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【セミナーレポート】伝わる!園の想い 始めてよかったドキュメンテーション

6/24(木)に開催したオンラインセミナーのレポートをお届けします!

今回は楽しみながらドキュメンテーションに取り組まれている園の先生をお迎えし、ドキュメンテーションに取り組んでよかったことやICTを活用した業務効率化などについてお話いただきました。たくさんの実践例をお話いただいたので、ぜひセミナー動画をご覧ください!!

※こちらからセミナー動画をご覧いただけます。

【熊本県熊本市 出仲間こども園】 一斉保育をやめて、子ども主体の保育を実践 (4分29秒〜) 

出仲間こども園は、「向かい合い保育」を基本理念に、こどもの主体性を大切にした保育を実践されています。出仲間こども園さんは3年前に保育方針を大きく方向転換し、行事のあり方などを大きく変えました。

遊び・行事・生活すべてについて「こどもを中心」とし、「こどもと一緒につくりあげる活動」を大切にするなかで、保育の可視化や保育者の振り返りを目的としたドキュメンテーションに取り組むことを決めました。

図1

ドキュメンテーションでは、日々の子どもたちのちょっとしたやり取りや保育者の思いを伝えています。「子どもの気持ちの読み取りや保育で大切にしていることを言葉にすることが、深い子ども理解につながり、明日の保育を考える機会になる」と平岡主任は語ります。

ドキュメンテーション1

また最近では「つぶやきドキュメンテーション」という新たな取り組みも行っています。通常のドキュメンテーションはクラスでのできごとや、お友達との関わりを中心に書いていますが、「つぶやきドキュメンテーション」は個人に焦点をあてた記録です。

ドキュメンテーション2

また、スマートエデュケーションの「おうちえんドキュメンテーション」も活用しています。おうちえんドキュメンテーションには次のようなメリットを感じているということでした。

・パソコンが苦手な先生でも簡単に作成できる。
画像・動画を入れられるので、ほかの保育者や保護者と情報共有しやすい。
プリントアウトすればおたよりにも使える

出仲間4

最後に、ドキュメンテーションを取り入れてよかったことについて次のように語ってくれました。

・日々の子どもたちの様子を視覚的に保護者に伝えられるので、保護者から「安心しました」などの声が聞かれるようになった。
・行事当日だけではなく、行事へ向けての子どもたちの様子や成長の過程を伝えられる
・活動や保育を振り返ることで、保育者が次への改善点を見つけられ、いろいろな子どもたちの様子に目が向けられるようになる。

ドキュメンテーションを個人記録としても活用し、先生の負担を軽減するように工夫しているそうです。

【山口県美祢市 伊佐中央幼稚園】保育がどんどん楽しくなる〜共有の効果〜 (28分50秒〜) 

0〜5歳児まで90名が在籍する認定こども園である伊佐中央幼稚園。「その子らしさを大切に」という理念のもと、仏教の教えにもとづいた『まことの保育』を実践されています。

伊佐中央幼稚園の保育の特徴は、あらゆる活動が子どもの興味、関心からスタートしているということ。短いもので2〜3ヶ月、長いもので1年間をかけ、自然や宇宙など興味のあるテーマについて、さまざまなアプローチで学びを深めているそうです。

現在は0〜5歳まで全クラスでドキュメンテーションに取り組んでおり、子ども自身がドキュメンテーションを作成することもあります。

伊佐中央1

手書きだけではなく、デジタルで作成することも。

伊佐中央2

「ドキュメンテーションに取り組むきっかけは、先生たちのおしゃべりだった」と教務主任の作本先生は語ります。

「先生たちが次の日の準備をしながら、今日子どもたちの様子がどれだけ面白かったか、どれくらい成長したかなど、その日の保育を楽しくおしゃべりしながら振り返る様子をよく目にしていました。こういった雑談は限られた保育者でしか共有されませんが、この内容こそがこども主体の保育の実践には必要で、もっと可視化されるべきだと感じていました」(作本先生)

ちょうどその頃、ドキュメンテーションを生み出したレッジョ・エミリアの保育を実践するスウェーデンとフィンランドの園を訪れたという作本先生。保育者主導ではなく、子どもたち自身がやりたいことに主体的に取り組む姿を目の当たりしたこと、そして「ドキュメンテーション」がその活動を支えていることを知り、ドキュメンテーションこそが先生のおしゃべりを可視化する一番の方法ではないかと思ったそうです。そこから園での取り組みが始まりました。

ドキュメンテーションへの取り組みをきっかけに保護者が保育に積極的に参加してくれるようになったり、保育者が他のクラスにも興味をもって関わるようになってくれたりと、ドキュメンテーションを保育に活用する効果を実感しているという作本先生。ドキュメンテーションをきっかけに、園全体そして家庭までもが一体となって、子どもたちを見守り、育てていこうという雰囲気が生まれているそうです。

