心の手当て【感情取説】
心の安定感が高い人は、嫌なことがあっても、それを大きな出来事とは捉えず、むしろ、いい面や、そのことによって得られたプラスの側面に思いを巡らせる。
「いろいろあったけれど、いいこともあった」
「嫌な出来事のおかげで、自分の弱点に気づけた」
など、マイナス面にとらわれすぎず、肯定的に考えることができるのだ。
では、とても悲しい、悲惨な出来事に遭遇したらどうだろう。
例えば、傷つけられたり、裏切られたり、振り回されたりといった辛い体験をするのだ。
当然、人間不信に陥ってもおかしくないほどの、悲しみが伴う出来事を、一定期間ずっと経験するのだ。
その場合、あまりの辛い体験に「自分には価値がない」「きっとこの悲しみは永遠に続くはずだ」「逃れることはできないのだ」など、悲観的な考えにとらわれることもあるだろう。
でも、それも一時的なことだ。
しばらく時間を置くと、傷つけられたことや、裏切られたことを許し、むしろ、自分がしてもらったことの方が大きかったと回想し、感謝の気持ちを抱くようになる。
そして、悲観的な考えにとらわれていたことに気づき、この経験をバネにして、更なる成長を目指そうとする。
これが、心の安定感が高い人の特徴になる。
同じ経験をして、一方では、人不信に陥って、二度と人を信じるまいと、警戒心を強固に持つようになる人と、何が違うのだろうか。
人としての成長度合いなのだろうか。
いいや、違う。
理由はもっと単純で、ちゃんと安心感に包まれることを求め、そして、得られる体験を積めたかどうかなのだ。
傷んだ心の手当ての仕方を心得ているかどうか、といってもいい。
傷を負ったならば、まずは安静にして、強い刺激を避け、保護的な環境に身を置き、何よりも自分に優しくする。
心の安心感が高い人は、そのコツを心得ていて、どうすれば、傷を負った心を悪化させずに、快方に向かわせることができるのかを知っているのだ。
だからいち早く、安心感にヒビが入った状態を手当てすることができる。
それだけの違いなのだ。
世の中を不信感でいっぱいに見える時は、心が傷ついていることに気づくこと。
そして、たっぷりの安心感に包まれれば、被害者意識を募らせることなく、感謝さえ湧いてくるようになる。
そうなればしめたもの。
焦らず、ゆっくりと、これまでを振り返り、失ったもの以上に、得られたものの数々を思い出してみるのだ。
そして、積み上げた経験や、出会えた様々な人など、たくさんの財産を手に入れたことに気づけたら、必ず数段階も成長できた自分を誇りに感じて、力強く歩みを進めていくはずだから。
そういう人を心から応援したいと思う。
鶯千恭子(おうち きょうこ)
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