怒りや悲しみを解決する木
身の回りで起こる問題にはパターンがあるなと思います。
大抵の場合、問題が起こる時は、バランスが乱れ、不安定な状況が解決されないまま長いこと持ち越されていきます。そして、ある時、何かのきっかけで負荷が強まり、問題が表面化する…ということが多いのです。
気づかずに積み上げているストレスの存在に早く気づいて、うまく対処出来れば、問題の発生を未然に防ぐことが出来るかもしれません。
その方法を探ってみたいと思います。
まず、問題が起こる「発生率」という考え方があるので、ご紹介しましょう。
発生率を求める計算式は以下の通りです。
問題発生率
=(ストレス+脆弱性)÷(コーピングスキル+自尊心+ソーシャルサポート)
大きなストレスを抱え、尚且つ、本人の持つ脆弱性(精神的なもろさ)が高ければ、問題を発生しやすくなります。
ところが、問題を発生させないようにすることもできる。それは、分母を大きくすること。
つまり、分母であるコーピングスキル(ストレス対処スキル)を高め、自尊心を育て、知恵を持つ支援者とつながること。
例えば、ものすごく大きなストレスが襲い、そもそも性質が脆弱で、ダメージをもろに受けてしまうとします。その値を数値化した場合、100だったとしましょう。
対処スキルはなく、自尊心はとても低くなり、まわりに力になってくれる人もいなければ、問題の発生率は100%になります。
ところが、ストレスが100でも、例えば、対処スキル20+自尊心15+ソーシャルサポート15あれば、100÷50=2。つまり、問題発生率は2%ということになります。
中でも、高いコーピングスキルを持つと、ストレスはみるみるうちに軽減していきます。コーピングスキルは、学習で増やしていくことができます。
更に言えば、一度手にしたスキルは簡単に消えることはありません。まるで武器を手に入れたかのように、いざという時はいつでも取り出して、自分を守ることが出来るようになります。
自尊心を高めておくことも大切です。
出来ることが増えると、自ずと高まるのが自尊心。そのためには『なんとかなる』と思い、本当に『なんとかなった』という経験を作ることだと思っています。
そして、信頼出来る誰かに相談することも大切。自分では思いつかない知恵を増やしていくことができますからね。
このことを「木」に例えてみたというものを見つけました。面白かったので、少し解釈を加えてわかりやすくご紹介したいと思います。
■木の根元
ストレスに対処する力を持たない場合の行動
嫌味をいう
大声で怒鳴る
相手を追いつめる
ものを壊す
殴る・ける
弱い者を見つけて攻撃する
人の物を壊す
引きこもる
■木の下の方の枝
ストレスに対し懸命に対処しようと努力している場合の行動
一旦その場から離れる
布団やクッションを叩く
安全な場所で大きな声を出してみる
パソコンやゲームをする
開き直る
メールをする
嫌な気持ちを絵や文字にする
身体を動かす、運動する
思考を変えてみる
あえて泣く、涙を流す
好きな音楽を聴く
深呼吸をする
「大丈夫」と自分に声をかける
■木の上の方の枝
ストレスに対処するスキルを持ち、更に磨いていこうとする場合の行動
なぜ自分は怒るのだろうと掘り下げてみる
気持ちを正しく言葉で伝える
問題が解決できた時のイメージを思い浮かべる
この次はきっとうまくいくという方法を考える
人に助けを求める
信頼できる人に相談し知恵を増やす
枝葉が生い茂るようになれば、例えストレスが襲っても、安定的に対処することが出来るようになります。まだ若い木であれば、対処法もつたないし、幼さを抱えるのもわかります。でも、経験を積む中で、生い茂る木に育てていくことを意識することが大切なのです。
本来、年齢を重ねるということは、木の枝葉を青々と茂らせることなのだろうと思います。そのためには、降りかかるストレスの正体をじっくりとながめること。一呼吸おいて、対処しようとしている自分の振る舞いを振り返ってみること。そのコツを心得ている人の枝葉は、自ずとグングンと伸びていくような気がします。
鶯千恭子(おうち きょうこ)