![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/150501184/rectangle_large_type_2_9393b2dad93bb5d4f8df0a30e5f05e38.jpeg?width=1200)
版画とクリームどら焼き。「川瀬巴水 旅と郷愁の風景」展へ
図録を買った直後は嬉しいのに
あとは案外、見ないもので。
でも暑い日に表紙を開くと
すうっと風が吹いてきた。
「川瀬巴水 旅と郷愁の風景」
2024年4月5日(金)~6月2日(日)
八王子市夢美術館
![](https://assets.st-note.com/img/1723039168154-cvljdf9pua.jpg?width=1200)
静かで、あたたかみのある風景。
夜の深い青、ぴかんと光る広い青。
川瀬巴水の版画を見た時、なんてモダン、どうして知らなかったんだろうと、驚きとともに鑑賞したことを覚えています。
企画展を何度か逃していたのだけど
たまたま仕事場の方から教えてもらい
5月13日、足を運びました。
「八王子駅から徒歩15分」にひるむも
商店街を歩き、意外とすんなり到着。
新版画の星
川瀬巴水(1883〜1957)は糸屋の跡取り息子。周囲の反対にあいながら画家を志す。
父の事業失敗で家が傾き、25歳、画業へ本格シフト。27歳、日本画家の鏑木清方に弟子入り。
35歳、版元の渡邊庄三郎(33歳)と版画を制作。
従来の技法にとらわれない、創意工夫を凝らした「新版画(新板画)」の作家として評価される。
船に大根を積む人々。
傘を深くさして歩く着物の女性。
見たことはないのに懐かしい。
懐かしいけど、どこか新しい。
滝にひらめく紅葉の赤い点、
軒先に舞う桜の花びらなど
細部のキラリが印象的。
なかでも好きだったのが
中尊寺金色堂。夜空に光る星。
その一点が、あると無いとで全然ちがう。
風。木々のざわめき。
遠くの家からこぼれる光。
当時の人々の暮らしが確かにあって
それが、今ここへ続いているんだ。
![](https://assets.st-note.com/img/1723039140307-UJDZyjRjkc.jpg?width=1200)
巴水の自宅から徒歩20分
渡邊庄三郎たちと共に
版元の渡邊庄三郎が居なければ
輝きは半減していたかもしれない。
大震災、戦争。作家のスランプ。
どうアピールするか、海外にも目を向け。
売ることに振り切るのではなく、作家を尊重する。
![](https://assets.st-note.com/img/1723474598445-5KRQQDQrhh.jpg?width=1200)
絶筆未完の作品は
さきの中尊寺金色堂と同じ構図で
雪の中に歩く僧の後ろ姿が加わる。
渡邊が仕上げをし、販売はせず
法要に来た親戚や知人にのみ配られたそう。
かかわる人々の思いが存分に詰まっていて、
すごいすごいと心の中で呟く。
(前半集中しすぎて、見る配分を間違えたのが少し反省点。)
和と洋の融合をあじわう
帰りに向かったのは、どら焼きの「まかな」。ここも教えてもらったのです。
年上の女性で、ポケモンGOのために海外単独旅行する人。
「イートインで二時間も話しちゃって!普通のどら焼きの味はまあまあで、クリームは色々あって、ぐしゃぐしゃのコーヒーゼリーが入ってるやつが美味しかった!」
それは、クラッシュゼリーかな。
彼女の快活な声を思い出しながら
私はクリームどら焼きを頂く。
プラス200円でコーヒーセットに。
生地はふわっと、洋風。
生クリームとつぶあん。
クリームがあるから調和する。
おいしい。
横では大先輩のグループが談笑中。
仏教の話。悟りの境地。
* * *
伝統に新しい魅力を詰めた新版画は
版画界のクリームどら焼きみたい。
巴水さんは
クリームどら焼き食べたこと無いよな。
どら焼きは、あっただろうけど。
そもそも甘いの、お好きだった?
「川瀬巴水 甘党」で検索。
出るはずもない。
甘味をふわふわ噛み締めて、
巴水の頃に、思いを馳せる。
巡回:
山形美術館
2024年7月11日(木)~8月25日(日)
http://www.yamagata-art-museum.or.jp/exhibition/5487.html
大阪歴史博物館
2024年10月5日(土)~12月2日(月)
https://www.osakamushis.jp/news/2024/kawasehasui.html
画像出典:国立国会図書館サーチNDLイメージバンク「美しい日本の風景」より『川瀬巴水の風景版画』