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擁壁のある土地=売れないとは限らない!擁壁が問題になる3つのケース
「理想的な立地と値段だけど、擁壁がある土地は売れないっていうからやめておこうかな……」
例え理想の土地であっても、敷地内に擁壁があると言われると、購入を躊躇してしまいますよね。
一般的に、擁壁がある土地の購入は避けるべきだと言われています。
その土地を手放したくなっても、擁壁がある土地は売れないというのがその理由です。将来的な資産価値を意識した土地の購入というのは、非常に賢い行動ですね。
しかし一口に擁壁といっても、コンクリート擁壁や石積み擁壁、二段擁壁などその種類はさまざまです。
これら全ての擁壁が、売れない原因になるのでしょうか?
答えはNoです。
中には資産価値に影響があまりない擁壁も、存在します。
本記事では、資産価値に影響しにくい擁壁と、擁壁がある土地が売れない理由、そして売却の方法について解説しています。
この記事を読み、擁壁がある土地がなぜ売れないのかを理解するだけで、後悔のない土地選びをする力がグッと上がります。ぜひ最後まで読んで、土地選びの参考にしてみてください。
監修者情報
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1 擁壁があっても売れる土地
擁壁があるからといって、その土地の価値が平地と比べて著しく下がるとは言い切れません。
なぜなら、擁壁にはさまざまな種類があり、擁壁があることによって生じるデメリットが少なければ、値段が大きく下がる理由がないからです。
では資産価値にあまり影響がない擁壁とは、一体どんな擁壁でしょう。
まず第一に挙げられるのが、専門家による調査が行われていて、安全性が確認されている擁壁です。
法律に基づき、安全性が確保されている擁壁であれば、地震や大雨などでも崩れる危険性が少ないため、資産価値が著しく下がるということもあまりありません。
また、詳細は後述しますが、法令に基づいた検査などが不要な、高さが1m未満の擁壁の場合も、売却に支障が出ることは比較的少ないです。
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2 擁壁がある土地が売れない理由
擁壁がある土地の売却が困難になる原因は、主に下記の3つです。
1.擁壁の高さが2mを超えている。
2.現在の法令を遵守していない。
3.経年劣化により建て替えが必要。
安全性が確保されていなかったり、擁壁の建て替えが必要かつ費用が高額になる擁壁がある土地は、売却が難しい傾向にあります。
それぞれの項目で、具体的になにが問題となるのかをみていきましょう。
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2-1 擁壁の高さが2mを超えている
宅地に建てる擁壁は、『建築基準法』や『都市計画法』、宅地造成工事規制区域においては『宅地造成等規制法』の基準をクリアしている必要があります。
全ての擁壁にこれらの基準が設けられているわけではなく、一般的に擁壁の高さが2mを超える場合において、確認が必要となることが多いです。
しかし特に古い擁壁の場合、この基準をクリアしていない、いわゆる違反建築の擁壁が多数存在するため、擁壁の高さが2mを超えている土地の売買は注意が必要となります。
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2-1-1 建築基準法による擁壁の設置義務と確認申請
まず初めに、建築基準法に定められている、擁壁の設置義務についてみてみましょう。
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この、“崖崩れ等による被害を受ける恐れのある場合”とは、各都道府県によって定められている条例(通称:がけ条例)に具体的な基準が示されているため、都道府県ごとにどのような土地が該当するのかは若干異なります。
しかし、土地に2mを超える高低差がある場合は、基本的に擁壁の設置が義務付けられていると考えて良いです。
さらに、擁壁の高さが2mを超える場合、建築基準法でもう一つネックになるのが、確認申請です。
2mを超える擁壁を設置する際には、建築確認申請が必要となります。
図面や構造計算書等の書類を作成・提出する必要があり、審査に合格しなければ擁壁を造ることができません。
審査がある分擁壁の安全性は高いですが、その分設置にかかるコストも上がります。
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2-1-2 都市計画法や宅地造成等規制法による確認申請
都市計画法により、都市計画区域、または準都市計画区域に指定されている土地に、擁壁を設置する場合はさらに注意が必要となります。
なぜなら、家を建てるために土地の形を変更する行為は、開発行為としてみなされる(都市計画法第4条12項)ため、各都道府県に確認申請をする必要が出てくるからです。
運用指針は都道府県ごとに若干異なりますが、例えば千葉県の定義は下記です。
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つまり、建築基準法において確認申請の義務がない高さの擁壁であっても、都道府県によっては都市計画法に基づいた確認申請が必要となる可能性があるのです。
また、宅地造成規制区域内においても同様に、確認申請が必要になるケースがあります。
具体的な規定は下記です。