伊佐中央3

ドキュメンテーション作成にあたっては、園内研修を積極的に行い、写真の撮り方やタイトルの付け方、書く内容などについて、それぞれが作成したものを持ち寄って対話を重ねています。

伊佐中央4

また、ドキュメンテーションのせいで残業が増えてしまっては持続可能な取り組みではなくなってしまうので、各クラス月1回、1時間のドキュメンテーション作成の時間を設けているとのこと(毎週木曜日の午前中)。また、ドキュメンテーションを日誌としても活用できるようにすることで業務の効率化にもつなげています。

【愛知県名古屋市 守山幼稚園】ドキュメンテーションって楽しい!〜インスタ世代の共有ツール (50分29秒〜) 

守山幼稚園も子どもたちが主体(主役)の保育を実践されています。遊びを大切にし、園庭にも自然が溢れています。

守山幼稚園がドキュメンテーションに取り組むきっかけは、コロナウィルスにより行事や保育参観が中止となり、保護者が来園する機会が激減したことにありました。

流行第一波で登園自粛が出されていたときには、自宅待機する子どもたちにむけて、YouTube、Instagram、TikTokなどを使って子どもたちが楽しめる動画を配信していました。登園は再開しましたが保護者が園に来られないことには変わりなく、園での様子を詳しく伝えたいという思いから、おうちえんを活用したドキュメンテーションをスタートさせました。

守山1

先生方は毎日、終礼の時間に10〜15分でドキュメンテーションを作成しているそうです。1日目にドキュメンテーションを作成し、2日目に近くの先生とお互いに誤字脱字チェックをして更新する、というように2日おきに新しいドキュメンテーションを公開しているそうです。園長による内容のチェックなどはなく、それぞれの先生が個性を生かしてのびのびと、楽しみながら取り組んでいます。

また、ドキュメンテーション作成のポイントとして次のような事柄を挙げてくれました。

子どもの発言をそのままのせる。
活動のねらいや成長のポイントを伝える。
・写真は活動の様子がわかる写真子どもの視点がわかる写真を意識して撮影する。

写真は手持ちのiPhoneやiPadで撮影しているそうです。守山幼稚園のドキュメンテーションはいつもタイトルが秀逸です。

守山3

こちらのドキュメンテーションは保健の先生が作成しました。

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保護者からも「子どもが毎日どんな風に過ごしているのかがよくわかって嬉しい」、「家庭でドキュメンテーションを見ながら、子どもとの会話を楽しんでいる」などの感想が寄せられているそうです。「おうちえんドキュメンテーションを見たい」という理由でガラケーからスマホにかえたというおじいちゃんも(笑)。こういった保護者からのコメントは先生にとっても大きな励みになる、と山川先生は語りました。

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守山幼稚園は業務改革にも積極的に取り組んでいます。職員会議や教室の壁面飾りもやめました。また終礼も実施しておらず、どうしても口頭で伝えなくてはいけないこと以外はGoogleドキュメントで共有しています。

業務を効率化することで、子どもと向き合ったり、ドキュメンテーションを作成したりといった、先生方が一番やりたい仕事に時間をかけられる環境を整備している守山幼稚園。ドキュメンテーション作成も、とくに負担を感じずにできているそうです。

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児玉園長は園の改革について「子どもは一人ひとり違いますし、毎日様子が違います。去年まではこうだった、昨日はこうだったと前例ありきで考えていてはいけないと思いました。子どもたちにとって不必要なものはやめ、子どもたちが本当にやりたいことができる環境を用意することを大切にしようと、先生たちに伝え続けてきました。先生が遊びの大切さを理解し、子ども社会で起こるいろいろな物語を面白がれるようになってきたことが、今につながっている」と語ってくれました。

ICTを活用した、ドキュメンテーション最初の一歩 (1時間10分09秒〜)

さて、ドキュメンテーションの良さやあるべき姿は理解できても、いざ作ろうとなったときに、日々の保育のどこをどう切り取って何を伝えるべきかがつかめず、ドキュメンテーションを始められないという先生も少なくないのではないでしょうか。

そこでご提案したいのは、最初の一歩として「ドキュメンテーション=写真・動画つきの記録」とシンプルにとらえるということです。

大澤1

手書きやパソコンが難しい場合でも、「おうちえんドキュメンテーション」を活用すれば、スマートフォンやタブレットで手軽に「写真・動画つきの記録」をつくることができます。ここでは、おうちえんを活用し、手の届くところから始めたという事例をご紹介します。

