心を守るお守り「愛着」
くっついて生きる生き延び戦略
人間は、鋭い牙や爪と引き換えに、もっと強力な武器を手に入れ、生き延びることにしました。
それは、人とくっついて生きること。
お互いに関心を寄せ合い、助け合って生きることで、外界がどんなに危険でも、命を落とさず、生き延びることに成功したのです。
人間の「人とくっついて生きる」戦略を支えているのが、幼少期に作られる「愛着」です。
愛着とは、人と人とを結びつける絆をしっかりと支えている土台で、哺乳動物でもにも備わっているものです。
オキシトシンが作り出す「愛着」
愛着のメカニズムでいえば、人間の場合、肌と肌を触れ合わせるスキンシップや、信頼している人と目を見つめ合わせることで、オキシトシンというホルモンが分泌されることにあります。
オキシトシンは、愛おしいという感情を呼び起こし、大切にしたいという思いを強くさせるので、人とくっついて生きるためには欠かせないもので、幼少期の過ごし方にヒントがあるのです。
安定した愛着と不安定な愛着
幼い頃に大切に世話をされ、抱きしめてもらうことが多いと、このオキシトシン回路は発達。
愛着を安定させていきます。
安定した愛着を持つと、人と関わることが心地よく、相手の立場を想像して共感したり、広い心で相手を受け止めたり、不安やストレスを感じても上手に処すことができるので、親しい関係を長続きさせることができるのです。
ところが、幼い頃に十分な愛情を注いでもらえなかったり、また、世話をする側にムラがあると(例えば、抱きしめてもらう時と無関心な時があり、気まぐれでムラがあるなど)、愛着のしくみがうまく働かず、不安やストレスを感じやすくなり感情を暴走させたり、反対に人の気持ちに無関心で、面倒なことや深く関わることを避けようとしたり、それでも逃げられないとわかると逆上したりしてしまうのです。
不安定な愛着は2つ
【回避型:無関心タイプ】
*面倒ごとは避ける・逃げる
*平穏な時は親切だが、助けを求めると、そっぽを向いて知らんぷりする
*また、あからさまにイライラした態度をとることもある
*面倒なことを持ち込む相手に怒りを覚えてしまう
*自分が困った問題を抱えても、誰にも相談せず心を閉ざすが、何事もなかったように振る舞う
【不安型:不安暴走タイプ】
*不安を過剰なまでに訴えて、人に助けを求める
*困っている人を見ると放っておけず、過剰なまでに助けようとする
*親切が行き過ぎてしまい空回りする
*べたべたした関わりを求める
*放って置かれると寂しさに耐えられず機嫌が悪くなる・攻撃する・わざと背を向ける
親しい関係でなければ気づかない
相手が、不安定な愛着の持ち主かどうかは、親しい関係にならなければわからないかもしれません。
立派な職業についていようが、役職についていようが、周囲は気がつかないことが多いのです。
あくまでも夫婦のような親しい関係になって初めてわかることが多く、周囲に話したところで本当の辛さはなかなか理解されず、悩みを一人で抱えてしまいやすいのです。
鶯千恭子(おうち きょうこ)