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つまり、記事の冒頭で解説した通り、高さが1m未満の擁壁はこれらの規制の対象とはならないため、土地の売却において大きな支障が生じることが比較的少ないのです。
逆に、1m以上の規制対象となる高さ、特に2mを超える擁壁はそもそも設置義務があり、定められた建築基準を必ずクリアする必要もあるため、土地の購入自体を避けられる傾向にあります。
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2-2 現在の法令を遵守していない
先述の通り、2m以上の高さがある擁壁を設置する際には建築確認申請が必要であると、建築基準法により定められています。この確認申請を行い、建築確認と完了検査を受けた擁壁は、検査済証が発行されます。
検査済証がない擁壁は、公に安全性が認められたものではないため、崩落などの危険性が高いだけでなく、現在の建築基準を満たしていない可能性があります。
建築基準を満たしていない擁壁に多いのが、下記の2つです。
1.規定外の材質で建てられている
擁壁の材質は各自治体の条例でも規定されており、宅地造成等規制法では鉄筋コンクリート造、無筋コンクリート造、間知石練積み造、またはその他の練積み造で行うよう第6条で規定されています。
そのため、玉石造りや大谷石造りなどの、古い家屋によく見られる擁壁は現在の基準では、既存不適格とされてしまいます。
2.既存の擁壁に、後から擁壁が追加された積み増し擁壁
もともと設置されていた擁壁の上にさらに擁壁を積み増ししてしまうと、当初の構造計算では想定されていない土圧が加わることになります。
このような積み増し擁壁は、無許可で行うと安全性が低く、崩落の可能性があるため大変危険です。
例え擁壁の積み増し時に確認申請がおりたとしても、二段擁壁のある土地は地盤改良等の安全策を講じないと、新しく住居を建築することができないため注意が必要です。
参考:福岡市二段擁壁の判断基準
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2-3 経年劣化により建て替えが必要
例え検査済証があって法令を遵守した造りであっても、経年劣化により擁壁にひび割れが生じていたり、一部がふくらんでくることがあります。
このような経年劣化した擁壁があり、建て替え費用が高額になる土地は買い手がつきにくい傾向にあります。
擁壁の工事費用単価は1㎡あたり30,000円〜50,000円であることが多く、例えば高さ1mの擁壁を20m作る場合、60万円〜100万円の費用が必要となります。
しかし、この擁壁の工事費用は施工場所が狭く、大型の重機が入れないような場所だと、その分工事日数もかかり、擁壁1㎡あたりの単価も上がってきます。
施工場所によっては工事費用が1,000万円を超えるなど、土地の価格よりも工事費用の方が高額になるケースもあります。
購入後に建て替えが必要な擁壁がある土地は、真っ先に購入候補から外されると思っておいて良いでしょう。
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3 2m以上の擁壁がある土地を売却するには
では2mを超える擁壁がある土地の売却は不可能なのかというと、そうでもありません。
買い手がつきにくい擁壁がある土地であっても、安全性を確認したり、必要に応じて擁壁の補修・建て替えを行うことによって、売却が成功することもあります。
建て替えの費用を用意することができず、擁壁をそのままの状態で売りに出さなければいけない場合でも、必ず工事費用の見積もりだけは取っておきましょう。
擁壁の再施工にかかる費用が不明瞭だと、総額でいくらかかるのか買い手は把握できないため、購入候補から外されてしまいます。
しかしあらかじめ擁壁の工事費用を明確にしておき、かかる費用分を差し引いた金額で売りに出すことで、買い手がつきやすくなります。
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4 まとめ
擁壁がある土地が、必ずしも売れないということはありません。
繰り返しになりますが、擁壁がある土地の購入を検討している場合に、必ず確認すべきポイントは、下記の3点です。
1.擁壁の高さが2mを超えている。
2.現在の法令を遵守していない。
3.経年劣化により建て替えが必要。
擁壁の検査済証がなかったり、既存不適格または違反建築の擁壁がある土地は、そのままではまず売れないと考えるべきです。しかし逆に言えば、高さが2m以上の擁壁がある土地でも、現在の法令を遵守した造りで、専門家により安全性が確認されている擁壁であれば、適切に維持・管理を行うことで、将来的に土地が売れないという自体を回避することは可能です。
擁壁がある土地の購入を検討する上で最も重要なことは、メリットとデメリットの比較です。
例えば購入を検討している新興住宅地で、希望通りの条件が揃っているけれども擁壁のある区画と、日当たりなど多少のデメリットはあるけれども平地の区画がある場合。どちらを選ぶべきか悩みますよね。
その擁壁が1m未満の高さであったのなら、将来土地の資産価値が、平地の区画と比べて大幅に下がるという可能性は、高くはないです。
地価の多少の値下がりや、擁壁のメンテナンス費用などのデメリットと、日当たりや眺望、立地などのメリットを比較し、メリットの方が多ければ購入を前向きに検討するべきです。
擁壁がある土地の購入に迷った場合は、メリット・デメリットを慎重に比較することで、後悔のない決断をしましょう。
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