● 伝えやすい行事・活動を行ったときに作成する

季節の行事や遠足など、イベントがあったときに不定期に作成しているという園さんの事例です。

大澤2

写真・動画を撮ったときにつくる

こちらは誕生日会の記録から始めたという事例です。月に1回程度ですし、誰かを撮りそびれるということもありません。インタビュー動画などは保護者にもとても喜ばれます。

お誕生日会

作らなくてはいけない文書を「写真・動画つきの記録」にする

こちらは毎月のクラスだよりやあゆみをドキュメンテーション形式にしたという例です。文章やイラストだけで伝えるよりもたくさんのことが伝えられますし、なにより「おうちえん」を使えばスマートフォンやタブレットで手軽に作ることができます。保護者もスマートフォンで閲覧できるので、とても便利です。

大澤3

伊佐幼稚園の作本先生がおっしゃっていたように、先生が感じたことや先生同士の雑談を限られたところで閉じてしまうのではなく、可視化し、対話のきっかけをつくることが保育の質の向上や家庭と園の絆を深めることにつながります。
ICTを活用し、無理なくできるところから始めてみてはいかがでしょうか。

パネルディスカッション (1時間23分00秒〜)

最後に、参加者からいただいた質問に対して登壇者全員でのパネルディスカッションを行いました。ここでは抜粋・要約してご紹介します(発言者の敬称略)

Q:ドキュメンテーションに写真が載る回数が、園児によって偏りが無いように、気を遣いますか?

(伊佐中央:作本)保護者にはドキュメンテーションについての手紙を配っており、そのなかで「ドキュメンテーションで使われる写真は記念撮影ではないので、お子さんの顔が見切れていたり、子どもが写る回数に偏りがあったりすることがある」ということを説明し、理解していただいています。

(出仲間:平岡)ドキュメンテーションはクラス全体の活動を伝えるものなので、全員が写真に均等に写っているかどうかはあまり気にしたことはなく、保護者からクレームをもらったこともありません。0歳〜2歳のドキュメンテーションは個人記録として作っているので、担当の先生が責任をもって個人の発達をしっかりと伝えるようにしています。

Q:個人情報保護の面などで、保護者にどんなルールを伝えているか知りたいです。

(守山:児玉)入園のタイミングで保護者には個人情報保護法に則った「プライバシーポリシー」の同意書にサインをいただき、決められたルールに従って情報を閲覧してもらうようにしています。SNSや保育学会の資料などにお子さんの写真を掲載することもありますが、保護者から同意をいただいたお子さんの写真のみ使用しています。

(伊佐中央:作本)入園のタイミングで写真の利用について保護者の許諾をとっています。掲示しているドキュメンテーションを写真に撮る保護者もいますが、家庭内での閲覧にとどめるようにお願いしています。SNSなどでは子どもの顔は写さず、園内掲示のドキュメンテーションについても子どもの名前はイニシャルで表示するなどの配慮をしています。

● おうちえんを活用した園内の情報共有

またパネルディスカッションのなかでは、出仲間こども園で実践している「おうちえん」の「非公開モード」を活用した園内での情報共有についてもご紹介いただきました。園での業務効率化にぜひ参考にしていただきたい事例です!

出仲間5

保育園は、シフト制を組んでいるため、常に担任が同じ子どもにつくことができません。そのため、個別の子どもたちの様子を全職員で共通理解しておくことが不可欠です。さまざまな事例や支援の必要な子どもたちの様子を全職員で共通理解し、意思統一をする手段として、おうちえんの「非公開モード」を活用しているとのことでした。

まとめ (1時間42分40秒〜)

今回ご登壇いただいた3園はいずれも「こどもの主体性」を重視した保育を実践されています。結果ではなくプロセスを大切にする保育ですので、ドキュメンテーションで子どもの日々の様子や保育の内容を可視化することが不可欠です。

今回のセミナーをきっかけにドキュメンテーションに取り組んでみようと思う園さんもいらっしゃるかもしれませんが、「目的」と「手段」を考える必要があります。ドキュメンテーションの発祥地レッジョ・エミリアでは主に掲示されていますが、日本では保護者が毎日園に訪れるわけではありません。ドキュメンテーションの目的は保育の可視化であり、手段はICT活用もふくめて柔軟に考える必要があります。

また、今回登壇いただいた3園は非常に組織がフラットで、現場の先生がのびのびとドキュメンテーションで情報発信できる環境が整っています。こどもの主体性を育てるためには、先生がさまざまなことに主体的に取り組み、創造的に働くことができる環境であることがとても重要です。

池谷1

最近では先生全員にiPhone(SIMなし)を支給し、いつでも手軽に写真や動画を撮れるようにしている園や空き時間に好きな場所ですぐドキュメンテーションを作れるように園全体をWiFi化する園も増えています。こういった環境を手軽に安価に整えられるサービスも提供しています。まずは写真1枚から保護者に共有する。ぜひそこから始めてみてはいかがでしょうか。

池谷2

次回予告

次回のセミナーは、7/31(土)16:00~18:00 「子どもの学び、どう変わる?小学校の今と未来」です。ふるってご参加ください!


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