感情の起伏が激しく不安定な人「境界性人格」
〜偏りを魅力に変える基礎講座「境界性パーソナリティー」〜
極悪人になるべくして、生まれてきた人はいません。
周囲を振り回して困らせる大人も、かつては純粋無垢な幼少期がありました。
なぜ、幸せから遠ざかる人生選択をくり返すようになってしまったのか。
本人は気がつかないことが多いのですが、関わらざるを得ない人は、どう理解して、どう関わればいいのか苦しみます。
「人のつくられ方」を紐解く中でカラクリが解け、少しでもいい関係性が生まれるお手伝いができたらと思います。
パーソナリティーのパターンは、全部で10タイプに分けられます。
今回は「境界性パーソナリティー(境界性P)」について解説したいと思います。
薄氷を踏むようにご機嫌をうかがいながら暮らす
境界性Pの偏りを持つ人の特徴は、いつ豹変するかわからない、感情の起伏の激しさかもしれません。
周りの人は常に顔色を伺い、ご機嫌を取りながら過ごすことが多く、どこか遠慮しながら生活していることが多いでしょう。
本人は、周りが気を遣ってくれて自分の思う通りにしてくれるので、一見落ち着いているように見えますが、でもそれは一時的なことに過ぎません。
どんなに献身的な人でも、その関係をずっと続けることは難しいでしょう。
誰だって疲れが溜まり余裕がなくなることもあるし、そうなればいつものような優しい配慮はできませんからね。
でもその変化を敏感に察知すると、強い不安が襲ってきて相手を攻め始めるかもしれません。
「どうせ自分なんて必要とされてない」と言ってみたり
「どうせ嫌々やっていたんだろう」と悪態をついたり。
これまで、どんなに献身的に尽くしてきても、ほんのちょっとの不満足で全てを台無しにするような気持ちになるからです。
こちら側がその豹変ぶりに驚いて、慌てて取り繕うように対応したり、また、相手の言いなりになっていた方がましだと諦めモードになると、際限なくこの悪循環は続いていきます。
気に入らないことがあればふてくされたり、場合によっては自殺をほのめかしたり、家出をしたりと、周囲を困らせる行動が目立つようになるのです。
それは若い子でもお年寄りでも変わりません。
感情の不安定さの特徴
境界性パーソナリティー障害の診断基準を見るとわかりやすいので、参考に解説します。ちなみに診断がつくのは、9項目のうち5項目以上に該当する場合です。
1.強い見捨てられ不安
自分を少しでもないがしろにしたり、批判したり、適当にあしらおうとする態度に過剰なほど敏感に反応します。
その結果、相手に必死にしがみつこうとしたり、反対に逆ギレして激しい攻撃を見せたりします。
2.両極端で不安定な人間関係
対人関係において、相手を「最高だ」と理想化したかと思うと、些細なことが耐えがたいものに見え、相手を罵倒し「最悪だ」「信じて損した」と、評価がひっくり返ることが多く、持ち上げておとしめる、激しいアップダウンが特徴です。
こだわりが強く完璧さを求め、99%OKでも1%気に入らないと全てダメと烙印を押し、それが対人関係でもよく見られるのです。
3.めまぐるしく変化する気分
希望に溢れ全てがうまくいくように思える時と、調子が悪く悲観的に感じてしまう時の入れ替わりがめまぐるしく、気分が沈むだけでなく、不安やイライラが強くなるのが特徴。どちらかというと気分は沈みやすい傾向が強く、うつ状態を伴うこともあるようです。
4.くり返す自傷行為や自殺企図
周囲に、苦しさをわかって欲しいというサインを、リストカットのような行為で示します。ただ、希死念慮が高まってくると、薬の大量服用をしたり、さらに高まると、飛び降りや縊首という行為に及び、不幸な結果を招くこともあるようです。
5.アルコールや薬、危険な行為への嗜癖
お酒や薬だけでなく、恋愛や万引き、買い物依存や過食、危険と隣り合わせの遊びやスポーツ、暴走行為などに熱中します。
自分を絶えず紛らわすものが必要で、その行為が危険を及ぼすものであっても、衝動を抑えることが難しいのです。
6.強い空虚感
虚しさにつきまとわれやすく、常に物足りなさを感じ、幸せを感じ続けることが苦手。悩む必要がない時でも、虚しさが襲いやすいのです。
7.自分自身に対して不確かな感覚
小さい物心つく頃から、自分に対する違和感を持ちます。
若者はよく「自分が何者かがわからない」と感じて、試行錯誤を重ねながら自分のアイデンティティを築いていきますが、その過程がより早く、そして、より強く現れます。
自分の存在を確かめようと強い刺激を求めたり、衝動的な行為にのめり込むことがあるのです。
