、とうとう向き合わないといけなくなった。それでも、あの頃に戻ったとしても同じように、いつまでも就活しないダメな学生をやる自信がある。さすがに同じ会社には入りたくないけど。卒制で賞を貰ったって、卒業式で優秀な生徒として表彰されたって、社会に出ればなんの意味も無いこと、今なら分かる。だけど人生のサビ、そこだった。苦しかったけど楽しかった。だからしょうがない。もう別にいい。

長い無職期間に始めた料理や家事が好きになった。noteで色々書いた。日雇いで色んなバイト先に行った。別に悪いことばかりじゃなかった。貯金が底を尽きそうなのと、職務経歴書が真っ白なだけ。友達がちょっと減っただけ。言えないことが増えただけ。

しょうがないとか諦めて受け入れていかないとやってけない。後悔ばかりじゃどうしようもない、でもまた多分どっかで折れて、人生から逃げようとする。

今ももうやめたい。だけどそろそろ潮時だから、やるしかなくなった。

物をたくさん捨てた新しい部屋は、ベッドと机と本棚があるだけで、無駄なものが何もない。全部要らなくて捨ててきたのに、とても寂しい。だからここを私で埋めて、これから生きていかないといけない。

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