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保護者対応に悩む現場
園や学校にお勤めの方で、保護者対応で悩んだ経験のある人は多いと思います。
些紐なことで文句を言ってくるクレーマーや無理難題を押し付ける無神経な保護者の理解に苦しみ、信頼関係をなかなか築くことができないことに悩むのです。
ところが一方で、見方を変えると「SOS」とも取れる相手の言動に、ハッとさせられるかもしれません。
困ったさんの多くは、とても困った状況にいて、自分でもどうすればいいかわからず、苦しんでいることが多いのです。
今回は、大人同士の間に子どもがいて、そう簡単に関係を断つことが出来ない立場にいる方(園の先生など)の、困ったさん(保護者など)について考えてみたいと思います。
子どもを大切にする意味が微妙に違う
当たり前の話ですが、立場が違うと、見える世界が違うものです。
大切なお子さんをお預かりする立場と、大切な子どもを預ける立場では、一見目的は同じに見えるのですが、微妙に「大切にする」意味が違うということを、お互いに知っておくことは、すれ違いを防ぐ最も重要なことです。
「うちの子のことをもっと考えて欲しい」と思う親と、「集団生活の中でいろんな体験を通して成長を促したい」と思う園側とでは、「大切にする」という意味において、相当の開きがあるのです。
この場合、親からすれば「わが子」しか目に入っていない自分に、どれくらい自覚があるかは大事です。
と同時に、園の先生であれば、自分の中に根付いている既成概念に気づいていなければ、いつまで経っても平行線で、相容れない関係になるのは当然です。
そのことを、自分も相手もちゃんと分かっているかどうかが、大人の関係を築く基本になるのです。
大人になるということは
大人になるというのは、なんとも難しいものですね。
結婚して子どもができ、親になったから「大人」になったとも言えないし、多様性がどんどん広がっている今の時代は、常識を踏まえて判断できるから大人だとも言い切れない。
つまるところ「自分の振る舞いを振り返る能力」を持っているか。
そして「相手の置かれている状況に共感できる能力」を持っているか、にかかっているような気がします。
2つの「大人度」に差があっても、どちらか一方が、大人度をアップさせれば、関係を築くことは出来ます。
では、どうすればいいのでしょう。
どんな時に「困った!」と感じる?
まず、どんな場面で「困った!」と感じるのかを考えてみましょう。
恐らく「感情が暴走する人」を相手にした時か、「感情を一切見せず交流を遮断する人」を相手にした時かもしれない。
つまり、全くの両極端なケースにみられるものなのです。
感情って、感じ合えた時は「安心」を感じるものですが、感じ合えない時は残念な思いに襲われる性質を持つものです。
怒りをあらわにする相手や、交流を遮断されるという両極端な相手に対して、どう関わっていけばいいのか迷う時に、人は「困ったなあ…」と感じてしまうようです。
振る舞いの裏に隠れた感情
ただ、どんな相手であれ、仕事となると、放っておくわけにもいきません。
特に、間に子どもが絡んでくれば、如何なるタイプの相手(保護者や先生)であっても、つながりを築いていかなければならないのです。
その場合、ヒントとなるのは、やはり「共感」です。
共感さえできれば、その思いは振る舞いや言動の中に必ず現れるので、関係性に変化が起こり始めます。
では、共感できるものを探すためには、どうすればいいのでしょう。
それには、表面に見える姿に目を奪われないことです。
表面に見える姿の背景にあるものはなんなのかを探り当てることが大切です。
困ったと感じる場面でよくみられるものを例に、考えてみますね。
【怒りの場合】
心の背景:ひどいことをされた!
振る舞い:攻撃してやる!
【うつ状態の場合】
心の背景:大きな失くしものをしてしまった!
振る舞い:外に出たくない…
【無関心な場合】
心の背景:どうしていいかわからない!
振る舞い:感じないように感情をブロックしよう
よくある3パターンをあげてみましたが、実はどの感情のベースにも、まず「不安」があるということを覚えておくといいです。
不安が襲ってきた時の身を守る方法がそれぞれ違うだけで、この不安をどうするかが、本来の困ったさん対応のテーマになるのです。
不安は極端なマイナス思考を暴走!
不安は厄介な感情です。
理屈で自分を納得させようと思っても、なかなか払拭できないしつこさがあります。
そんな不安が、いつも心の中に同居している状態を想像してみてください。
そして、予期していた通りの危険が急に迫ってきたとしましょう。
さあ、人はどうすると思いますか?
よくみられるのは「決めつけが強く」なり、「”今”にしか目が向かない」状態に陥ってしまうのです。
今起きている目の前のことしか考えられなくなり、この事態からなんとか逃れようと、極端な判断に暴走してしまうのです。
これは全て身を守るために無意識に起こっている現象です。
そうなった時の特徴でよくみられるのが「いつも○○だ!」「みんなが○○だと言っている」といった、極端な表現を頻発させることです。
これは、不安が心の中にいっぱいになっている証拠。
まさに心が暴走を始め、サイレンが鳴り続けている状態。
こうなった時に、理屈で説き伏せようとしても無駄です。
相手は不安に襲われているのですから、不安を落ち着かせなければなりません。
では、そんな相手を前にどう振る舞えばいいのでしょう。
応急手当は「受容」による安心
不安をどうにかしなければ、いくら理屈を伝えても、説得しても、解説をしても、相手の心には届かないと心しましょう。
たとえ相手が「わかった」と了承したとしても、心で感じているわけじゃないかもしれないと、一旦立ち止まることです。
人は、理性で生きる生きものであると同時に、感情で生きる生きものだからです。
ですので、まずは何はともあれ「安心」に包むことに徹すること。
安心感を取り戻せたら、人は必ず冷静な判断ができるようになるので、そこに至るまでは、ひたすら「安心させる」ことなのです。
そのためには、徹底した「受容スキル」が必要になります。
これは、甘やかすとは一線を画したプロのスキルです。
何に対して不安を感じているのかを想像し、「それは確かに不安だ」と共感できる感受性を持てるか否かなのです。
自分が、不安を感じにくいタイプだと思う人は、「ひょっとしたら無神経な態度で傷つけているかも」と、自分を振り返ってみることも大切です。
全く悪気はなくても、不安を感じている人にとっては、心ない言葉に傷ついているかもしれないのです。
でも、これは技術なので、振り返りと検証をくり返すうちに、相当なスキルが身についていくと信じて大丈夫です。
いずれにしても今の時代は、誰もが傷つきやすくなっています。
どんな職場においても、相当な「受容スキル」が必要です。
この辺りのプロスキルに関しては、「家族成育カウンセラー」としての育成の中で学べるようにしていきますので、興味のある方は、ぜひ挑戦してみてください。
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