8.怒りの感情に対してブレーキが効かない
傷つきやすく、そのため怒りのブレーキが効かなくなります。
激しい怒りにとらわれ、人格が入れ替わるくらいガラリと表情を変え、猛烈に攻撃したり、罵詈雑言を口にし続けるということがよく起こります。
9.一過性の精神症状や解離症状を示す
強い心理的なストレスがかかると、意識や記憶が飛んでしまったり、被害妄想的な考えにとらわれたり、現実感が感じられない「離人症」が起こることもあります。
困ったさんの持つ偏りが魅力に変わると
こんなに激しい性格の持ち主であっても、偏りが修正されると、反対に個性的な魅力として、偏りが輝き始めるのです。
境界性Pの傾向のある人は、情がとても厚く、人との関係をとても大切に感じているので、困っている人を見ると放っておけない面がありますし、お互いに、深くわかり合える関係を築きたいと願っていて、それを実現しようと努力するでしょう。
ちょっとベタベタした関係になりがちですが、それも深い信頼関係の現れで、相手の思いを尊重するし、お互いの心地よい距離を保つことにも気を配ります。
感情の入れ込みも、ほどほどにブレーキをかけることができるので、感情の起伏は穏やかで、唯一無二の親密さを築くことができるのです。
いい関係を築きたい
こんな素敵な個性を秘めているにもかかわらず、うまく生かせないまま人生を終えていく人が多いのは、とても残念です。
でも、それには理由があって、周りにとっては困った偏りでも、本人にとっては生き延びるために身につけた、止むを得ない生き延び戦術だったのかもしれません。
それくらい生い立ちの中で、苦しい経験を積んでいるのだとしたら、それがどんなものかを想像しつつ、新たな”いい関係”を積み上げていけたらと思います。
周りにいる人がどう関わればいいか、そのポイントをお伝えしますね。
線引きをして誰の問題かを整理する
感情の起伏の激しさに衝撃を受けて、どんどん巻き込まれてしまうことにブレーキをかけるためには、深呼吸をして、一体何が問題なのかを書き出して、冷静に整理をした方がいいです。
本当は相手の問題なのに、激しい怒りをぶつけられると、なぜか罪悪感を感じて「自分が悪い」「申し訳ない」という感情に押しつぶされてしまうことがよく起こるからです。
主体性を尊重し、限界もはっきり伝える
どうしたいのか、どうなることを望んでいるのか、まずは本人の思いを汲んで、「わかる、わかる」と認めてあげて欲しいのです。
まずは認めてあげることが第一。
本人の人生なのですから、本人が何を望むのかをしっかり受け止めます。
と同時に、主体性を持つということは、責任を持つということ。
本人の間違いは、うやむやにせずきちんと責任を取るようにはっきり態度で示していきます。
ダメはダメ!と愛情込めて限界を伝える
激しい怒りをぶつけてきたり、無理難題を押し付けることがあれば、毅然とした態度で「NO!」と、断固とした姿勢を見せます。
自分のことは棚に上げて相手を責め、怒りを爆発させるような時は、自分の心の痛みにばかりとらわれていて、肥大した自己愛とおごりがあるといわれています。
逃げ腰にならず、はっきりと「NO!」と伝えることは、真剣に相手のことを思うからこそできることなのです。
一喜一憂せず、挑発には乗らない
感情的な起伏が激しく、ちょっとしたことに過剰に反応してしまうのが特徴なので、それに反応せず、一喜一憂せずにゆったりと冷静に対応することが重要です。
本人の激しい言動に心が傷つき、動揺してしまうでしょうが、そうした挑発には乗らない姿勢が大事です。心が折れないように周囲の者同士で支え合い、対処することが必要です。
一貫性を持ち、向き合い続けられるかどうか
偏りが強いほど、いい関係が築けるようになるまでには時間を必要とし、うまくいくケースでも、数年に渡るといわれます。
何度も何度も苦しい時期を乗り越え、常に一貫性を持って関わり続けられるかどうかにかかってくるのです。疲れ切ってしまわないように、気長にいくことです。
どんな個性も、輝く才能や生きる武器になると思っています。
ただ、そのためには、共通した「受容」「限界設定」という過程を踏む必要があるんですね。
人の振る舞いには、必ず理由があります。
相手を理解することで、自分の身を守れるようになるし、”困ったさん”の偏りの陰に隠れた、才能や魅力を引き出すことが出来るようになるかもしれません。
鶯千恭子(おうち きょうこ)
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