人間らしさは大脳が担っている
脳のしくみを知ると、生きるのが面白くなります。
感情や思考、記憶にはちゃんと根拠があるので、自分をよく知れば、生きにくさを変えることもできるからです。
さて今回は、人間たらしめている大脳について解説していきますね。
まず、脳がどのように作られていったかについてです。
魚から人間への道のり
脳は、魚→両生類→爬虫類という進化に合わせて、中心から外に向かって進化していきました。
人間らしさを司っているのは、一番表面にある大脳。
進化の過程で大脳がどんどん大きくなり、頭蓋骨の中に収めるためにシワシワになりました。
(シワシワを伸ばすと新聞紙1枚くらいになるんですよ)
脳は部位によって4つの脳葉という領域に分かれていて、部分ごとに違う機能を担っています。
<前頭葉>
運動や言葉、判断や行動の決定など、高度な精神機能に関わる領域。
<側頭葉>
聴覚野や言語野があり、音声や言葉の意味の理解、記憶や嗅覚にも関わる領域。
<頭頂葉>
体性感覚野といって全身の感覚情報を統合させる領域。
<後頭葉>
視覚野があり、視覚や色彩の認識をする領域。
左右に分かれている脳
大脳を上から見ると、ちょうど真ん中に深いシワがあるのがわかります。
そして、右脳と左脳は深いシワの奥でつながっています。(脳梁:赤い部分)
脳梁の中には2億本以上の神経繊維が太い束になっており、右脳と左脳の情報交換を盛んに行っています。
脳梁の太さには性差があり、男性の方が若干狭いといわれており、このことが男性の専門領域を深める傾向を作り出しているともいわれています。
心のありか
そして大脳の中で最も高度な精神機能を司るのが、ちょうどおでこのあたりになる前頭葉。
ここは、全ての情報が集まり、その情報を基に認知、行動、情動、動機付けといった、高度な活動を行っています。
よく「心」はどこにあるのかといわれますが、前頭葉にあるといわれたり、心や自我に関する機能は1箇所ではなく、広範囲に渡って担っているともいわれています。
前頭葉の機能については、19世紀にアメリカで起きた鉄道工事の爆発事故に巻き込まれたフィニアスゲージという男性の症例によって、注目されるようになりました。
フィニアスゲージの事故
温厚で責任感のあった技術者のフィニアスゲージが、トンネル工事の誤爆事故により、脳を負傷しました。
火薬を詰める際に使っていた鉄の棒が、頭頂葉から左眼にかけて貫通してしまったのです。
奇跡的に一命を取り留めたフィニアスゲージ。
左眼を失った意外は目立った外傷もなかったと思われていましたが、次第に人格が様変わりしていることが明らかになるのです。
我慢ができず、粗暴で、すぐに感情が暴走するなど、人格が変貌してしまったのです。
このことから、前頭葉の重要性がクローズアップされ、注目を集めるようになったのです。